「アフリカン・カンフー・ナチス」を見るという文明人にとって最高に無意味な時間を過ごす愉悦

最近意図したわけではないのに映画感想専用のnoteしか書いていないのが気に食わないので、「アフリカン・カンフー・ナチス」を見たよという日記を記します。
この作品は映画であって映画ではないから許されるはず。

そもそもアフリカの話なのか、中国の話なのか、ヨーロッパの話なのか、マジで意味わからないタイトルのこの映画。なんとB級映画大好きな変な人たちからは結構な人気を誇っているクソ映画らしいです。僕は知りませんでしたし、そこまでB級映画を見たことがありません。
なぜなら、人として当然のごとく、時間が大切だからです。

でもなんというか、こういう初めから「クソだぞ」って言われて、実際に見て「うわぁ、本当にクソだあ」っていうのは達成感というか、なんだか心に来るものがあります。ちゃんとオーダー通りのものが来てる感じ。
表紙詐欺だとか、ギャップ萌えだとか、衝撃のどんでん返しだとか、昨今のエンターテイメントは裏切ることがスタンダードになっています。逆に裏切られなかったときになんか物足りなくなるくらい。
なんだそれは。悪い奴は悪いし、善い奴は善い奴なんでいいじゃないかと。街を守るヤクザなんていないし、チャーハン定食頼んだら、チャーハンを出してくれ。

そんな時こそ「アフリカン・カンフー・ナチス」
ちゃんとチャーハンだけが来ます。べちゃべちゃの。

まず、あらすじをひとつまみ。
ヒトラーと東条英機は実は生きていて、ガーナからカラテで世界征服を企みます。ガーナのとある村で、村人を洗脳し闘技大会を開催したヒトラーを、カンフーの影蛇拳を修行するアデーが倒すために孤軍奮闘する、というもの。うーん、しゅごいぃ。

創作物の中で、違和感がある、ということは作品にとって悪いことではないと思っています。むしろ重要な要素ともいえるのではないでしょうか。
フィクションなのに、リアリティを感じられる世界の中で、なんだか言葉にならない違和感を抱いて話が進み、最後の最後でそれが爆発する。その気持ちよさと言ったらたまりません。

でも、安心してください。
「アフリカン・カンフー・ナチス」はそんな粋でウィットに富んだことはしません。
もうすべてが変な状況過ぎて、些細な違和感などどうでもよくなるのです。違和感仕事しろ。
むしろ今見ている現実の方がおかしいのではないか、今まで積み上げてきた常識が井の中の蛙だったのではないか、そんなことさえ思わせます。ずんどこべろんちょ。
あれ、もしかしてこの映画すごい?

さて、気を取り直して冷静に振り返ります。
まず舞台はなぜかガーナで、登場人物はヒトラー役と東条英機役のおじさん以外全員黒人の方々です。
それなのに、字幕はすべて関西弁。そう、関西弁なんやで!!
しかも驚くくらいのエセ。元大阪住み(3年だけ)の俺じゃなかったら見逃しちゃってたね。
これ本場の兄ちゃんだったら切れるんとちゃいますか。

そしてなぜか分からないけど、この村の人たちは当たり前のようにカンフーを習っている。まじで背景説明がないんです。
あと村でカンフーの大会が開かれているみたいです。結構頻繁に。
そうだよな、ガーナだしカンフーの大会くらい開かれるよな!
主人公のアデーは実力はあるっぽいんだけど遅刻とかしちゃう不真面目タイプで、そこには選ばれない。それに不貞腐れちゃったり、なんか青春ですね。
部活シーンでちょっと面白かったのが、攻めてきたヒトラー相手に「あいつら本場中国のカンフーを知らへん」っていうところ。君たちも知らないじゃん。

驚きだったのはカンフーが現実ていうバンドマン的な描かれ方をしているということ。
アデーは彼女に、「いい加減カンフーばかりやってへんで働きや?」という至極まっとうなことを言われますが、「ワイがこれでテッペンをとれば一生遊んで暮らせるんや」と言ったりしています。どういうことなんや。。

そして急に道場(と呼ばれている空き地)がヒトラーに襲撃されて、師匠は撲殺されてアデーは指を2本引きちぎられます。唐突のグロ描写。
段ボールの車に入れられて裏庭に埋葬された師匠(何言っているか自分でもわからないがあまりにも正確な表現)を見たり、彼女がヒトラーに洗脳されるなどを経て、アデーは復讐を誓います。
普通に蒲田にいそうな酔っ払いから酔拳を学んだり、山の中でただ握力が強い人に稽古つけてもらったりしながら強くなって、ついにヒトラー主催の格闘大会(その辺の廃墟ビル)に出ます。

ここからは手に汗握り、涙なしでは語れない名シーンの連続なので是非ネタバレなしで見てほしいです。行司を執り行う東条英機や、普通に目つぶしで人を殺すアデーや、命令通り心臓くり抜いて殺したらちょっと引いちゃうヒトラー(かわいい)が見れます。誇張一切なし!

今ならアマゾンプライムで無料で見れます。個人的にはシャークネードよりは面白く見れました。バカ設定に振り切っていて見やすい。
80分くらいのお手軽です!マリオよりも短いからどんなに飽き性な小さい子でもきっと楽しく見れること間違いなし!

そして最後に思うでしょう。
何だったんだろう、この時間。



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