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29歳のホテルマンが、一橋MBAに通うことにした。

 こんにちは。ホテル業界のIT部門で働いているじゅたろうと申します。2020年の4月から「一橋大学ビジネススクール 経営管理研究科(ホスピタリティ・マネジメント専攻)」にて学ぶことにしました。

 ビジネススクールと言っても色々ありますが、僕の場合は平日の夜、仕事が終わってから大学院に通うスタイルになります。仕事終わりの18:00〜22:00がだいたい週3〜4日。これが2年間なので相当ハードなのですが・・・それでもなぜこのタイミングで「MBAを取る」という意思決定をしたのか書いておきたいと思います。

※この記事を書いている間にコロナ対策で5月7日から授業開始、春夏学期はオンライン授業を行うという方針になりました。大学入学が東日本大震災の時期だったので、奇しくも2回目の入学式中止、授業延期を経験することになりました・・・。

※受験対策や、なぜ一橋にしたのか?という点については別Postでまとめる予定です。

記事の前提として、簡単なプロフィールを。

プロフィール
・文学部卒業(フランス史専攻)
・サークルやバイトでWebデザインやビジュアルデザインをかじる
・社会人6年目、29歳(新卒で現在の会社に入社)
・日本企業ならではの古いところを少しでも変えられるように、業務改善をメインにIT部門で頑張っている(イマココ)

 なお、「ホスピタリティ業×MBA」というのはスイスのローザンヌホテルスクールや米コーネル大学が有名で、欧米では伝統的な概念です。一方で日本のMBAは製造業に強い面があり、これから「観光立国」を目指すのであればホスピタリティ業に特化した「経営者的人材」の育成が重要です。そこで、国立の京大と一橋にそれぞれ専門のMBAコースが設置されたという経緯があります。(この件についてはこちらの記事に概要が書かれています)

そもそもMBAとは何か?

 そもそもMBAって聞いたことあるけど、何を勉強するの?何の役に立つの?と言う方も多いのではないでしょうか。MBAとは「Master of Business Administration」の略であり、簡単に言えば「経営学を勉強した修士」ということになります。

MBAとはMaster of BusinessAdministrationの略称です。日本語では経営学修士号、または経営管理修士号と呼ばれる学位であり、経営学の大学院修士課程を修了すると授与されます。よくMBAは資格(国家資格や業務独占資格等)と混同されることがありますが、MBAは資格ではなく「学位」です。(中略)MBAプログラムを提供している大学院は、通称としてビジネススクールと呼ばれており、主に社会人を対象にしています。(グロービス経営大学院より抜粋)

 学ぶ内容としては経営戦略、マーケティング、組織、財務会計など企業経営全般に関わる学問を体系的に学びます。これら基礎知識に加えて経営者の講義やケーススタディ、サブ科目が設置されることが大半です。

 ちなみに、国内MBAでは学校によってカリキュラムの幅が大きく違います。例えば一橋は狭く深く、セオリー重視の学術寄りなのに対し、早稲田は理系学問もあり幅が広い分、それぞれ深く習得するには相当な努力が必要という感じです。非大学係属のグロービスはディスカッション・ケーススタディ重視の実学寄りで、前述の2校に対して卒論に相当するものがありません。(※上記の切り口以外にも、費用や開講日、国際認証の有無など選ぶ基準は様々あります。この辺りも別Postでまとめたいと思います。)

 一般的にMBAは米国が本場とされており、MBAホルダーになれば年収が大幅に上がる、もしくはDirectorクラスに昇格するための条件となります。しかし、日本ではMBAがあるからと言って昇格するわけではありませんし、転職する場合は有利に働くこともあるようですが、多くの場合年収が倍増!というわけにはいきません

なぜMBAを取ることにしたのか?

 そもそも僕は当面転職するつもりもなく、退職して起業するといった考えも今のところはありません。現時点では「今の会社でキャリアを積み、経営者になる」ことをビジョンとしています。では、転職して年収を上げたいわけではなく、MBAがあっても社内キャリアに有利ではないなら、MBAに2年間のプライベート時間と約160万円の費用をかけるのは果たして「割に合う」のでしょうか。

 もちろん、まだ通いはじめてもいない立場なので本当に「割に合う」かどうかは分かりませんが、今の段階でどのような理由で意思決定したのか書かせていただきます。

1. 経営知識を部署異動だけで網羅するのは不可能だと思ったから
2.ホテルビジネスの文脈でICTを成熟させたいから

1. 経営知識を部署異動だけで網羅するのは不可能だと思ったから
 伝統的な日本企業では、「職能型組織」が採用されている場合が多いと思います。この中で何人かが社長や役員になるわけですが、基本的に各部門の中で偉くなっていって、そのまま経営者になるパターンが一般的なのではないでしょうか。この場合、極端な話「俺、製造とか技術は詳しいけどお金のこと何も分からないわ」みたいな社長が誕生する恐れがあります。

  とはいえ、役員は他にもいるのでリスク管理に詳しい人とか財務会計に詳しい経理出身の人とかで助け合えばいいじゃないかという意見はあると思います。しかし経営トップは会社のすべてを決断する人です。なんとなく会社が回っているときならまだしも、経営危機が訪れても「お金のことよく分からないから、細かいところは君よろしく」とは言えない、いや言うべきではないはずです。

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 個人的にはこの問題意識が強く、多少浅くても良いからゼネラルな知識を持った経営者になりたいと考えています。会社に入ったころは様々な部署を転々とすることで解決できるのでは?と思っていましたが、ジョブ・ローテーションで網羅することは不可能です。そもそも自分の思い通りの場所に思い通りの期間で異動するなんて不可能だし、万が一それができたとしても実務と経営者に必要な知識は別です。経理や経営企画に行ったからと言って、正しい企業価値判断ができるようになるわけではありません。

