【試し読み】【推しの子】 ~一番星のスピカ~
『【推しの子】 ~一番星のスピカ~』発売を記念して、本編冒頭の試し読みを公開させていただきます。
あらすじ
それでは物語をお楽しみください。
第一章
「――私、もうアイドルやめるね」
星野アイは、できる限りの笑顔を作ってそう告げた。
こういう話で、重々しい空気になるのは苦手なのだ。だから口調はなるべく軽く。ダイエットのために間食をやめる。気分じゃない日には学校に行くのをやめる。そのくらいのラフな感覚で、「アイドルをやめる」と告げてみた。平和で穏便に事が済むなら、それが一番。
しかし、その目論見は上手くいかなかった。アイの言葉を聞いた相手は、尋常ではないほどの動揺を見せてしまったのである。
「おいおいおい、ちょっと待て!」
声を荒らげているのは、この事務所の社長だ。名前はたしか佐藤さんだったか伊藤さんだったか、たぶんそんな感じ。
その社長が、下顎が外れそうなほどにあんぐりと口を開け、アイを見つめている。
「やめる? お前今、アイドルやめるって言ったのか? マジで?」
ここは、芸能プロダクション、『苺プロ』の会議室。もっとも、会議室とは名ばかりで、実質は応接室と小道具保管室、それから社長の喫煙所も兼ねた、六畳程度の物置である。弱小事務所にはよくあることだ。
アイは夕方からの三時間のダンスレッスンを終えた後、スポーツウェアのままこの会議室を訪れていた。着替え途中の他のメンバーの目を盗んで、ひとりきりで。
その理由は他でもない。社長に、所属するアイドルユニット「B小町」からの脱退を告げるためだ。
「いわゆる卒業っていうか? ぼちぼち潮時かなあって」
やめると告げたアイの瞳を、社長は啞然とした様子で見据えていた。何言ってんだこのバカは――という視線が、サングラスを通して突き刺さってくる。
「潮時ってお前、アイドル始めてまだ三カ月ってところじゃねえか。いくらなんでも早すぎるだろ」
「別に、三カ月で卒業しちゃダメって決まりはないんでしょ?」
社長は「まあないけど」と眉間に皺を寄せた。
「冗談だろ? なあ、冗談だって言ってくれ」
「冗談じゃないよ。もうやめるって決めたし」
アイがきっぱりと切り捨てると、社長は眉尻をへの字に下げて、困ったような表情を浮かべた。
問題児を目の前にした大人は、大抵皆こういう顔をする。アイにとっては昔から見慣れた表情だった。施設の職員も学校の先生も、みんな同じ。面倒くさい子を見る目だ。
社長は「はあ」とため息をついた。
「なんでだよ。アイ、お前はB小町のセンターだろ。カメラ割りも歌割りも、お前が一番多いんだ。なにが不満なんだよ」
社長の背中には、会議用のホワイトボードが置かれている。そのボードにマグネットで留められているのは、先週下北沢で行ったライブイベントの告知チラシだ。ライブを合同開催した他のふたつの地下アイドルグループと一緒に、B小町の写真が印刷されている。
そしてそのB小町の写真のうち、一番目立って写っているのがアイだ。小首を傾げ、両手でハートマークを作ったぶりっ子ポーズ。さすがにこれはちょっとバカっぽかったなあ――と、いまさらながら思う。
もっとも、アイドルをやめると決めた今では、それもどうでもいいことだけれど。
「不満とかは別にないけど」アイは肩を竦めた。「やめたいからやめる、じゃダメ?」
「ダメに決まってんだろ」社長は唇を尖らせた。「B小町も、ようやく軌道に乗ってきたところなんだ。まだ地下アイドル扱いとはいえ、ライブをやりゃあ箱はそれなりに埋まる。客も苺プロのスタッフたちも、お前らには期待してんだよ。なのに、そこでセンターのお前がいきなり抜けちまったらどうなる。今までの苦労が全部水の泡だろうが」
社長の説教を、アイは右から左に聞き流す。B小町の状況なんて、言われずともよくわかっていた。
