グッドモーニングアメリカが変えた世界【グッドモーニングアメリカ】

2019年10月15日、一組のバンドが活動休止を発表した。

グッドモーニングアメリカというバンドを知っているだろうか。

ストレートなサウンドと歌詞で社会への反発を歌うスタイルが特徴的な彼らだが、彼らの叫びは、どれほど世界を変えることができたのだろうか。

僕がグドモと出会ったのは、中学3年生のとき。
受験勉強をしながら深夜ラジオを聞いていた僕の耳に、こんな歌が聞こえてきた。
「確かに築いた限界 突破していこう 突破していこう」
こんなシンプルな歌詞が、そのときの僕にどれだけ力を与えてくれたことか。
僕を励ましてくれた『突破していこう』が収録されたメジャー1stアルバム『未来へのスパイラル』のCDは、擦り切れるぐらい繰り返し聴いた。
しばらくして、メジャー1stシングル『イチ、ニッ、サンでジャンプ』が発売になり、これももちろん買った。

田舎の中学校で”良い子”を演じていた僕にとって、彼らの音楽は少々刺激が強すぎた。

彼らの曲を貫くテーマがあるとすれば、『現代社会の息苦しさ』のようなものだろう。
承認欲求にまみれ息苦しいだけのSNS、物質的な豊かさだけが先走る平成の時代、争いが絶えない日本と世界…
僕らが生きる現代社会を、これでもかと皮肉ってきた。
その絶望は、社会に疲れ切った自分自身にも向けられる。
夢を追うことも、何かを捨てて身軽になることもできず、ただただ無気力に流されることしかできない自分にふと気付き、それに辟易する。
彼らのルーツは絶望だ。

そして、絶望と同じだけ、彼らは希望を歌う。


「確かに築いた限界 突破していこう 突破していこう」
(突破していこう / グッドモーニングアメリカ)

「一番なりたかった夢
に向かう途中さまだ
参考書を片手に僕ら日々猛勉強
呼んでる声がする方へ
ゴー未来は無限大だろ?
ろくでもない毎日を飛び越えるんだ」
イチ、ニッ、サンでジャンプ
(イチ、ニッ、サンでジャンプ / グッドモーニングアメリカ)

「嗚呼 ファイティングポーズとる 勇ましさが欲しいなぁ
情けない程 間違い恐れてるんだ」
(ファイティングポーズ / グッドモーニングアメリカ)

「風で高く舞い上がれる程 身軽にはもうなれないけど
この足で踏みしめた大地に 僕の足跡はきっと残っている」
(風で高く舞い上がれる程 / グッドモーニングアメリカ)

「嗚呼 取り戻したいんだ
嗚呼 ワンダーフルワールド
嗚呼 もう一度何かで僕のハート踊らせてみたい」
(ワンダーフルワールド / グッドモーングアメリカ)

絶望をエネルギーにして、希望へと昇華させる。これが彼らの世界観だ。
決して「できる」とは言わない。ただひたすらに「したい」と叫ぶ。
でも、それでいいんじゃないだろうか。
飾り気のないシンプルな音、金廣の絞り出すような声で「したい」と歌ってくれると、不思議と自分もやれるんだという力が湧いてくるのを感じる。
不完全な彼らが「したい」と歌うからこそ、できるかどうかに関係なく、挑むこと自体を尊いと思うことができるのだ。
深夜の部屋で、満員電車で、雑踏の中で、自分でも気付かないうちに息が詰まりそうになっているときもあるが、そんなときに飾り気のない音と言葉で、少しだけ力を分けてくれる。
それが彼らの音楽だ。

暴動と風刺が、世界を変えるために必要なファクターであることは、歴史が証明している通りだろう。
では、社会への風刺と反発を歌った彼らは、世界を変えただろうか。
ビートルズやクイーン、日本でいうと尾崎豊、そんな人たちと肩を並べることはないだろう。
そう考えると、彼らは少しも世界を変えていないのかもしれない。

だけど、彼らは間違いなく僕の世界を変えてくれた。
無気力で、ずっと見えない何かに縛られて、生きる意味も感じられない人間に向かうしかなかった自分を救ってくれた。
僕に新しい景色を見せ、息苦しさを跳ね返す力を分けてく

じゃあ、僕がこの息苦しい世の中を変えることが、彼らに対する1番の恩返しじゃないか。
その想い、しかと受け止めた。

彼らは2020年1月のツアーを最後にバンド活動を休止する。
最後に発売したシングルのタイトルは、『フルスルットル』
もし今までのグドモが希望と絶望を同じだけ歌っていたのだとしたら、最後の一曲で希望が勝ることになるだろう。

「さぁ 夜が明けてく 風を受けて きっときっと 光射して」
(フルスロットル / グッドモーニングアメリカ)

実は、大学で都会に出てから、彼らの歌を聴くことは減っていた。
この春から東京で新生活が始まるというタイミングで、活動休止が発表され、彼らのことを思い出し、『フルスロットル』に出会ったのも、何か縁があったのだろうと、勝手ながら感じられる。

大丈夫。あなたたちのおかげで、もう一人でも歩いていける。

最後に眩しいばかりの希望を見せてくれる彼らの勇姿を見届け、彼らが僕にくれた力を、世界を変えるために使っていきたい。

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