_JUMP-j-BOOKS_第5回ジャンプホラー小説大賞差し替え用イラスト_2

はじめまして、ジャンプホラーです。

note読者の皆様、こんにちは。ジャンプJブックス編集部の、ミニキャッパー周平(命名・『いぬまるだしっ』『トマトイプーのリコピン』の大石浩二先生)と申します。

編集部では現在「ホラー」に注目しており、「ジャンプホラー小説大賞」を主催しています。第5回の締切は間もなく、6月末日。そして、第4回の金賞受賞作『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ』(←胸を打つゾンビ青春小説。異色の傑作です‼)は6月19日発売です。


マーチング・ウィズ・ゾンビーズ
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私はそんな「ジャンプホラー小説大賞」の宣伝隊長を務めています。これまでジャンプホラー小説大賞では、宣伝企画として、JブックスのHPやブログで以下のような記事を掲載してきました。

■プロに聞く! ホラー作家になるためのQ&A

ジャンルの最前線で活躍するホラー作家の先生方へのインタビュー。人生を変えた作品や、ホラー作家を目指す人へのアドバイスなども伺っています。
これまでに、小説家では、山白朝子先生、平山夢明先生 、櫛木理宇先生、井上雅彦先生、牧野修先生、小林泰三先生、ウェルザード先生、福澤徹三先生、黒史郎先生、三津田信三先生に、漫画家では『呪術廻戦』の芥見下々先生にご登場頂きました。

■ブログ「ミニキャッパー周平の百物語」

毎週土曜深夜2時更新で、私が気になったホラー作品を、最新のもの・古いもの問わず闇雲にご紹介していくブログです。2019年6月5日現在、135回の更新を数えています。最近では、とあるホラー作品の文庫版の巻末で言及して頂き、私がビビるという嬉しい事態も発生しました。

■編集部員から応募者へのメッセージ

編集部員それぞれが好きなホラー作品の紹介、ジャンプホラー小説大賞にこれまでどういった作品が多く応募されてきたかの分析、どういった作品が受賞してきたかの解説など、応募者にとって執筆の手がかりになるような記事もたびたび掲載しています。

今後、このnoteにも、新しい記事の掲載や、上記のような過去記事の転載などで、ホラー関連のコンテンツも様々増えていくと思います。
そこで今回は、ご挨拶とともに、そもそもなぜジャンプJブックスでホラーなのかを改めてお伝えしたいと思います。

●ジャンプJブックスとホラーの繋がりについて

1996年、弊編集部が開催していた第6回ジャンプ小説・ノンフィクション大賞において、幼い兄妹による死体隠蔽を描いたホラーサスペンス『夏と花火と私の死体』で大賞を受賞し、デビューを果たしたのが、乙一先生でした。
その後の、ジャンルを超えた乙一先生の活躍についてはここに記すまでもありませんが、乙一先生がまず「ホラー」作品で若い読者に圧倒的な支持を受けたことは編集部内でも長く記憶されています。
ジャンプ小説新人賞フリー部門を2013年に受賞し、全6巻を数えることになった永遠月心悟先生のデビュー作、『怪談彼女』シリーズも、ヤンデレ幼馴染とともに主人公が怪異に立ち向かうホラー作品として、『ゆらぎ荘の幽奈さん』で知られるミウラタダヒロ先生のイラストとともに読者からの好評を得て、ヒットシリーズとなりました。
以降も、ノンジャンルと銘打っているジャンプ小説新人賞には、ホラー作品が度々送られてきていました。それは潜在的にホラーを書きたい、読みたいという人の潜在的な多さの証明でした。また、近年の週刊少年ジャンプでも、脱獄サスペンス『約束のネバーランド』や、呪術バトル『呪術廻戦』など、ホラー的な演出、恐怖を掻き立てる魅せ方で、読者の心を掴む作品も大きなヒットを呼んでいます。
そんな流れの中で、今こそ「ホラー」を推していきたいと、生まれたのがジャンプホラー小説大賞です。

