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子育て支援でも「日本の少子化が止まらない」盲点 山田昌弘氏が説く「高等教育無償化」の必要性

日本の少子化問題に対する政府の対策は、年々巨額な支出がなされているが、その効果はどうなっているのだろうか?

多くの少子化対策案が出される中、今回は岸田文雄政権が推進する「次元の異なる少子化対策」に注目したい。

果たしてその対策は、出生率の向上に役立つのだろうか?

今回、中央大学の山田昌弘教授に話を聞き、少子化対策の現状と今後の見通しを占ってみたい。

以下、東洋経済オンラインより転載記事

──経済学では、社会にとっても便益のある(=正の外部経済)小中学校を無償化することは意味があるが、大学などの高等教育は、個人の便益(生涯所得の拡大)のためにあるものだから、個人が費用を負担すべきと教えられます。それもあって、日本では給付型奨学金の支給は主に低所得者に限定され、「出世払い奨学金」(大学卒業後の所得に応じて返済額が変動する学生ローン)の拡充が議論されているくらいです。

欧米は個人主義が徹底し、子どもが成人したら子育ては完了する。子どもの親からの独立志向も強い。そうした国々なら経済学の言うとおりだろう。欧米では原則、親は大学など高等教育費用を負担しない。アメリカなら、中流家庭の子どもでも自分で学生ローンを組んで大学に行く。福祉国家色が強いヨーロッパ諸国では学費はほぼ無料だ。

欧米と違い、日本では親が高等教育費用を負担する


山田昌弘(やまだ・まさひろ)/中央大学文学部教授。1957年生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専門は家族社会学。「パラサイト・シングルの時代」「希望格差社会」「少子社会日本」「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」など著書多数(撮影:今井康一)

しかし、日本や韓国、中国など東アジアの国では、親は成人になっても子どもにつらい思いをさせたくないと思い、経済的支援を続ける。こうした国々では、多くの親にとって、専門学校も含む高等教育の費用は、親が負担するのが当たり前と見なされており、その額はそうとうに大きい。高校までの子育て費用というものは実際にはさほど大きくないのだが、大学入試のための塾や大学の費用、そして、専門学校となると、金額が跳ね上がる。

「子どもをよりよく育てること」に価値を置く人が多く、子どものためにお金をかけざるをえない国では、将来の高等教育費用の負担を考慮して子どもの数を絞っている。東アジア特有の少子化要因と言える。

結果的に、東アジアの場合は、親が高等教育費用を負担できるか否かで、子どもの生涯所得が変わるため、格差の再生産につながっているとも言える。こうした格差拡大を阻止するためには、本来なら親が子どもの高等教育費用を支出した場合には、それに贈与税を課すようなことをしなければならない。しかし、実際には逆であり、日本では祖父・祖母が孫の高等教育などの費用を援助したら、それは贈与・相続税から控除される制度になっている。

──個人主義の欧米とは異なる視点で、少子化対策を進める必要がありますね。

日本政府は昔、出生動向基本調査のアンケートで、「子どもを希望数まで持たない理由」として、子育て費用と教育費用の負担を別々に聞いていたが、十数年前に両者を1つの質問に統合してしまった。問題を見えにくくしている。日本では高等教育を無償化したら、そうとう効くはずだ。といっても、出生率でいえば、0.1〜0.2%ポイント向上させる程度だと思うが。

──日本では婚外子が少ないため、生涯未婚率の高さは少子化に直結しています。

生涯未婚率を現在の25%程度から10%くらいまで縮小させられれば、状況はかなり変わるのだが、難しい。最近の若者が結婚したがらないのはやはり経済的な要因が大きいと思う。対策としては、若年層の低所得対策や男女共同参画の拡大ということになるだろう。

大都市での大企業共働き世帯の環境は改善したが…

東京23区の子ども数は実際、少子化が言われている中で、この20年ほとんど減っていない。このような大都市で夫婦ともに大企業正社員の共働きの世帯では、子どもを産んで育児休暇を取りやすくなった。保育所の不足も緩和されている。

