コーヒーロースターが反人種差別主義に賛同するには - コーヒーロースターズギルド

元記事:How Coffee Roasters Can Contribute to the Anti-Racism Movement
By O.M. MILES, Chair of the CRG’s Equity, Diversity, and Inclusion  Committee 


O.M. マイルズ(コーヒーロースターズギルド(CRG)イクイティ・ダイバーシティ・インクルージョン委員長)


CRGメンバーの皆さん、

こんにちは、マイルズです。私は IKAWA のビジネスデベロップメントマネージャー、元AST&焙煎指導者で、黒人のコーヒープロフェッショナルです。 マイノリティの一員として人生を歩んでいると、自分のアイデンティティに関する様々な考えが常に頭の中にあります。コーヒーに関わっているときも同じです。私は男性優位の業界でコーヒーを焙煎している女性であり、白人優位の業界で働く黒人でもあります。

ジョージ・フロイド氏の殺害が世界的に、そして一般の人々の目に触れるようになるまでは、これらが何を意味していてなぜ重要なのか、そしてコミュニティの中で私たちが議論しないことがどれほど足かせになっているか、同僚と共有する機会がありませんでした。 今、私はこれまで以上に多くのことをシェアすることができ、私の同僚も今回のことをきっかけに学びを深め、初めてしっかりと議論することができました(残念ながら、中には意図的にこの事態への無関心を貫いたり、白人至上主義への賛同を示す人もいました)。

黒人コミュニティの中で白人至上主義的な事件が起きたこの時に、CRGが組織した委員会のボランティアとして私は、このトピックに多くの人が意識を向けるよう尽力し、ロースターコミュニティとCRGという組織にいる人たちを保護しなければいけないという重圧を背負っています。

その多くは目に見えない仕事です。具体的には、委員会の招集、共有、長期的な計画、民主的なプロセス、クロスファンクショナル(部門横断的な)プロジェクト、内部販売、反論と教育など。これらは私たちのフルタイムの仕事に加え、ボランティアとしての仕事になります。  遅ればせながらの紹介ではありますが、ようやくこうして共有できることを嬉しく思います。  今後は、委員会として取り組んでいることや、コミュニティからのフィードバック(これは実は今年の委員会の課題の一つなのです)を受けて、より多くのことを共有できたら嬉しいです。 今後とも注目していてください。読んでくださってありがとうございました。

ーーーO. M. マイルズ(マイルズと呼んでくださいね)

反人種差別主義に参加するためのいくつかのアイデア

1.募金に協力する。
2.クラウドファンディングに参加する。
3.メッセージを発する。
4.嘆願書への署名活動に参加する。
5.選挙に参加する。選挙の重要性を呼びかける。
6.知識をつける。自分も、同僚も
7.自分の職場はどうか鑑みる
8.黒人が経営・運営するビジネスを知り、広め、サポートする
9.黒人のプロフェッショナルに注目する
10.世の中の様々な声を聞き、学び続ける


1.募金に協力する。

・例:Kribi Coffee Air Roasters

ブルーボトルコーヒーヴァーヴコーヒースタンプタウンコーヒーなどの大きなコーヒーロースターだけでなく、数え切れないほどの小さなコーヒーロースターたちが既に募金したと表明しています。

・以下の様々な団体、組織から募金を行うことができます。
 * ACLU
 * Black Lives Matter

 * Black Visions Collective

 * Color of Change
 * Campaign Zero

 * Know Your Rights Camp

 * NAACP Legal Defense Fund

 * National Bail Fund Network

 * Reclaim the Block

 * The African American Policy Forum

これらに加えて、もしより知名度が低く、募金の額も少ないローカルなお店や団体で募金をしている所があれば、ぜひ参加してください。

(注釈:ニュースサイト「FrontRow」にて、「Black Lives Matter運動にお金を出さずに/お金を出して寄付する方法【日本語解説】」という記事がありました。それによると、動画の広告収益を寄付すると発表しているYouTuberの動画を視聴することでも支援ができるようです。募金の仕方についても日本語で解説がされています。)


