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漫画アプリのUIについてDMをもらった例の大学生と再び会って会話してみた(後編)

少年ジャンプ+のモミーです。

突然Twitterに「漫画アプリのUIに物申したい!」というDMをくれた大学生1年生と再び会って会話してみました。

これは後編なので、前編をまだ見てない方はこちらからご覧ください。

オフラインで新たな漫画と出会う特別さ

モミー:一周回って紙がいいというのは、どんなきっかけでそう思ったんですか?

三宅くん:高校時代に友達から『チェンソーマン』をオススメされたことがあって、「これ今ジャンプでめちゃくちゃ熱い漫画だから」って単行本を渡されたんですけど。僕自身そういうバトル系の漫画をあんまり読まない傾向があったので、『チェンソーマン』をスマホで見つけても多分読まないと思うんです。ただ、単行本を渡されて読んでみたところ、もうめちゃくちゃ面白くて、どハマりしたんですよね。

モミー:友達に勧められたからこそ読んだと。

三宅くん:友達に勧められて、かつ紙だったので読み続けたんです。それで『チェンソーマン』の面白さがわかったので、もっと手軽に読めるアプリで読もうって。

モミー:友達に勧められ、紙で読んだから、どんどん読み進めて、確実に面白いって確信してからデジタルで買ったということね。

三宅くん:たぶんそれが漫画アプリのあり方なんじゃないかなと。もちろんアプリ上で面白い漫画を発見するっていうのもありだとは思うんですけど、それ以上にオフラインで漫画と出会うことがアプリ上で漫画を積極的に読む行動につながるんじゃないかなって感じました。

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モミー:なるほど。では、三宅くんはオフラインな方法で漫画がもっと広がる具体的なアイデアを持っていたりしますか?

三宅くん:ひとつは、〝ジャンプアンバサダー〟というようなものを作ることです。たとえば『ジャンプ+』で、ある作品をものすごく読んでいる、時間かけている人を〝ジャンプアンバサダー〟として任命する。そして編集部側からその人に単行本を贈呈したりすると。そしたら、単行本を贈呈してもらった人はジャンプ編集部から〝自分が特別なファンだと認められた〟とモチベーションを感じて嬉しいという気持ちが湧きます。単行本を贈呈されたら、その作品の面白さをもっと広めなくちゃいけない、とも感じると思うのでクラスの友達とかに単行本を貸したりと行動に移すと思うんですよね。僕の場合アプリで渡されるよりは単行本で渡されると最後まで読む傾向にあるので、その流れでその単行本がいろんな人に行き渡っていったら、漫画の面白さが広がるんじゃないかなと思います。

モミー:確かに作品の読者にもレイヤーで分かれていて濃さがいろいろあると思います。単純に「読者か読者じゃないか」という1か0かではなくて。読者を広げようと思ったときに、中心にいるコアなファンの熱量みたいなものを考えて広げていくことは大事かもしれないですね。

三宅くん:アプリだと、より自分に最適化されたもの、パッと見て自分好みのものだって感じる作品しか読んでもらえない傾向もあると思います。ジャンプが目指している国民的な漫画を作っていくみたいなことを考えると、よりライトな層にも届ける必要があると思うので、そう考えるとやっぱりアプリよりオフラインを活用していくのがすごく大事なポイントなんじゃないでしょうか。

モミー:たどり着いた答えが、TwitterのDMとは真逆になったね(笑)。アプリ上でのレコメンドによるパーソナライズや、コマで瞬間的にみせるのではなくて、知人にオフラインで薦められるからこそ新しい出会いがあり、借りた分は最後まで読む、ということですね。

三宅くん:はい。

モミー:友達から本を借りるからこそ自分では選ばない思わぬ本を読んでみる。たぶん友達だから選ぶんですよね、意外な本を。書店に行って、スマホ上では買わなかっただろうな、という出会いがあって本を買うのも似ていますね。オフラインにはオフラインの良さがあって生かした方がいいと。デジタルの本で買うのと紙の本で買うのと、同じ一冊の本だけども、買った人にとっては感じ方が違うかもしれませんね。

YouTubeやNetflixの体験から考えたこと

三宅くん:そうですね。それに実際にオフラインで物を買うっていうのは、やっぱり特別な体験で、「信頼感」を獲得する物なんですよね。僕の最近の出来事なんですけど、僕は最近パーカーさんというYouTuberさんをよく観ていて。

