抵抗

「誰にもそれを止められなくなった」とき社会では、何が起きるのか。
という題名を見た時、私は原子力の事だなと思った。
 しかし、それを読んでみると石井正則さんの言葉だった。
俳優である彼は、全国13か所のハンセン病療養所をめぐりその歴史を写真に収めて来た。
 石井氏は、もう誰も住んでいない園の写真を撮っていると、そこに残っている思念を感じ鳥肌が立つという。
 私が初めて当事者の書いた本を読んだのは、44年前22歳になる年だった。
 それまでにもライ病と呼ばれるハンセン病のことは知っていたつもりだったが、北条民雄氏の“いのちの初夜”は、私の胸倉を掴んだ。神様と人間からの虐待を突きぬけ、生きる魂の輝き、その感動と衝撃は今も色褪せずにこの胸にある。
 石井氏が写真を撮りながら思ったのが、「療養所に残る“場の記憶”が、今の日本でもニュースやワイドショーで話題になっている事が更に加速して誰にも止められない状態になって、大きくなって至った出来事だった」ということだった。
 そして、「それは、今私たちが目にしている延長線上に在ることで、今でも十分に起こりうること。だから、その萌芽、最初の芽のうちに止めておけるかどうか」だと彼は言う。
 それを読んで、それはやっぱり原子力の事でもあると私は確信した。
私は、差別、迫害、イジメ、戦争、原発、公害問題に、同じ構造を見る。それはすべて政府、国と関係している。
 一部の権力を持つ者の独断と偏見によって、事実(真実)を明らかにすることなく、そこに公平、公明正大は存在せず事は進められていく。
 この民主主義と言われる世の中で、民はそのことを知らず、いや、知らないと言うことさえ知らずに事は進んで行くのだ。

 今月11月28日、東海第二原発が稼働してから42年になる。
40年で廃炉にするという約束を破って再稼働しようという動きがある。
 一度止めた原発はより危険が増すという。
「誰にもそれを止められなくなった」とき、社会では何が起きるのか。

「最初に抵抗する方が、最後に抵抗するより楽だ」とレオナルド・ダ・ヴィンチは言う。

 だぁけどなぁー、最初に抵抗するったって、分かった時には決まっていて、何かが始まってから発表されたら、どーしたらいいの?
 これで、民主主義って、どーゆーこと?

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