子どもの頃に見たおばけの話(怪談vol.4)
本物のおばけを見たことがある
子どもの頃、本物のおばけを見たことがあります。
それは兄に連れられて、兄の友達の家にお泊り会に行った時のこと。
兄の友達は公営団地に住んでおり、つくりは2LDKでした。
中は「玄関をくぐるとダイニングキッチン、隣の部屋は子供部屋」という構造で、団地の友だちの家はみんな同じ構成になっていたことを覚えています。
兄の友達は遊ぶ前に、子供部屋を案内してくれました。
部屋に入ると勉強机が2つ並んでおり、その内の1つに女の子が座っています。
彼女は友達の姉で、確か小学校5年生ぐらい。彼女が真剣な表情で勉強しているので、わたしは迷ったものの
「こんにちは」
とあいさつしました。彼女はノートに顔を向けたまま
「こんにちは」
とそっけなく返しました。
それからわたし・兄・兄の友達の三人は、リビングで遊びました。たっぷり遊んだら、そろそろ就寝の時間です。
(友達のお姉ちゃん、なんか怖い人だな……)
彼女はわたしたちが遊んでいる間、一度も姿を見せませんでした。晩ごはんを食べる時間もずらしていたので、全く彼女の顔を見ていません。
歯をみがき、パジャマに着替え、就寝の準備ができたわたしたち3人は、リビングで寝ることにしました。お姉さんは子供部屋で寝るそうです。
それからどれくらい時間がたったでしょうか。
目をさますと、あたりがボーッと薄明るくなっているのがわかりました。
電灯が消えていてもあたりが見えるということは、今は早朝でしょうか?
ふと、わたしは何か嫌な予感がしました。子供部屋から何かとても恐ろしい気配を感じるのです。
(ダメだ、子供部屋の入り口を見ちゃダメだ!)
わたしは子供部屋につながるドアに、視線が釘付けになってしまいました。
夜寝る時、ちょっと開いたドアの隙間とかが気になってしまい、目が離せなくなってしまったことはないでしょうか。わたしはちょうどその状態で、視線が子供部屋から動かせなくなっていました。
とつぜん、大きな音と共に子供部屋のドアが開いたかとおもうと、そこにはおばけが立っていました。
「ぎゃーっ!」
わたしは思わず泣き叫んでしまいました。
おばけは頭からすっぽりと「毛布のようなもの」をかぶっており、顔がありません。無言で立ちはだかるおばけの姿は、もう想像を絶する恐ろしさです。
わたしの声に、兄と友達が飛び起きました。そして子供部屋に立つおばけを見ると、彼らも叫び声を上げました。
こちらの反応にたじろいだのか、おばけはドアはパタンと閉め、それきり姿を見せなくなりました。
兄と友達が、もう大丈夫、あそこには何もいないよとなぐさめてくれてくれて、ちょっと気分が落ち着いたわたし。気がつけば再び眠っていました。
目を覚ましたわたしは、猛烈な悔しさに襲われます。
どう考えても、あのおばけの正体は彼女だ! ちくしょう、そうとわかっていれば泣かなかったのに!
わたしは怒った足取りで子供部屋に行きました。子供部屋ではお姉さんが、昨日と同じように勉強机に向かっています。
「きのうのおばけ、あなたですよね?」
わたしが毅然としてたずねると、彼女は初めて顔をあげました。そして
「知らない、なにそれ?」
と、大マジメな表情で言うのでした。
余談
西洋の怪談などに出てくるおばけ(ゴースト)って、「シーツをかぶった人間」そっくりですよね。
シーツをかぶって体の輪郭が隠れてしまうと、相手を「人間」と認識するのが難しく、恐怖を感じます。
さらに表情もわからないから、意思の疎通ができない不気味さが更に恐怖度をアップさせます。
もしかしたら世の中のおばけや幽霊なんて、ほとんどが誰かのいたずらなのかもしれません。
でも、「本当におばけや幽霊はいるかも」と考えながら生きるほうが、ちょっとだけ楽しいですよね。
もし自分に子どもができたら、一回だけ「シーツおばけ」をやってみたい。いや、やられた自分の反応を鑑みるに、やめたほうがいいかな……
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