モミー:ぼっち系YouTuberの大学生ですよね。

三宅くん:すごく面白いなって思ってたんですけど、ただ最近はちょっと離れ気味だったんですね。あまり観てなかったんですけど、最近パーカーさんは自分の本を出して、その本を書店で見かけたんですよね。僕はパーカーさんを知っていて好きだったので、本を購入して読んでみるとよりパーカーさんの良さがわかって。信頼度っていうとちょっと言葉が違うかもしれないんですけど、パーカーさんの動画を見るよりも実際に書店で買った本を読むことで、パーカーさんに対してより深く興味を持ったんです。

モミー:ファンとしての熱が上がったというか。

三宅くん:そうです、それからYouTubeで離れ気味だったパーカーさんの動画を再び観るようになったんですね。同じようなことがYouTubeにも限らずあらゆるものに適用されると思っていて、漫画もそのひとつだと思います。

モミー:「リアルな体験の良さ」ですね。ほかにも、オフラインで紙で読むこととスマホで読むことで異なる体験をした、みたいなことはあるんですか?

三宅くん:映画についても同じことが言えると思っていて、おそらく多くの人はNetflixだったりAmazon Primeだったりをスマホやタブレットでサブスクリプションのサービスを使って観ることが多いと思うんですけど、それも僕にとっては結構ストレスを感じるポイントがあって。

モミー:えー! どうしてですか?

三宅くん:これは以前、何人かの友達と会って話したときにもみんな同じようなことを言っていたんですけど、映画を選んで何時間も我慢して観るっていうのは苦痛で、だいたいもう1分くらい見たらすぐ観るのやめちゃうとか言ってて、我慢できないよねというのを話していました。

モミー:映画館で観るために作られた映画だからですかね?

三宅くん:それって、別に映画がつまらないからそうなっているってわけじゃなくて、スマホという媒体で見ていることで映画の良さが生かしきれてないと思うんです。これが同じ映画を映画館で観たとしたら当然僕らも最後まで観ます。スマホで無理矢理見せるよりも違う媒体を使った方が良さが人々に伝わることもあるんじゃないかなって思いました。

モミー:確かに、読み手の環境やその時の期待によって感じ方は変わりますよね。〝映画館で映画を観る〟ってなったら最初10分~20分ちょっと退屈だと思っても途中では映画館を出ないし、こっちも「映画観るぞ」って気持ちで観てるから、最後まで観て面白かったってなる。逆にテレビドラマを観るときって退屈な展開が続いたらチャンネルを変えちゃうから、常に注目されるような作りにテレビドラマはなっている。そして、テレビのバラエティ番組とYouTubeだと、よりYouTubeは明らかにテンポが速い、その差ってことですかね。ディスプレイの大きさもありますよね。漫画も紙の雑誌に合わせて作られているか、スマホに最適化されているか。

三宅くん:そうですね。

モミー:ところで漫画はずっと昔から読んでいると聞いたけど、どんな漫画が好きなんですか?

三宅くん:一番好きなのは『MAJOR』ですね。最近好きなのは先ほど話した『チェンソーマン』と『SPY×FAMILY』です

モミー:三宅くんの場合、自分が今まで読んできた読み応えのある『MAJOR』のような漫画を、今後どう発展させて読者を増やしていくかっていうことに関しては、オフラインを使った方がいいと。逆にスマホの中で最適化した「漫画的なもの」のユーザーを増やしていくのであれば今の漫画の形自体を少し変えて、スマホ向けに作っていった方がいいと。そこは「別なんじゃないかっていう」考え方なのかな。

三宅くん:はい。

モミー:両立するような漫画も存在するし、そして、もしかして映画とテレビドラマみたいにそれぞれの発展をしていくっていう未来もあるのかな、というのは僕も予想しています。実際に三宅くんみたいな年齢の人が数年後にはどんどん最前線に立って、漫画アプリやWebサービスの企画を立てたり中の人になっていくんだと思います。ぜひまた今後も新鮮な意見を漫画界にもらえたらうれしいです。【会話おわり】

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いかがだったでしょうか?

当初、TwitterのDMでは「Tiktokのようにコマが流れてくるレコメンド」という提案でした。
そしてその後「オフラインでの友達との貸し借りが重要」という、30代の僕からすると、昔は当たり前だった行為の提案に。

それが、僕にとってはとても興味深く、彼から教えてもらうことが多い会話になりました。三宅くんに、再び感謝!

noteの記事のためにわざわざ再び話を聞かせてくれて、ありがとうございました。

ちなみに、会話の文字化についてはライターの藤下元気さん(オムカレー)にご協力いただきました。ありがとうございました!

(おまけ)
三宅くんが好きな『MAJOR』は読めないけど、他の『チェンソーマン』と『SPY×FAMILY』は「ジャンプ+」で読めますので、この記事をご覧の方はぜひ!

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