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焼きたて!たい焼き作り #25

わたしは個人ブログを運営している。主に自分が体験した遊びを紹介するもので、アクセスはそこそこあった。

ブログで一番アクセスがあったのが「浅草の遊びを紹介する記事」だった。わたしは何度も浅草に行っては江戸切子、飴細工などを体験していたので、ネタには困らなかった。

ある日、浅草のたい焼き屋さんから「ブログを見ました。ぜひうちのたい焼き作りを体験してください」というメールが来た。取材依頼は初めてだったので、2つ返事で引き受けた。

お店は西浅草の静かな通りにあった。お店の入り口部分がたい焼き屋になっており、店の奥が体験スペースというつくりだ。

出迎えてくれたのは元ボクサーのオーナー。ほどよく筋肉のついた体型の人だった。

和室の体験スペースに案内されると、オーナー自らがたい焼きの作り方を教えてくれた。

たい焼きの作り方はいたってシンプルだ。

まずは水とミックス粉を混ぜて生地を作る。生地は「ちゃっきり」という器具で鉄板に流し込む。そこにあんこを盛り、蓋を閉めて焼く。

じゅわーっという音と共に、小麦粉の焼ける香ばしい匂いが立ち上る。なんだかお祭りを連想させる、ワクワクする香りだ。

火を入れて3分後。鉄板の蓋をあけると黄金に輝くたい焼きと対面した。嬉しいことに羽根つきだ。

たい焼き作り体験では、様々なバリエーションのたい焼きを作ることができる。

わたしが最初に作ったのは、お店の人気ランキング1位の「あんこバターたい焼き」。

一口かじると、羽根のサクサクした食感が楽しい! 続いてあんこの部分をパクリ。あんこの甘さとバターのまろやかさが合わさった、トロリとした口当たりを楽しんだ。

お店のあんこは「小豆・砂糖・塩」だけを使用しているとのこと。味に一切のノイズがなく、小豆の甘さがまっすぐに伝わってくる。

また、つぶあんなのに舌触りがなめらかで、とても食べやすい。あっという間に完食してしまった。

2番目に作ったのは人気2位の「カレーたい焼き」。鉄板に生地を流し込み、あんこの代わりにキーマカレーとチーズを入れる。

火を入れるとカレーのスパイシーな香りが立ち込める。甘いたい焼きを食べたばかりなので、思わず食欲がそそられた。

完成したたい焼きを一口。カレーの濃厚な味が口いっぱいに広がる。そこにとろりと溶けたチーズが加わって、カレーの旨味を引き立ててくれる。

わたしは今まで「お惣菜系」のたい焼きを食べたことがなかった。「たい焼き=甘いもの」というイメージがあり、抵抗があったのだ。

でも、これならお惣菜たい焼きも悪くないかも。カレーパン感覚で食べられるので小腹が空いた時にピッタリだ。これもペロリと完食。

3番目に作ったのは「チョコバナナたい焼き」。こちらは人気3位。

こんがり焼けたチョコの甘みは、まるでガトーショコラを食べているような上品な味だ。

バナナはとろとろに溶けたクリーミーな食感で、焼きバナナのような味わいを楽しめた。

「もうお腹いっぱい……」

それはフルコース料理を満喫したような、幸せな満腹感だった。甘い・しょっぱい・甘いのループは永久機関で、いくらでも食べられそうだ。

個人的に一番おいしかったのが「チョコバナナたい焼き」だ。チョコもバナナも、火を通すと通常の何倍もの甘みを発揮してくれる。(※チョコとバナナは自前で用意する必要あり)

たい焼き作り体験では合計6個のたい焼きを作った。残りの「カスタードたい焼き」「ホットドッグたい焼き」「ふつうのたい焼き」は持ち帰って、次の日温めなおして食べた。

オーナーによると

「女性のお客さんで、甘いたい焼きとお惣菜たい焼きを交互に作って、その場で6個食べた人もいましたよ」とのこと。女性の食欲、恐るべし。

店を後にすると、電車に乗って「すみだ水族館」を訪れた。

わたしが一番長く滞在したのはクラゲのコーナー。彼らの優雅な泳ぎ方はどれだけ見ていても飽きなかった。

二番目がペンギンコーナー。屋内開放プールでは、ペンギンたちが楽しそうに泳ぎ回っていた。

たい焼き作りとすみだ水族館巡り。これって良いデートコースになるのではないだろうかと思った。

たい焼き作りなら食事もデザートも楽しめるし、簡単だから失敗してデート気分が台無しになる心配もない。すみだ水族館は文句なしの定番デートスポットだ。計画を実行する相手はいないけど、最近なぜか「理想のデートコース」がどんどん頭に浮かんでくる。

帰宅後、自身の体験を元にたい焼き屋の紹介記事を書いた。たい焼きがおいしかったのは事実だが、過剰に持ち上げるのも良くないので、ほどほどの距離感を意識した。

その後、たい焼き屋の記事に一定のアクセスが来るようになった。ブログを通じてお店に予約が入った時、自分の感動が他人に伝わったような気がして嬉しくなる。予約した人はどんなたい焼きを作ったんだろう、おいしく食べてもらえただろうかと、あれこれ聞きたい気持ちになる。

今回の取材をきっかけに、わたしのブログ記事を自社メディアで紹介したいとか、テレビ番組の制作会社から「バンジージャンプを体験した時の話を聞かせて欲しい」といった依頼が来るようになった。

お金にはならないが、自分が必要とされているような気持ちになって嬉しかった。

このままブログが有名になれば、いつか「遊びながらお金をもらう」なんて夢みたいな生活ができるかもしれない。そんな希望を感じた。

実際はレジャー関係の記事は伸び悩んでしまい、遊びで書いた100kmウォーク関係の記事の方が有名になってしまうという、皮肉な逆転現象が発生してしまうのだが。


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