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【MBA読書録】『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(奥野一成)

こんにちは。4月から一橋MBAに通っているホテルマン、じゅたろうです。

MBAに入ってから、というか経営を勉強しはじめてから多くの本を読まなくてはならなくなりました。少しづつ数を読むことには慣れてきたけれど、読んだ知識を昇華できているかがとても不安・・・。というわけで、本を読んだら、簡単でいいので読書録(できれば書評と呼べるようなもの)を書いていこうと思います。

読書録の目的は主に以下の3つです。
①せっかく読んだ本の内容を少しでも長く記憶するため
②アウトプットの機会を設けることで、読書のモチベーションを上げるため
③読んだジャンルの偏りを把握するため

今回はこちら。
奥野一成『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』
(読了日:2020年7月16日)

この本のメインメッセージ

自分の頭で考え続けることで「構造的に強靭な企業」を探し出し、投資を行い、労働者を脱せよ。

要旨

【Point1】
投資は「優秀な経営者に働いてもらって稼ぐ」ことであり、日本人は労働者思考を脱して投資家思考を身に着けることで豊かになれる。
【Point2】
長期的に投資してリターンを得るには、「参入障壁が高い企業」すなわち「本当に社会に価値を提供している企業」に投資することが重要である。
【Point3】
幅広い知識を身に着け、それらを結びつけることで仮説構築・検証という思考を行うことで、②のような事業の経済性を考察することができる。この能力は投資以外にも役立つビジネスの本質である。

書評

 著者は、農林中金バリューインベストメントというファンドでCFOをされている奥野さん。投機的な株の売買ゲームではなく長期の投資をもとに「複利」を得ることを目的に投資している。日本でバフェット流の投資を実践している人物だ。

 前半は、日本人に「労働者」ではなく「投資家」の思考があれば日本の経済はもっと豊かになるという議論。投資することで、日本電産の永守さんやソフトバンクの孫さんに「働いてもらう」ことで利益を得ていくという発想だ。考え方の根底には「自分一人でできることは限界がある」というある種残酷な事実がある。労働者はいつまでも時間を対価にお金をもらうだけだが、少しづつ企業を見る眼、経済を見る眼を養い、大局的な視点を養うことで、人間として成長でき面白い人生が送れるというのが奥野さんの思考。

 もちろん投資で儲けた結果の豊かさについて記述はあるものの、それは副次効果である。「知の総合格闘技」である投資を身に着けて考え続ける能力を身につけることこそに価値がある、というのが奥野さんの一番言いたいことだと思う。

 後半は、どのように「企業の本質的な存在意義」を果たしており「圧倒的な競争優位性」を持っている企業を見つけるかについて、自身が実際に投資した企業を挙げて説明している。

 奥野さんは「企業の本質的な存在意義」について次のように述べている。

企業の本質的な存在意義は何か? それは「社会に付加価値をつけるため」に尽きると思います。資本主義は、そのように世の中に付加価値を提供できる企業どうしを「神の見えざる手」によって競い合わせることで、より効率的に機能させる近代最大の発明です。

 そして、「圧倒的な競争優位性」を持っている企業すなわち「構造的に強靭な企業」(なんと、このワードは農林中金VIが商標登録をしている)は次の3つを満たしている企業である。

「高い付加価値」「高い参入障壁」「長期潮流」

 詳細についてはぜひ本書を読んでいただきたいが、例えばコカ・コーラがこの例に当てはまる。

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 さらに、奥野さんいわくこういった企業がリーマンショックやコロナで業績が落ち込んでも「にやにやして割安で株を買う」という。それは、外部要因で一時期落ち込んでも、経済が復調すれば必ず復活するからだ。(こんな会社で働きたい・・・)

 こういった観点をもちながら企業を分析し、その背景にあるメカニズムを理解し、強みを理解する姿勢はもちろん投資家としても重要だが、当然経営者としても持ち続けなければならない思考だ。自分の会社をどうすれば「構造的に強靭な企業」にすれば良いのか、常に問い続けなければならない。

 例えば私のいるホテル業は、マリオットなどは国際的ホテルチェーンであり、無数のホテルを持ち、あらゆるセグメントに対応するブランドを持っている。マリオットの向こうを張って、真っ向勝負で勝つことはできない。しかし、規模では負けるが、競争を回避したり、自分たちしか提供できない価値を見出すことが「圧倒的な競争力」に繋がるだろう。(というか、そう信じないとやっていられない)

 ホテルはどうしてもサービス力に注目しがちである。しかし、サービスも料理の味も全体のレベルが上がり、コモディティ化していくとしたら本当の価値は何なのか?ということを考え続けなければ負けてしまうだろう。(その答えを見つけたくてMBAに入ったと言っても過言ではない)

 本書は、資産形成のための投資の重要性やその仕組についてのエッセンスを教えてくれる。しかし、やはり本当に心に残ったのは、投資する対象の企業をどのように見つけ出すかという「知の総合格闘技」へ取り組むことが、人間としての知的豊かさに繋がるという価値観だ。

 筆者は終盤にこう述べている。

一生勉強し続けなければいけないようで、辛く感じるかもしれません。しかし、成功する人は皆、必ずそうしているのです。楽をして成功した人はいません。 ただし、本当に成功できる人は、学ぶことを苦痛とは感じていません。むしろ努力することを楽しんでいます。学ぶことを楽しんでいます。 そして、旺盛な知識欲と実行力で邁進していった先に、見たことのない新しい景色が見えてくるのです。

 この本は、投資という行為を通して「学び続ける人こそが成功する」という単純な、しかし最も困難な真理の重要性を説いているのである。

 もちろん、読んでnoteにまとめただけでは投資という知の総合格闘技に取り組んだことにはならない。少ない元手ではあるが、自分でしっかり脳みそに汗を書いて投資を実践していきたい。

 オススメ度:★★★★☆
 読みやすさ:★★★★★(スルッと読めます)

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