B小町は、結成から三カ月の新人アイドルユニットである。アイを含めて、現在のメンバーは七名。皆ローティーンの女の子たちだ。
他のメンバーはもともと苺プロに所属していた中学生モデルたちなのだが、アイだけは立場が違う。つい去年までは、芸能界とはまったく無縁の生活をしていた。
そして、それこそが問題なのだ。
「私さ、B小町に入った経緯が他の子と違うじゃん」
アイが言うと、社長が「ああ」と頷いた。
「街をフラついてたお前を、俺が直々にスカウトした。光るモンを感じたからな」
才能を感じてくれた。そう言われること自体は気分も悪くない。
「うん。私やっぱりめちゃくちゃ可愛いからね。そこはホントその通りだと思うよ」
「相変わらず自己肯定感の塊だな。別にいいけど」
社長の半ば呆れたような反応に「そうそう」と頷き返し、アイは続ける。
「実際、いきなりセンターに抜擢だったわけだし。社長の見る目は正しかったと思うよ」
「そいつはどうも」
「でもなんかさ、そういうの気に食わないっぽくて」
「気に食わないって、誰が」
「B小町のみんな」
芸能活動の実績がない新人が、どういうわけか即センターに抜擢。他の創設メンバーからすれば、こんなに腹が立つことはないだろう。ぽっと出の素人が、一番目立つ席を奪ってしまったのだから。
「なんかあったのか。他のメンバーと」
社長に問われ、アイは「まあそんな感じ」と言葉を濁した。
「私がいない方が、みんなの雰囲気良くなる気がするんだよ」
アイの言葉に、社長は「むう」と唸った。
「まあ、お前がセンターになって以降、たしかにちょっとピリピリしてるみたいだけど」
「ちょっとピリピリっていうか、かなりギスギス?」
アイのセンターポジションが不動のものとなり、早一カ月。他のメンバーからの風当たりはますます強くなってきている。
控え室での陰口や舌打ちなんてザラだし、B小町の裏サイトであることないことを書かれたこともあった。やれ「アイは空気読めない」とか「ただカワイイだけの子ってアイドルに相応しくないよね」だとか。
もちろん彼女たちの書きこみは匿名だし、誰に咎められることもない。ただ、どう見ても内部の人間にしかわからないような内容も書きこまれていることから、それが確実にメンバーの誰かの仕業だということは明らかだった。なんとも周到なやり口だと思う。
その他にも、衣装や小道具にイタズラをされることもあった。ステージ用のリボンや靴が失くなるのは日常茶飯事。ライブの前日にアイの衣装がゴミ箱に丸めて捨てられていることもあった。こういう類の嫌がらせは、地味にこたえる。
「私としては、『またかー』って感じなんだけどね。学校でも施設でも、これまでそういうことって結構あったし」
十二年ちょっとの人生で、アイが学んだことがふたつある。
ひとつは、自分はどうも色々なことが「普通」からズレているらしいということ。見た目や物の考え方、育ち、生活環境。そういったものが、アイは同年代の他の人たちと大きく異なっている。周りに気味悪がられるのが、慣れっこになってしまうほどに。
そしてもうひとつ学んだのは、「普通」の人間は、「普通」ではない者を、どうしても受け入れられないということだ。「普通」の人たちは、「普通」からズレた者たちを攻撃し、外に追いやろうとする。そうすることで「普通」の世界を守ろうとしているのだ。まるで童話のアヒルたちが、自分たちと毛色の違う子アヒルを群れから追い出してしまうように。それはもう、もともと生きものに備わった本能のようなものなのかもしれない。
つまりアイは、どんな集団にいようと浮いてしまうのである。学校でも施設でもB小町でも同じ。アイは「普通」のみんなにとっての「毛色の違うアヒルの子」なのだ。