2.クラウドファンディングを立ち上げる。

・もし募金ができないなと思うのであれば、クラウドファンディングを立ち上げることもできます。以下にいくつか例を上げておきます。
 * Support These Black-Owned Coffee Fundraisers (Sprudge)
 * Bakers Against Racism (Eater)
 * Auctions, Raffles, and Other Ways Independent Fashion Brands Are Supporting the Black Lives Matter Movement (Vogue)

・企業の中には、オンラインシステムや対面式の募金箱を利用して、地域社会からの寄付金と同額を寄付することで募金活動を行っているところもあります。


3.声を上げる。行動を起こす。

・あなたのブランドの知名度と影響力を使って、警察の暴力や人種差別主義に対抗できるよう団結しましょう。世界的な例には、
 * ジョージ・フロイド氏の死亡事件を受けてローマ教皇が声明を発表。
 * 米アップル社のCEOティム・クック氏がメッセージを公表。
 * 韓国の音楽グループBTSとそのファングループが、Blacl Lives Matter の運動に対し200万ドルを寄付。
(注釈:リンクはすべて日本語のニュースサイトに貼り替えてあります。)

・「ブランドを使った活動」という単純なステップだけでなく、そこからさらに次のステップに目を向けましょう。
* ... 免責事項:上記に示した組織の例は完璧とは言えませんが、世界的に有名な公共のイメージやアイコンがBLMをはじめとする人権侵害について発言するためにそのブランド力を利用できる、ということを強調するために例として使用しました。



4.嘆願書への署名活動に参加する。

 * COVID petitions from restaurants (Food & Wine Magazine)

 * COVID petitions from global Disney workers (CNN)

 * Music industry petitions to end exploitation of artists during COVID outbreak (The Action Network)

 * Petition for the UK government to aid music industry (The Independent)

 * Petition in support of workplace equality for mothers in the film industry (Forbes)



5.選挙に参加する。選挙の重要性を呼びかける。

・選挙日を有給の休日にする。ナイキの例アップルの例

・UberやLyftなどのライドシェアサービス、タクシーなどを、選挙会場までの利用に限り割引を行う。

・社内のスタッフに選挙の大切さを教育する場を設ける。

・投票権法と、差別的選挙法の歴史を学び、他者にも広める。

・投票率を上げるために、スタッフの選挙へのモチベーションを上げる方法を学ぶ。

・このセクションに関しては、既にパタゴニアという「先輩」がいる。(注釈:アウトドアブランドのパタゴニアは、2019年7月の参議院選挙に際して全ショップを閉店して、従業員が選挙に行けるようにした取り組みの実績が既にある。


6.知識をつける。自分も、同僚も

・グーグル検索をする。

・専門家を雇い、教育機会を設ける。

・知らないというのは白人の責任。黒人やPOC(person of color = 有色人種)の責任ではない。

・SNSで様々なハッシュタグをフォローする。 #BlackLivesMatter, #BLM, #SupportBlackBusiness, #SupportBlackArt, #ShareBlackStories など。

Black Lives Matterと人種差別問題に関する情報のまとめを読む。人種差別主義、ダイバーシティ、インクルージョンに関するニュースをこまめにチェックする。
(注釈:残念ながらこのリンク先はすべて英語なのですが、リンク先の一つにアメリカの制度的人種差別を説明する日本語字幕付きの非常に分かりやすい動画があったのでぜひ観てください。)

これらはチェックリストではなく、時間をかけて続けていくべきことです。


7.自分の職場はどうか鑑みる

Five Ways to Be Anti-Racist at Your Café (Barista Magazine)(注釈:「反人種差別主義に参加する5つの方法」)

Dear Companies: Your BLM Posts Are Cute But We Want To See Policy Change (Forbes)(フォーブス誌、ジャニス・ガッサム氏の記事)(注釈:直訳で「企業のみなさま:あなたのそのBLMポストはキュートだけど、私たちはあなたがポリシーを変えるところが見たいんです」)内容は:
  * 人種について話す
  * 月ごとにインクルージョンに関するイベントを催す
  * 構造的・制度的な問題について議論する
  * 紹介付き雇用の制限
  * スポンサーシップの機会の提供

