【祝】エチオピア初のCOE、3ロットで90点超え【無事終了】


元記事:Three Lots Score 90+ at First Ethiopia Cup of Excellence - Daily Coffee News [Nick Brown | May 14, 2020]


経済的、社会的、物流的な障害を乗り越え、記念すべき初開催となったエチオピアのカップ・オブ・エクセレンス(COE)の結果が公表された。28のコーヒーが受賞し、上位3ロットが90点超えとなった。すべてのコーヒーのオンラインオークションは6月25日に行われる予定となっている。
受賞農家が成功を祝う一方、エチオピアコーヒー&ティー当局、アメリカ合衆国国際開発庁USAIDの「Feed the Future Ethiopia Value Chain Activity 」(注釈・日本語にすると「『未来を豊かに』エチオピア バリューチェーン改革」といったところでしょうか)、COEのオーガナイザーであるアライアンス・フォー・コーヒーエクセレンス (ACE、Alliance for Coffee Excellence)の協力関係でエチオピアコーヒー生豆の品評会を行うことができたのは、本当に印象的な偉業だった。


エチオピアの首都アディスアベバにCOEの歴史上最多となる1459サンプルが提出されたすぐ後、COVID-19に関連する規制が世界中に広がりはじめ、移動や輸送ルート、さらに品評会の審査など人が集まるイベントは次々と制限されていった。これに対応するため、ACEは史上初めてCOEの審査をアメリカで行うことを決定し全てのロットをオレゴン州ポートランドに輸送した。また、審査のプロトコルをソーシャルディスタンスに配慮した方法へと変更した。
すべてが順調に終わり、ACEの報告によると130を越えるポテンシャル・バイヤー「買い手候補」が既にオンラインオークションに登録しており、コーヒー農家たちは伝統的なマーケットを通じて売るより何倍も高い利益を得ることを期待している。

トップスコアのコーヒーはシダマ地区、Nigussie Gemeda の農園の天日乾燥のナチュラルプロセスで91.3点だった。Gemeda はACEの発表の中で「私の作ったコーヒーがこんな偉業を成し遂げたなんて、とても興奮しています。一位を狙っていましたからね。私たちが作ったコーヒーを宣伝するだけでなくて、この結果に続く市場機会の恩恵を受けられることをとても嬉しく思います」と話した。


エチオピアのシダマ地区は今回受賞したコーヒーの中でも特に上位を独占し、またウェスト・アルシ(West Arsi)、ウェスト・グジ(West Guji)、ゲデオ(Gedeo)地区のコーヒーが上位にランクインした。上位3ロットのうち2ロットはウォッシュドプロセスであるものの、伝統的な天日乾燥のナチュラルコーヒーがほとんど賞を独占した。

結果はこちらから見られます→ Full list of Ethiopia 2020 Cup of Excellence winners


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まず、まずは上リンクからCOEの結果ページをご覧ください。
「Variety」の項目ありますよね?そこを見てみてください。

Typica以外で知ってる品種、ありました????????


「エチオピアのコーヒーは品種の判別が難しいから全部原種(Heirloom)ってことになってるんですよ〜」と色んな人に幾度となく説明してきたものですが、こんな重要な事がエチオピアで起きているなんて全く知らず、衝撃です(あ、ご存知でした?それはすごい!)


肝心の74158、74110という品種なのですが、西エチオピアのジマにあるコーヒーリサーチセンター Jimma Agricultural Research Center(JARC)が1979/80年に開発した品種で、しかもどちらも CBD(Coffee Berry Disease)への耐性が高く、生豆自体の品質も抽出した液体の品質も高いということが2015年の論文で既に明らかになっています(こちらこちら)。とはいえそれ以外の情報が極端に少ないのですが、あるコーヒー屋のサイトでは「特徴的なシトラス系の風味とフローラル、あんず、いちご、ホップ」と表現していました。


Dega、Kurme という品種に関しては、Coffee Fanatic 三神氏の執筆したエチオピア品種に関する記事「品種の樹海をさまよう! 其の五 ほんとに異界!魔のエチオピア編Part3 Sidama/YirgacheffeのLocal Land Race種が詳細に渡っているのでぜひそちらをご参照ください。勘違いをしていたのですが、「原種」って犬で言うところの「雑種」みたいなことで、親となる木同士が別の品種で、既存品種との同定や新しい品種としての登録にかかるコストを割けないのでまとめて「原種」と呼んでいる、と思っていたのですが、「多くの小さな生産者が色々な品種のコーヒーを処理場に持ち込むため品種の混交が起きてしまう」という事実が一番重要で、原種=物理的に分けることができない様々な品種のブレンド、という意味が正しいようです。
品種の交雑、選定は自然的よりも研究室などの管理された条件下で、遅くとも70年代の後半にはエチオピアで行われていたというのが非常に興味深いです(しかも三神氏のブログによると、そのような研究機関は70年代以前には全く存在していなかったという)。かの有名なエルナ・クヌートセン氏が「スペシャルティコーヒー」という言葉を最初に使ったのが1974年のことなのでこれは延長線上の出来事なのかな?その頃に資本が入ったりしたのかもしれません。

しかし、エチオピアの品種の同定ははるかに進んでいるにもかかわらず、入賞ロットの品種にある程度の偏りがあるというのは非常に興味深くもあります。COEは良くも悪くも影響力が大きいので賛否両論あることも否めないのですが、まずはエチオピアで初のCOEが、コロナウイルスパンデミックの真っ只中に無事に終了した、ということがとにかく嬉しい。ポジティブに受け止めたいと思います。拍手!!!

junko