問題は、地方の若者の経済力が低すぎることだ。特に若い女性にとって稼げる職業が少ない。昔から、学歴が高く意欲がある地方の女性にとっては公務員と教員しか、そのような職はなかったが、それも「非正規公務員や教員の拡大」などで細ってきている。だから、キャリアに前向きな若い女性は地方を忌避する。いまでは地方の若い人にとって介護職くらいしか新しい職はないが、賃金は低い。

地方銀行などが地元に帰ると奨学金を免除するなどの施策を打ち出しているが、それよりももっと若い女性が活躍できる仕事を作ることが、地方の最大の結婚対策や少子化対策になるだろう。

しかし、日本では地方に行くと、女性が上に立つということが考えられない社会になっており、若い女性というだけで差別されることが残っている。それだけ実力主義が浸透していない。改革を行って、時代遅れのスキルしか持たない中高年男性より、若い女性がもっと活用される社会が必要だ。実力主義が徹底する欧米などではそれができている。

これは、相対的に男女平等が進む東京では女性が活躍し、子ども数もほとんど減っていないことと整合的だ。企業という側面で見れば、大企業では環境はよくなっているが、問題は中小企業ということだろう。数のうえでは大多数は中小企業だ。賃上げもそうだが、中小企業が変わらないと日本全体での結婚や少子化の問題も改善しない。

──お話をうかがっていると、問題の根の深さ、難しさを痛感します。

仮に出生率が改善しても、そこから実際に労働力人口が増え始めるには30年のタイムラグがある。つまり、現在の人口減少は30年間改革をサボったツケということだ。長い間、警鐘を鳴らしてきた私から見れば、国民はむしろそれを望んで選択したようにも思える。

少子化対策の財源などで一時的な大きな痛みを分かち合うよりも、少しずつみんなで貧しくなっていくことでやり過ごそうという感じだ。20〜30年後に日本が先進国でなくなっても別に構わない。お金持ちの人から見れば、自分の子どもだけをよりよく育てればいいというだけの話だ。

ラストチャンスは少子化対策でなく移民受け入れだ

──「少子化対策は待ったなし。今こそがラストチャンスだ」というスローガンをあちらこちらで聞きますが、それは大きな人口を持った団塊ジュニア世代が子育て期だったときから言われています。現在の子育て期世代の人口は団塊ジュニアのほぼ半分。今も同じスローガンが言われていることに違和感を持ちます。

それを言うなら、今は移民受け入れこそがラストチャンスではないか。賃金が上がらず、円安も進んで日本は貧しくなっている。外国人から見て日本で働くことの魅力は薄れている。逆に海外の賃金が魅力的になって、高度人材を含めて日本から出ていく日本人が目立ってきている。

国内人口に占める外国人比率では、日本は2〜3%だが、ドイツは約13%、人口が減っているイタリアでも5〜6%ある。日本でも労働力不足が進む中、高度人材や、看護・介護などの外国人人材に移住してもらって子どもを産んでもらうことに今から真剣に取り組む必要がある。日本はまだ治安がよくて物価も安定して過ごしやすいから来てくれる外国人は少なくない。しかし、経済力が落ちてから取り組むのでは遅い。


**この記事では、異次元の少子化対策について考察しました。

現在の少子化問題は、過去とは異なり、国家や社会が直面する深刻な課題です。

少子化は、経済成長のマイナス要因や社会保障制度の脅威となります。

異次元の少子化対策としては、地域や会社による育児支援や、働く女性を増やすための制度改革など、様々なアプローチが必要です。

また、子育て環境を整備することも重要です。

子育てしやすい社会にするために、民間企業や自治体が協力して、家族を思いやる制度や文化を創り出すことが求められます。

異次元の少子化問題に対して、政府や民間企業、個人による継続的で総合的な対策が必要です。

少子化を理解し、声を上げ、実践していくことが大切です。**

下線部以降は、「情報探偵・順」でした。


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