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【コロナ対策】日本の旅行需要(宿泊需要)が、いつどれくらい戻ってくるか、試算してみた。

新型コロナウィルスの影響で、壊滅的なダメージを受けた日本の旅行(ホテル・旅館)産業。インバウンド需要は、文字通り蒸発してしまい、2020年3月の訪日外国人数は前年同月比93%減、4月の訪日外国人数は、前年同月比99.9%減という惨状だ。国内の宿泊需要も緊急事態宣言等の影響で冷え込み、2020年3月の延べ宿泊者数は前年同月比49.6%減、4月の客室売り上げは前年同月比9割減という非常に厳しい状況だ。

私の会社ではインバウンド関連のWEBシステム開発を行なっているし、私の友人でホテル・旅館業を営んでいる者もあり、決して他人事では済ませられない厳しいものがある。ほぼ全ての旅行業関係者、宿泊事業者が資金繰りの見通しを立てなければ先がないという状況で、一番の問題は、日本の旅行需要(宿泊需要)が、いつどれくらい戻ってくるか、にあるはずだろう。そこで、現在把握可能な情報を元に、あくまで私見ではあるが、簡単な国内延べ宿泊者数の予測モデルを作ってみた。よろしければ、ホテル・旅館業を営む方々に今後の資金繰り計画を策定する際の参考情報として活用いただければと思う。

前提の整理

5月14日に39県で緊急事態宣言が解除され、足元の新規感染者数の推移を考えると、5月末をもって東京・大阪を始めとする残りの都道府県も緊急事態宣言が解除される見通しが高そうである。関連事業者への休業要請も段階的に解除されていくはずであり、それに合わせて人の動きも活発になっていくことから、感染拡大の第二波・第三波がくることは前提として捉えておいた方がよさそうである。

とはいえ、COVID-19の段階的な収束に応じて、国内の旅行需要は徐々に戻り始めると考えるのが普通だろう。日本の旅行者は、ウィルスへの感染対策はかなり意識するはずなので、感染対策(3密回避)を徹底しており、かつ、十分なアピールをしているホテル・旅館から、選ばれていくはずである。また、新幹線や飛行機などの移動は一定時間の3密を伴うことから、当面は敬遠され、自動車もしくはローカル電車で移動できる、比較的近場(2−3時間圏内)の旅行先が選ばれるはずである。新幹線や飛行機でないと移動できない旅行先の需要が戻るのは、医療崩壊のリスクが一段と弱まり、心理的な安心感が高まってからになるだろう。

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インバウンド需要は、国内延べ宿泊者数の約20%(上図参照)であるが、その回復の見通しは厳しい。日本の新型コロナウィルスへの感染者数および死亡者数は、欧米諸国と比べて相対的に低いこと、および、日本で3月下旬以降に感染者数が急激に増えたのは欧米諸国からの帰国者が起因となっていると認められていることから、外国からの入国制限は厳しい措置が取られ続ける公算が高いと思われる。ビジネス目的での訪日から入国制限が緩和されると思われるが、入国から2週間の隔離などは当面実施せざるを得ないはずで、PCR検査の処理能力がかなり高くならない限り、入国者全員の陰性判定ができないことから、観光目的での入国制限の緩和はかなりの時間をかけながら行われると思われる。

もちろん、いつかはインバウンド需要も戻るはずではあるが、それは新型コロナウィルスのワクチンが開発・量産され、少なくとも日本でワクチン摂取が広く摂取されるのを待つことになるのではないだろうか。正直なところ、日本人に集団免疫が得られていないような状態で、訪日外国人が以前のように毎月200-300万人やってくるというのは、考えにくい。ワクチンの開発・量産化・広範囲な摂取に到るまでに要する時間について、正確な予測はまだ難しい状況と思われるが、複数の文献等を踏まえると、ワクチンの開発に上手くいって1年〜1年半、量産化から広範囲の摂取まで1年〜2年はかかりそうであり、合わせると2年〜3年半という年単位の時間は覚悟しておいた方がよさそうである。

3つのシナリオ

日本の旅行需要(宿泊需要)が、いつどれくらい戻ってくるか、を予測する上で、一定の変動可能性を考慮しておいたほうがよいので、3つのシナリオを用意することにした。どのシナリオも、2019年1月から12月の国内延べ宿泊者数を基準(100%)とし、2020年6月から2023年2月までの期間で、いつの時点でどれほど需要が戻るかを数値化するものである。(詳細は、こちら

3つのシナリオの概観は次のとおりである。
・ベースシナリオ:星野モデル(※)。国内需要が戻るのに1年半(2021年8月)。インバウンド需要が戻るのは、さらにその1年後(2022年8月)。
・ワーストシナリオ:国内需要が戻るのに2年(2022年2月)。インバウンド需要が戻るのは、さらにその1年後(2023年2月)。
・ベストシナリオ:国内需要が戻るのに1年(2021年2月)。インバウンド需要が戻るのは、さらにその10ヶ月後(2021年12月)。