これはもう仕方ない。この状況を良くするためには、色違いのアヒルの子を外に追い出すしかない。
「B小町がギスギスしてるから、お前が抜けるってのか」
社長の目に見つめられ、アイは「そうだよ」と頷いた。
「前に社長、言ってたでしょ。たとえ噓でも愛してるって言っていいって。愛してるって言ってるうちに、噓が本当になるかもしれないって」
「そんなことも言ったな」
社長が頷いた。スカウトのとき、彼が告げた言葉だ。
誰かを愛した経験も、愛された経験もない自分でも、愛を叫んでいい――。本当にそんなことができるのかが気になって、アイはあのとき彼の誘いに乗った。まだ、そんなに昔の話ではない。
「でもさ、結果は全然逆になっちゃった」
「逆?」
「私が頑張れば頑張るほど、B小町のみんなはイライラしちゃうっぽい。みんなを愛するどころか、憎しみが広がっちゃってる感? こういうのなんかなあ、って思っちゃうんだ」
B小町には、毎日アイに嫌がらせを仕掛けてくる子たちがいる。いくら慣れているとはいっても、剝き出しの悪意をぶつけられて嬉しい気分にはならない。
ネットで陰口を書かれた日には、なんだかやる気が失せる。私物を壊されたりした日には、どうしてもため息が増えてしまう。
アイドルは笑顔が大事なんていうけれど、こんな状況じゃ笑うに笑えない。それでもカメラの前で無理やり笑顔を作らなければならないときには、なにもかもが馬鹿らしく思えてしまうのだ。
いったい私、なんのためにアイドルやってるんだっけ――と。
「まあ、お前が言いたいこともわかるけどさ」
社長は困ったような表情を浮かべた。灰皿の上の吸いさしの煙草を咥え直し、「ふう」と紫煙を吐く。
「諦めんのはまだ早いだろ。頑張っても上手くいかねぇなんて、人生よくある話だぞ」
「そりゃあ社長は、人生なにをやっても上手くいかないタイプなんだろうけど……」
アイがそう返すと、社長は「げふん!?」と勢いよくむせてしまった。肺に入れた煙を逆流させてしまったようだ。
「ちょ、ちょっと待て。いやお前さ、いくらなんでもその言い方はちょっと酷えだろ」
「だって社長、現に人生上手くいってないっぽいじゃん」
「おま、いったいなにを……」
「借金まみれだし、この事務所の経営だってろくに上手くいってないし……。おまけにキャバクラでヤケ酒キメて嬢にウザ絡みした結果、店から手ひどく出禁食らっちゃったりもしてるんでしょ?」
「いやまあそうだけど! お前の言う通りなんだけど! つーか誰から聞いたんだそれ!?」
「ミヤコさん」
彼女は、苺プロに所属するスタッフのひとりである。とてもスタイルの良いキレイ系女子で、かつてはレースクイーンやイベントコンパニオンとしても活躍していたことがあるらしい。
特別親しいというわけではないが、この事務所の中では、アイがまともな会話ができる数少ない相手のひとりだった。
アイは、じっと社長のサングラスを見つめた。
「ねえ社長、辛いことも色々あるんだろうけど、元気出して?」
「おいやめろ! そんな憐れみの目で俺を見るな! マジ悲しくなるから!」
社長は頭を抱えつつ、「ったく」とため息をついた。
「そうやって空気ガン無視でズケズケ言いたいこと言っちまうんだからなあ……。ホントすげえよ、お前は」
「そう? ありがと」
アイが微笑み返すと、社長は「褒めてねえよ!」と顔をしかめた。
「なんか、他のメンバーがお前に対して当たりがキツくなるってのも、ちょっとわかる気もする。俺はお前のそういうところも嫌いじゃねえが……やっぱりムカつくやつはとことんムカつくんだろうと思うぜ」
「そうなのかなあ」
アイはただ、自分が思ったことや感じたことを素直に口にしているだけだ。別に周囲に気に入られようとも、嫌われようともしているわけではない。
「んー。やっぱりさ。私が雰囲気悪くしてるなら、いなくなった方がいい気がする」
