カップオブエクセレンスの結果出たぞ〜! 2020 結果考察!!中米編!!!

今年のカップオブエクセレンスは COVID-19 のため例年とは異なるプロシージャで行われていますが、無事に中米 4 か国の受賞者発表、COE ロットのオークションが無事に終了し、コスタリカのナショナルウィナーオークションを残すのみ(本日終了予定)となりました。

去年のCOEのふり返りはこちらから!
先に行われたエチオピアCOE2020の結果はこちらから!

ということで、今年のカップオブエクセレンスの結果・中米編をまとめて見ていきましょう!いつもにないテンションですが、カップオブエクセレンス自体お祭りみたいなものなので(個人の感想)盛り上がっていきましょう!まずは各国ごとに気になったポイントをまとめました。ドドドン!!

【ニカラグア】

まずはニカラグアCOE2020の結果をこちらからどうぞ!

・ヌエバ・セゴビア Nueva Segovia エリアのコーヒーが COE ウィナー 17 ロット(農園)中 12 ロット
・マラカトゥーラ種 Maracaturra が 17 ロット中 9 ロットとほぼ半数
・他には Parainema、Catimor など
・1 位のロットはナチュラルプロセスだが全体的にウォッシュドが多い
・アナエロビック Anaerobic とハニープロセスが 1 ロットずつ
・National Winner では 9 ロットがオーガニック認証取得ロット

【グアテマラ】

グアテマラCOE2020の結果はこちらからどうぞ!

・ウエウエテナンゴ Huehuetenango エリアから COE ウィナー 30 ロット中 14 ロットが受賞
・30 ロット中 16 ロットが Gesha
・他には SL34、Batian も見られる(どちらもケニア原産の品種)
・Pacamara も 8 ロット
・プロセスとしてはウォッシュド 16 ロット、ナチュラル 11 ロット
・Washed Double Fermentation、 Washed Anaerobic がそれぞれ 1 ロット

【エルサルバドル】

エルサルバドルCOE2020の結果をこちらからどうぞ!

・COE ウィナー 22 ロット中 14 ロットが Pacamara。さすが原産国!
・ケニア原産の SL28 と SL34
・Bernardinaという謎の品種
・Natural Anaerobic 5 ロット、Lavado(Washed)Anaerobic が 1 ロット
・ハニープロセスも数ロット受賞しており、中米4か国の中では一番受賞ロットのプロセスがバラエティ豊か

【コスタリカ】

コスタリカCOE2020結果はこちらです!

・COEウィナー上位 5 ロット中 4 ロットがタラス Tarrazú エリア産
・単純な受賞ロット数ではウエストバレー Occidente(Western Valley)の方が多い(14 ロット)
・Tarrazú と Occidente の2つのエリアがCOEウィナー 26 ロット中 23 ロットを占める
・Gesha とその変異種?が 26 ロット中 10 ロット
・Kenia SL28、KENYA、SL28、Kenia、Kenya など、全てケニア原産の品種と思われるがとにかく表記ゆれが激しい
・San Roque という品種、さらに San Roque Kenia という品種も
・1 位・2 位がハニープロセス。さすが!お家芸的なことなんでしょうか
・26 ロット中 10 ロットがハニープロセス
・Anaerobic が 7 ロット、ナチュラルとウォッシュドプロセスはほぼ同数


まずはそれぞれの受賞農家に拍手!!!おめでとうございます。ジャッジとして参加された方、オークションに参加した方、ワクワクしながら結果を待っていた皆様、お疲れさまでした。
COEの結果がそれぞれ発表されるのに合わせて記事を書こうかな?とも思っていたのですが、中米4か国の結果を比較しながらまとめてみた方が現在のコーヒー生産のトレンドや国別の状況などが分かりやすいのではないかと思い、少し遅れての記事となりました。

エリアの偏りについて

ニカラグアではヌエバ・セゴビア Nueva Segovia、グアテマラではウエウエテナンゴ Huehuetenango、コスタリカではタラス Tarrazú とオキシデンテ Occidente エリアに受賞ロットの偏りがみられました。ということは、これらのエリアでおいしいコーヒーが沢山生産されている…というのはもちろんなのですが、設備や、技術・知識を含めた資本がこれらの地域に集中しているとも言えます。

また、COEはどうあがいても「大会」であり、「大会」に勝つためには往々にして「勝ち方」というものがあります。特別な品種、特別なロット、特に丁寧な収穫と生産処理プロセス…ここに手間と人件費を割いてリスクを取った上で、勝てるかもわからない大会に参加するか??まず応募できる農園がその時点で絞られることになります。上記のエリアはいわゆる有名農園が多数存在することで有名ですが、それだけがその国のコーヒーを表しているわけではなく、それ以外にどんな生産エリアがあって、どのような農園があるかを知ることもとても重要だと思っています。もうちょっと ACE(COE の運営をしている団体)がそのへんに光を当ててくれたらいいんだけどなあ…。