※コロナショックが起きた2020年3月を起点月(需要減退初月)としている。
※星野モデル:星野リゾートの星野社長が、複数のメディアで発言されている内容を参考に、この先1年半で国内需要が戻ると仮定。インバウンドが戻ってくるのは、ワクチンが普及した後(+1年)と仮定。

月次の需要予測のロジックについては、上記の需要回復ストーリー(シナリオ)を3パターン用意しており、国内需要とインバウンド需要で需要回復のタイミングが異なるので、それぞれのシナリオで2019年比でどれくらい需要回復が期待できるかを設定し、加重平均して日本全体に需要予測値を計算している。(※ごくごく簡単な関数設定でモデリングしており、全ての変数設定に何かしらの根拠があるわけではない)

ちなみに、この需要予測のシナリオは、予測としての正確性が高いことを狙っていたり、約束するものではない。旅行関連の事業者が、自社の今後の事業計画(資金繰り計画)を策定する際の拠り所(参考)となる情報の提供が目的であり、今後の難しい経営の舵取りに役立つことにつながればよいという考えに立っている。

ベースシナリオ

それでは、ベースシナリオの需要予測を数値にすると、次のようになる。

ベースシナリオ:国内需要は、2020年6月の需要は前年同月比40%、100%に戻るのに2021年8月。インバウンド需要が戻り始めるのが2021年1月、100%に戻るのは、さらに2022年8月。

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ベースシナリオの場合、延べ宿泊者数が2019年水準の8割に戻すのが、2021年7月であり、2020年6月から少なくとも1年間は、かなり厳しい稼働率でやりくりをする必要がありそうである。

ワーストシナリオ

・ワーストシナリオ:国内需要は、2020年6月の需要は前年同月比30%、100%に戻るのに2022年2月。インバウンド需要が戻り始めるのが2021年7月、100%に戻るのは、さらに2023年2月。

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ワーストシナリオの場合、延べ宿泊者数が2019年水準の8割に戻すのが、2021年12月であり、2020年6月から少なくとも1年半は、かなり厳しい稼働率でやりくりをする必要がありそうである。特に2020年中は低稼働が続く可能性が高い。

ベストシナリオ

・ベストシナリオ:国内需要は、2020年6月の需要は前年同月比30%、100%に戻るのに2021年2月。インバウンド需要が戻り始めるのが2020年10月、100%に戻るのは、さらに2021年12月。

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ベストシナリオの場合、延べ宿泊者数が2019年水準の8割に戻すのが、2021年1月であり、2020年6月から約半年間は、かなり厳しい稼働率でやりくりをする必要がありそうである。逆に言えば、2020年を乗り越えれば、先が見えてくる。

まとめ

ホテル・旅館業の宿泊需要がどれほど戻ってくるかのシナリオ比較をすると、次のようになる。

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(2020年1月〜12月の予測値)

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ベストシナリオでも、2020年12月の需要回復度は70%強。ワーストシナリオで40%。また2021年においてもベストシナリオにならない限り、低調な需要が続くと想定され、大半の宿泊業者において大掛かりなコストカットを行う必要が高いものと考えられる。とはいえ、全ての企業がコストカットだけで生き残れる訳でもないので、今年の秋口以降には政府による観光業に対する需要の活性化施策の実施を期待したいところである。

※需要予測の計算シートについても公開しておきます。ご自由にご利用ください。
スプレッドシート

この需要予測シナリオをどう使えばいいか?

個々のホテル・旅館における稼働率で考えた場合、仮に当モデルがまずまず正確だったとしても、実際にはかなりの地域差があるはずだし、個別のホテル・旅館の集客力により、相当な開きが出てくるはずである。

なので、自社の収益予想としては使えないが、資金繰りの見通しを立てるための試算には使えるはずだ。
ベースシナリオ、もしくは、ワーストシナリオの指数を用いて、2020年6月以降の自社の売上を予想し(単純に前年同月実績×指数)、それに対するコスト計算を行い、2021年12月(先2年)くらいまでの資金繰り計画を策定する。資金繰り計画ができれば、どれくらいキャッシュが足らなくなるか見えてくるはずなので、資金調達に向けた動きがしやすくなるはずだ。
この先厳しいことは自覚しているが、まだ資金繰り計画を策定しないようであれば、参考情報としてご活用いただければ幸甚である。

※当社では、ホテル・旅館の経営者様からの無料相談を受け付けております。今後の見通しや資金繰り計画の策定方法、経営全般についてのお悩みなどありましたら、こちらからお問い合わせください。

※免責事項:本稿で提示している予測値は、仮定の上に基づくものであり、何かしらの正確性を保証するものではありません。また、筆者は医療やワクチン等に関する専門性を有している訳ではありませんので、誤記や誤解による記述がありましたらご指摘ください。(ご指摘いただけましたら速やかに修正いたします)




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