 せめて知識という武器を身に着けてから経営者として戦うために、MBAが最も効率的ではないかと考えました。

2. ホテルビジネスの文脈でICTを成熟させたいから
 前述の通り、僕はホテルのIT担当として働いています。これからホテルマン人生をずっとIT畑で歩んでいこうと思っているわけではありませんが、ホテルビジネスあるいはホスピタリティビジネスでのICT活用はまだまだ未熟で、大きな問題意識があります。

 その根底には、当然ホテルの提供価値が「リアルな場」ベースというある種当然の前提があります(ホスピタリティ業全般もそうかもしれません)。ホテルは基本的に空間を貸すビジネスであり、お客様にとってかけがえのない時間を提供することに価値があるビジネスです。

 しかし、コロナで顕在化したように「集う」ことはオンラインで出来てしまう。例えば20年後、サイバーフィジカルシステムが一般化したらホテルで結婚式をやってくれる人はいるのか?自動運転でリラックスしながら移動・宿泊できるクルマが生まれたら・・・ICTが発達した未来においてホテルは果たして必要なのか?

 答えは「わからない」です。
 しかし個人的な願いとしては当然「必要」である。必要でありたい。
 そして使命としては「必要なものとしてアップデートする」です。

 ホテルがICTの急激な進化の中で生き残っていくのに必要なのは、ITの知識ではありません。むしろビジネスモデル論であり、戦略論であり、組織論です。経営の知識、それもせっかくホスピタリティ専攻がある一橋を選んだので、ホテル特有の経営も学びながら、そこにICTだからこそできるビジネスモデルを組み合わせていきたいのです。ホテルがお客様に大切な時間を提供する場がリアルだけではなくなるのであれば、その価値観を壊し、新しい価値を提供したい。答えがすぐに見つかる問題ではありませんが、卒論なども通して追求していければと思います。

なぜ、いまなのか?

1. MBA取得後のビジネス経験期間が長い方が良いから
2. 人生設計を考えたとき、"次"は10年後になると思ったから

1. MBA取得後のビジネス経験期間が長い方が良いから
 「いつかはMBAを取りたいな〜」と漠然と考えていました。しかし仕事も忙しいし、なかなか踏ん切りがつかない。そんな中、単科で通っていたグロービス(ちなみにグロービスの授業を受けて面白かったこともMBA進学を決めた一因)でお会いしたMBAホルダーにこんなことを言われました。

MBAで学んだことは実践する必要がある。実践できる期間は長い方がいい。

 MBAはいわゆる実学です。セオリーを知ることで勝率は上がりますが、もちろん現実のビジネスで100%勝てる方法は存在しません。業界によってもセオリーの適用可能な範囲が違うし、自分・自社の文脈で実践して修正していく必要があります。実践期間は当然長い方がトライ・アンド・エラーを分析しやすい。つまり、その点では早くはじめた方が有利ということです。

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 この話には非常に納得感があって、例えば50歳で社長になると仮定して、30歳でMBAを取るか40歳でMBAを取るかでは10年の差があるわけです。早く勉強して、学んだ理論を自分のビジネスの中で活かす。理論通りに行かないところはその原因を分析する。そういった試行錯誤の期間を10年長く持つことができます。その試行錯誤の期間、回数、精度が自分が経営者になったときの勝率を上げるのだと思います。

 もちろん、年齢を重ねてから勉強すればその学びに今までの経験が結びつくので、どちらかが良いと言うわけではありません。ただ、僕自身は自分のやり方で10年過ごすよりもセオリーを学んでみてからの10年の方が面白いと思ったため、比較的若い時点でのMBA進学を決めました。

2. 人生設計を考えたとき、"次"は10年後になると思ったから
 あとはシンプルにタイミングが良かったから。近い将来子どもが生まれたとしたら、子育てを全部奥さんに任せて自分は勉強というわけにも行きません(そもそも子育てはしたい)。仕事についても今よりどんどん責任も業務量も上がっていくことが予想されます。今の職場の方は理解がありますが、異動で職場が変わればどうなるか分からないのが現実。

 ここ2年は子どもは作らない予定、異動もないと思われる・・・そういった自分の周辺の様々な要因を考えて、「今しかない」という判断をしました。子どもが生まれたら、次のチャンスは早くて10年後。10年経てば40歳くらいで、管理職になっていたらそりゃ毎日定時上がりはなかなか厳しいでしょう。このチャンスを逃したら10年後だ!と思って挑戦しました。

 人それぞれタイミングは違うと思いますが、「やりたいと思ったとき」がやるべきタイミングです。「ビジネス経験が浅い」とか、「前提知識がない」と悩むの気持ちはわかりますが、MBA(特に夜間)は周りの環境・理解も重要なので、やれるときに挑戦すべきだと思います。

おわりに

 僕のようにホスピタリティ(+テクノロジー)×MBAというキャリアプランはレアだと思いますが、やりがい重視で日本企業を選び、長く勤めて戦いたい!っていう同年代は意外と多いのではないか?と思います。誰かにとって少しでも参考になれば幸いです。

 MBAに進学することを知らせた知人からも個別に質問を受けることが増えてきましたので、次回は「なぜ一橋を選んだのか?」や受験についてもまとめられたらと思います。また、授業から得た学びも出来るだけアウトプットしていきます。

 今後ともよろしくお願いします!

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