Consider making Juneteenth a corporate holiday at your organization (Forbes)(注釈:「ジューンティーンスの企業内祝日とすることの検討」ジューンティーンス、というのはアメリカ合衆国で奴隷身分であった人々の解放を祝う祭日のこと。Wikipediaの記事ですが貼っておきます)


Women of Color Get Less Support at Work. Here’s How Managers Can Change That (Harvard Business Review)(注釈:「有色人種の女性は職場で受けるサポートが少ない傾向にある。いかにしてマネージャーはその状況を変えられるか?」)

An example of a campaign in the beauty industry calling for changes in beauty brands' organizational structures: #PullUporShutUp Campaign (Vox)(注釈:「美容業界における変革を求めるキャンペーンの例」これは美容ブランドに対して、社内の黒人スタッフの割合を公表するよう求めた運動です。その結果76ブランドが回答を公表しました。いいですか卒倒しないで聞いてくださいね、これティーンヴォーグに載った記事です。ティーン向け誌。)


8.黒人が経営・運営するビジネスを知り、広め、サポートする

Support These Black-Owned Coffee Companies [Updating] (Sprudge) (注釈:黒人が経営する企業をまとめた米コーヒーニュースサイトSprudgeのページです。現在も更新中。)


#SharetheMicNow Campaign (インスタグラムのキャンペーン)(注釈:「世間が女性の声を聞くというとき、その対象はいつも白人女性。今こそ黒人女性の声を取り上げ、広めるとき」という目的のもとに始まった行動で、アメリカの制度的人種差別を変えるために黒人女性が白人女性とタッグを組み、白人女性上のインスタグラムアカウントで発言・投稿する(シェア・ザ・マイク)という試み。)


9.黒人のプロフェッショナルに注目する

Black Coffee on Your Feed (Barista Magazine)(注釈:黒人のコーヒープロフェッショナルたちのインスタグラムアカウントの紹介です。記事内で紹介されている The Chocolate Barista の創始者であるMichelle Johnson氏のインタビュー翻訳記事はこちら)


Black Lives Matter | Netflix Official Site (Netflix キャンペーン)(注釈:BLM運動を支援する、黒人差別に関連する映画を集めた特設サイト。)

・企業であればこれを地域密着レベルでコーヒー業界にいる黒人のプロフェッショナルたちにスポットライトを当てる取り組みができればなおよい。



10.世の中の様々な声を聞き、学び続ける

Restaurants Must Use This Moment to Change, Too (Eater)(注釈:「今こそレストラン業界も変わらなければならない」サード・プレイスとして、レストランでは人種関係なく誰もがくつろげる場所であるべき/抗議活動への参加者に食料や飲料を提供したり、フードバンクを立ち上げるなど積極的に活動へ参加するべき/人種に関係なく雇用し、昇進の機会を与え、能力に見合う給与を与えるべき、といった内容。)


・黒人のコーヒープロフェッショナルへのフィードバックシステムの導入。

・チーム内で頻繁な教育システムの導入。

・組織内での学びを奨励する。


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今回の翻訳にあたり、リンク先のウェブサイトは注釈内で言及したもの以外、元記事と同じものを貼っています。

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ここまで読んでくださってありがとうございます。今回の記事は Black Lives Matter 運動に関する記事で、コーヒーとあまり関係ない…?と思っている方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。この note では何度か触れていますが(この記事とか)コーヒーはアフリカからの奴隷を酷使して生産を増やし発展してきた歴史のある業界であり、現在でもそういったシステムが残り続けています。このメッセージもSCAのコーヒーロースターズギルド(世界中のロースターコミュニティをつなげ、ロースタープロフェッショナルの育成やコミュニティの発展を目指すギルド)から発されたものです。コーヒー業界がそのことを胸に刻み、実際に行動に移すことで共に人種差別主義と戦っていこう、というメッセージが伝われば幸いです。

junko