「いや、お前が一〇〇パー悪いとは言わねえさ。むしろやっかみ抱えちまう連中の方に、大いに問題がある」
社長は短くなった煙草を灰皿に押しつけると、億劫そうに懐から新たな一本を取り出した。そこに火をつけ、話を続ける。
「まあ、そもそもこの業界、どこもそんなモンだけどな」
「そんなもんって?」
「嫉妬と嫌がらせの嵐ってこと。ウチみたいな弱小だろうと、紅白に出るような大手だろうと、どこでも同じだよ。アイドルの本質は変わらねえ」
「アイドルの本質?」
「自分より目立つ子がいればムカつく。ムカつく子は引きずり下ろしたくなる。要するに、出る杭は全力でぶっ叩くの精神だな。表向きでは『メンバーみんな仲良し』なんて謳っていても、そんなグループはどこにもない」
なにせアイドルってのは、承認欲求のカタマリだからな――と、社長は呟いた。
アイもこの数カ月で、それはよくわかっていた。アイドルというものが、見た目ほど華々しい存在ではないということを。
社長は複雑な表情で続けた。
「メジャーなグループでもときどきあるだろ。人気絶頂のメンバーが、突然引退を発表しちまうってやつ。ああいうのって蓋を開けてみれば、メンバー内でめちゃめちゃエグいイジメが行われてました――とか、業界あるあるだからな」
「あー、よく暴露系の週刊誌とかで後々ネタにされてるやつだ」
社長はどこか冷たい表情で、煙草を灰皿の上でもみ消した。
「成功したアイドルの陰には、何百何千って敗者がいる。そういう世界だからな。みんな生き残るために必死なんだよ。えげつない競争に晒されて心をすり減らした結果、手段を択ばず他人の足を引っ張る輩も出てきちまうって話。お前だって、そういう気持ちはわかるだろ」
アイは「うーん」と首を傾げた。
アイにとってステージの上で歌うのは、あくまで仕事である。お客さんたちに喜んでもらったり、可愛いと言ってもらったりするのだって、その延長線上のことだ。
だから別に、B小町の誰がセンターだろうが、誰が一番人気だろうが、自分には関係ないことだと思っている。
「仮に私よりも他の子の方に人気があったとしても、私は別に、その子を蹴落としたいとは思わないな」
アイが言うと、社長は不思議そうに「へえ」と目を見開いた。
「その心は?」
「だってファンからの人気って結局、外からの評価でしかないし。そんなの、どうでもいいかなーって」
「どうでもいいって、どういう意味だ?」
「他人に褒められてもディスられても、自分は自分じゃない? ステージ位置がセンターだろうが舞台袖だろうが、アイドルとしてやることは変わらないわけだし」
アイの返答に、社長が「あー……」と困った表情を浮かべた。
「なるほど、そういうパターンね。こりゃ厄介だな」
「厄介って、なにが?」
「周りの連中との温度差の話。お前はやっぱ変わってるよ。良くも悪くもな」
変わってる。そう評価されるのは、もはや慣れっこだ。
結局、すべての原因はそこなのだろう。自分は「普通」ではないから。空気が読めないから。だから自分は、みんなのことが理解できない。アイドルの「普通」も、人間の「普通」も、よくわからない。
「なんかさあ。色々考えちゃうんだよね。あれ、やっぱり私、アイドルとか向いてなかったんじゃない? って」
アイが言うと、社長は「そんなわけないっての」と首を横に振った。
「なあ、頼むよアイ。考え直してくれないか」
社長は両手のひらを顔の前で合わせ、アイに深々と頭を下げた。
「新曲だって上がってきたばかりだろ。次のステージも決まってるんだ。今センターのお前に抜けられたら、俺もB小町も終わりなんだよ」
「んー。そうかな」アイは首を傾げた。「別に私が抜けたって、他の子をセンターにするなり、また新しい子を探すなりすればいいんじゃないの?」