●宣伝隊長の、個人的なホラーへの思い

私の小学生時代は「学校の怪談」ブームの最中で、小学校の図書館には、怖い話を大量におさめた児童書がたくさん所蔵されていました。その中身は、いわゆる学校の七不思議、通学路や家といった子供の行動範囲圏内で起こる怪異、松谷みよ子『現代民話考』のような資料本をネタ元に書かれたであろうもの、「猿の手」や「テーブルを前にした死体」のような古典の改作、オルレアンの噂のような都市伝説のバリエーションなど、様々でした。怖さのあまり読んで後悔するのは分かっているのに読んでしまう、そういう体験をした子供は私以外にも少なくなかったでしょう。

当時は、子供へ向けたホラーの映像作品も多く作られていましたが、その中でも記憶にこびりついているのは、「天才てれびくん」内で放送していたドラマ「妖怪すくらんぶる」でした。現代を舞台に、小学生たちが妖怪に立ち向かうホラーです。私と同世代であれば、「もっこく、どこくすい、こっか、こっきん、こくもく、てん」の呪文を覚えている視聴者も多いのではないでしょうか。
学校内で肩を触れられた人間がどんどん妖怪に洗脳されていって、洗脳された生徒・教職員が体育館で融合する場面だとか、手強い妖怪を倒した主人公たちが胸を撫でおろし立ち去ろうとしている背後で、妖怪の死体が紙になる(つまり倒せたのは本体ではなく式神だったと視聴者にだけ分かる)場面だとか、いまだにトラウマ的な恐怖とともに心に刻まれています。
当時の、「怖くて目を背けたくてたまらないのに見てしまう」という矛盾した感情が、私のホラーへの興味の原点だと思います。


●どんなホラーを求めているか、どんなホラーを送り出したいか

「恐怖」は時代を映す鏡です。吸血鬼、フランケンシュタインの怪物、クトゥルー、ゾンビといった英米ホラーやモンスターの系譜を見ても、学校の怪談、サイコホラー、デスゲーム、ネット怪談、ループもの、SCPなどといった近年のホラートレンドの変遷を見ても、読者を怖がらせ、楽しませてきたのは、同時代に生きる人々の想像力の中から“不安”を掬い取り結晶化させた、清新な作品でした。その時代、その空気だからこそ共感されうる恐怖を、真っ先にモンスターや現象の形に託して魅力的に語ったものが、新しい潮流を作り上げてきました。「貞子」が平成最大のホラーアイコンになったのは、ビデオテープ越しの映像を通して感染するという、あの時代にしか生まれ得なかった恐怖の形を体現していたからでしょう。

今では、ホラーが語られる媒体も紙のみにはとどまりません。「ループもの」ホラーの流行は、ゲームという新しい媒体との親和性によって加速した面がありますが、アプリ形式で物語を読むコンテンツでも、ホラーは新たな表現方法を獲得し、人気を博しています。

ジャンプJブックス編集部が求めるのは、若い読者に刺さる新世代ホラーの書き手です。「ジャンプホラー」という名前ですが、少年漫画的なホラーを求める賞という訳ではありません。怪談、退魔ファンタジー、心理サスペンス、デスゲームなど、広義のホラーや怪異をテーマにした作品であれば内容は不問です。もちろん、「科学が生んだ人造の怪物」テーマの嚆矢となった『フランケンシュタイン あるいは現代のプロメテウス』のように、あるいは日本に「デスゲーム小説」の隆盛を決定づけた『クリムゾンの迷宮』『バトル・ロワイアル』のように、ホラーのジャンルひとつを自分で切り開いて頂くのも大歓迎です。

改めてになりますが、6月19日刊行の、第4回ジャンプホラー小説大賞<金賞>受賞作、『マーチング・ウィズ・ゾンビーズ ぼくたちの腐りきった青春に』は、ゾンビ小説でありながら闘病小説であり、何よりも青春小説であるという傑作です。ぜひ、本書をよろしくお願いいたします。

マーチング・ウィズ・ゾンビーズ
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そして、今後のこのnoteにおけるホラー記事企画と、ジャンプホラー小説大賞を、何卒よろしくお願いいたします。