品種について


ニカラグア → マラカトゥーラ
グアテマラ → ゲシャ
エルサルバドル → パカマラ
コスタリカ → ゲシャ

それぞれの国で最も COE 受賞ロット数が多かった品種です。この結果、どうでしょうか。
なんだか…ニカラグアって本当にお金がないんだなあ(泣)と思ってしまいました。中米の他の国がゲシャやらケニアの品種やら、スター品種(苗木がお高い品種)を続々と COE に送り込む中、淡々とマラカトゥーラで勝負を仕掛けるニカラグア…。。


マラカトゥーラ Maracaturra はその名の通りマラゴジペ種 Maragogype とカトゥーラ種 Caturra の自然交配種です。19世紀後半にブラジル、エルサルバドル、ニカラグアで自然発生したと伝えられています。マラゴジペ種からはその特大サイズを、カトゥーラ種からは高い収量とカップクオリティを受け継ぎ、コーヒー葉さび病への耐性もあります。

エルサルバドルでパカマラ Pacamara が強いというのもさすがだなあという感じですが、ニカラグアでカチモール Catimor が受賞したのすごくないですか??アラビカとロブスタの交配種ですよ??Catimor で 87.9 点なんて聞いたことないです。本当にコーヒーのことをよく分かって丁寧に育てている農家なんだなあというのが、もうそれだけでわかりますよね。

パライネマ Parainema はホンジュラス原産(T5296 という品種の改良型)のコーヒーで、隣国ニカラグアでも栽培されているようです。コーヒー葉さび病への耐性があります。

ベルナルディーナ Bernardina はエルサルバドル原産?のコーヒーです。このページを参照したのですが、もともとは Finca Los Bolletos という放棄されていたコーヒー畑で発見され、DNA の 70 %は Geisha 種と一致、30%は過去に知られていない品種(近縁種として agaro という品種がある)で、しかも見つけられた当時既に樹齢が 70 歳近くだったため、なぜそのような交配をしたのか、誰が持ち込んでなぜその農園に植えたのか、何一つ分からなかった、というなんともミステリアスな過去のあるコーヒーのようです。

サンロケ San Roque、San Roque Kenia/San Roque Kenya は調べたところ Exclusive Coffee のフェイスブックページに記述がありましたが、SL 由来なのかコスタリカが品種改良で生み出したものなのかは不明です(コメントに指摘が入っていましたが、返答はしていないようでした)San Roqueというのがコスタリカの地名として存在することから、コスタリカの(Exclusive Coffee の?)改良品種ではないかと推察します。

ところでゲイシャ・ゲシャ呼称問題は公式な場ではゲシャに名称統一でほぼ決着ということになりそうですね。表記ゆれがなくなっています。
それに対してコスタリカのケニア原産品種の表記ゆれがものすごいです。それぞれ苗木の仕入れルートが違うんでしょうか?


生産処理方法について


全体的に見ても、いまだナチュラル・ウォッシュドという伝統的な生産処理方法が一般的で、ややウォッシュドが優勢といった感じです。そんな中コスタリカの上位 2 ロットがハニープロセスというのは「さすが〜!」という感じがしました。とてもコスタリカらしい結果だと思います。

アナエロビック anaerobic プロセスはまだまだCOEの覇権を握るようなプロセスとまではいかないようです。発酵というリスクのあるプロセスなので、そのプロセスで挑戦していける資本のある農家がまだ多くないのでしょうか。そういう視点で見ると、コスタリカで anaerobic が 7 ロット受賞、エルサルバドルで 6 ロット受賞というのはかなり驚異的な数字だと思います。エルサルバドルで Natural Anaerobic とあるのはカルボニックマセラシオンとはまた違うんでしょうか…?(アナエロビックファーメンテーションとカルボニックマセラシオンについては過去の記事を参照ください)農園ごとにプロセスの詳細や呼称が様々、というのはスペシャルティコーヒーあるあるなので、あまり難しく考えすぎずに気長に情報を待ちたいと思います。

Washed Double Fermentation というのも気になります。フリーウォッシュドの発酵過程を2回行うという解釈で合っているのでしょうか。このコーヒーのカッププロファイルを見てみたら ”Elegant, Structured Acidity, Orange, Lively, Tartaric And Malic, Citric, Bright Complex, Citric,” と書いてありました(お酢以外のすっぱさ成分全部では??)とりあえず明るい酸の複雑かつエレガントなハーモニーということはよくわかりました。でもフレーバーにシナモンとも書いてあるんですよね…シナモンフレーバーはしばしばアナエロビック anaerobic プロセスで出がちなフレーバーです(イコールというわけではないですが)。単純にフリーウォッシュド2回というわけではないのかも??

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オークションの結果も公表されているので興味のある方はぜひリンクから結果を見てみてください。日本の会社が競り落としたロットも多く、どのコーヒーをどこの会社で飲めるかチェックリストを作ってみるのもいいかも!


楽しみにしていたエクアドル、インドネシアは今年の COE 参加を見送るようです。こういう状況だと仕方ないのかなとも思います。今後はしばらく期間が空いて秋にコロンビア、ペルー、ブラジルの南米勢がCOEに挑みます。こちらの結果も楽しみです!

junko