アイドルなんて、世の中には掃いて捨てるほどいる。当然その中には、アイよりも歌やダンスが上手で、おまけに人付き合いが上手い子だっているはずだ。社長だってすぐ、代わりを見つけることができるだろう。
「誰がセンターやったって、さすがに今より悪くなることはないと思うし」
社長は「いや、そんなことは……」と言いかけ、口を噤んだ。
彼も心のどこかでは「センターを代えれば、B小町の雰囲気も良くなるかもしれない」と、思っているのかもしれない。
その考えは、たぶん正解。まともな人なら、誰だってそう考える。だからアイは社長の考えを後押しするように、にこりと笑みを浮かべてみせた。
「社長だって、B小町には上手くいってほしいと思ってるんでしょ」
「当たり前だろ。お前らを育てるために、どんだけ投資してると思ってるんだ」
「だったらさ、迷う必要なくない?」
社長は「ったく」と後ろ頭を搔いた。そのまま内ポケットに手を伸ばし、再び煙草の箱を取り出す。だがあいにく中身は空だったようで、彼はその空き箱を手の中で握り潰してしまった。苛立たしげに、ぐしゃりと。
「それじゃ、お前はどうすんだよ」
唐突に問われ、アイは「え? 私?」と目を丸くする。「なにが?」
「アイドルやめてどうすんだって話。普通の女の子に戻りまーすってか」
普通の女の子。私が本当に「普通」だったら、そもそもアイドルをやめるなんて思っていなかったかもしれない。なんだか皮肉だなあ――とアイは思う。
「アイドルやめたとしても、特になにも変わらないと思うよ。今だって別に私、芸能人って感じでもないし」
そう。B小町は、単なる地下アイドルでしかない。ただ一応、事務所に所属しているというだけ。そこに一般人との差はないと思っている。
多少ライブに来てくれる人が増えてきたとはいえ、テレビに出ているわけでもなければ、CDがオリコンチャートに入っているわけでもない。せいぜい、インターネットのラジオ番組を一本持っているくらいのものだ。
そんな地下アイドルが卒業するなんて言っても、世の中的には大した問題ではない。〝国民的〟と名の付くアイドルが業界を去るならいざ知らず、この国に何百といる売れないアイドルのひとりが消えていくだけなのだ。ただ誰にも知られず、ひっそりと。そんなの、ネットでは誰も相手にしない。
アイは腕を組み、「でも、そうだなあ」と頷いた。
「事務所を辞めたら、もうちょっとちゃんと学校に行こうかな。私の頭じゃどうせ高校とかには行けないだろうし……中学生のうちに、学生ライフを満喫しとくのもいいかも」
アイがそう言うと、社長は「そうか」と重々しく頷いた。そのままじっとアイの目を見て、告げる。
「腹は決まってるってことか」
「うん」
「じゃあしょうがねえ」社長は深いため息をついた。「学生ライフを満喫するなり、お前の好きにすればいいさ」
「それって、アイドルやめていいってこと?」
「どーせこれ以上俺があれこれ言ったって、もう聞かないんだろ」
「おお、社長、わかってるじゃん」
社長は「別にわかりたくもねえけどな」と顔をしかめた。
この人とはせいぜい半年程度の付き合いだったが、それなりにアイのことをよく見ていてくれていたようだ。結局こっちは、最後まで名前は覚えられなかったけれど。
「それじゃあまあ、そういうことで」
アイは席を立とうとしたのだが、社長が「あ」となにかを思い出したように声を上げた。
「いや、ちょっと待て」
「え?」
「やめる前に、ひとつ仕事を頼みたい」
「仕事?」
アイは首を傾げた。いったいなんだというのだろうか。
「今度の日曜、ちょっと俺に付き合ってくれ。最後に一個、お前にやってもらいたいことがあるんだ」
読んでいただきありがとうございました!
この続きは製品版でお楽しみください。
以下のリンクより購入が可能です。