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「水」の次に枯渇しつつある資源は何か、知っていますか?

21世紀の世界で最も争奪戦が激しくなる資源は「水」で、すでにエジプト、エチオピア、スーダンの間では水を巡る局地的な紛争が起き、死者が出ています。

中国チベットを絶対に手放さないのも、チベット中国、インド、バングラデシュなど巨大な人口を持つ地域を潤す「世界最大の水源」だからです。

人類の水の総使用量の内訳は、国によって若干の差はあるものの、「農業60%、工業30%、生活10%」とされ、人類が文明と生活の維持のために活用できる淡水は、人口増加と環境汚染により、年々減り続けているのはよく知られている通りで、海水の淡水化技術もまだ導入コストが非常に高額なことから、水不足の国々では現実的な選択肢とはなっていません。

しかし、水についで不足している資源は、水のように再生や再利用もできず、巨額のコストを投じれば海水から製造するように「人工の製造物」とすることもできないという点で、水不足より深刻かもしれません。

それはいったい何だと思いますか?




水に次いで世界で二番目に不足しており、人類が毎年500億トンも使用している資源とは「砂」です。

「砂なんて、どこにでもあるし、サハラ砂漠やアラビア半島には、それこそ無限にあるじゃないか」というのは素人の見方で、人類が建設や水処理に用いる砂には、砂漠の砂は使えないのです。

また、海の砂も除塩のコストが高く、海底の地滑りを起こして海岸を侵食し、人類の生活空間を海底に引きずり込むため、必然的に使えるのは「川砂」、「陸砂(おかずな)」だけとなります。

すでに川砂と陸砂を取り尽くしつつある我が国は、中国の揚子江沿岸の川砂を大量に輸入してきましたが、2007年に中国政府が自国需要分の確保と環境保護のために砂の輸出を禁止してからは、わが国の砂需要家はロシア、オーストラリア、ベトナム、マレーシア、インドネシアと調達網を広げましたが、ベトナム、インドネシアも砂の輸出を禁止し、ロシアやオーストラリアは輸送費が高く、現時点ではマレーシアフィリピンが距離的にも採算が採れるギリギリのラインで、砂不足日本の都市計画災害対策上下水道の処理や、ガラス半導体の製造にも影響を与える深刻なリスクとなりつつあります。

が、業界関係者を除いては、砂不足はほぼ誰にも知られていません。
(▼参考 映画「SAND WAR**SAND WARS** Trailer)




私も2年前、川砂の調達に関わったことがあり、マレーシアの採砂場まで訪れ、現地の砂会社と商談した経験があります。

大型の重機が連なる採砂場を眺めながら、現地の砂会社の人たちと語り合い、シンガポールの国土拡張の需要が大きいこと中国の買い方が凄まじいこと、日本は年々貧乏になって、もうすぐ買えなくなりそうだと感じていることなどを聞きました。

また、同時に言われたのは、

「砂を発明できれば、天文学的な儲けになるだろう」

ということでした。

砂は地球上に無尽蔵に存在するように見えますが、一粒一粒を顕微鏡で見るとその組成は地域や地層によって明らかな特徴や傾向があり、微粉末になるまで細かく破砕していくと、実に多種多様な鉱物資源によって構成されており、加工・製造する会社の技術力次第では、その価値を高めることができるコモディティです。

しかし、採砂場ではそんなことはやっていられないので、「原料」としての砂を販売し、洗浄や粒度調整、加工は買い手に任せているのが現状です。

建設の際にコンクリートを練るのに使う川砂のFOB価格(参考:アリババ)は、フィリピン産やマレーシア産だと「10米ドル/トン」で、kg当たり1円前後という計算です。

実際は送料や手数料が加算されるので、買い手の国ではもう少し値上がりしますが、採取された時点で1kgの原価が1円前後でありながら、人工的に製造できず、他資源から加工できず、再利用できず、原料にリサイクルすることもできず、万能の用途を持つ資源である砂と同じ性能を持つ原料を砂以下のコストで作ることは、現在の人類のいかなる技術を以てしても実現不可能です。

何億年という地球の歴史の中で、何百万年もかけた自然の循環から生まれた砂は、地球だから作れた資源であって、人間はただ使うだけであり、砂に関しては地球に関して何の恩返しもできないのが実情です。




したがって、砂不足は必ず発生します。

アメリカでハワイやマイアミの海岸があと数メートルしか残っていないように、海砂の採取が海岸を海中に引きずり込み、人類の生存地域を侵食し、世界中で都市化が進み、現在砂を使って行っていることや、砂の利用で成り立っている製品は、砂の使用中止や削減、または代替資源への交替を迫られることになるでしょう。

そして、もし日本企業が砂の代替資源を作ることができたら、それは世界を救う大発明になるでしょうし、現在「石油由来のプラスチック」の使用の削減や中止が進められているように、砂を用途別に置き換える原料や素材、製品を作ることもまた、材料工学や素材開発に強く、資源不足で苦しんできた日本の出番の一つに成り得ます。




20世紀石油が世界の争奪の対象となりましたが、石油は燃料として地球環境を汚染し、製品としては生分解性がない廃棄物を地球上に蔓延させ、生物にも多大な被害を与えました。

そして、21世紀水と砂が不足し、私たちの生活や仕事は、戦争や自然災害が頻発した20世紀以上に生命の危機により直接的にさらされるようになります。

日本は石油を発明することも産出することもできませんでしたが、石油の利用を減らして環境負荷も低減させる省エネ技術を多数開発し、現在のエコ重視社会の先駆的な製品を世界に提示してきました。

同じように、水や砂を節約し、水と砂の働きを代替し、節約しながらも豊かな生活を守る技術や製品を開発できれば、日本は環境保護の面で世界のリーダー的な存在になれるはずです。

欧米が理念や法律で世界のリーダーシップを取るのが得意なら、日本は技術と製品で環境保護を直接実現させることでリーダーシップを取れないでしょうか。

マレーシアから持ち帰った砂を眺めながら、そんなことを考えてみました。


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