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『最長片道切符の旅』を旅する day35 乗り鉄が大好きな過酷な一日だった

東津山 0458(因美線)[快速]0614 智頭 0619(因美線)0703 鳥取 0807(山陰本線)1053 米子 1119(伯備線)[特急やくも]1225 新見 1228(芸備線)1348 備後落合 1410(木次線)1508 出雲横田 1607(木次線)1742 宍道 1814(山陰本線)2022  江津   Top写真:備後落合駅 芸備線ホーム

東津山ー鳥取ー伯耆大山ー備中神代ー備後落合ー宍道ー江津

三泊四日の旅、二日目。今日は津山から鳥取米子から伯備線新見
また日本海へ木次線宍道(しんじ)、山陰本線江津(ごうつ)まで。

中国山地を行ったり来たり、三回も横断する。今回は秘境路線が多いので楽しみだ。その分、時刻表が過酷で、津山を早朝4時54分、宿の江津には夜の20時22分という「乗り鉄が大好きな過酷な一日」となった。うはは、たまらんなあ。

朝、4時に起きてシャワー、小雨の中、駅へ急ぐ。始発列車はぽつんと私一人だけだった。

津山 0458-1225 新見 午前中にここまで来る

今回、どうしても今日中に終着の江津へ到着しておかなければならない事情がある。明日の三江線始発に乗る必要があるのと、その前に乗り鉄最難関と言われている路線の一つ備中神代ー備後落合間を乗らねばならぬ。
で、朝4時の津山始発にぽつんと一人で乗っているわけだ。

美作加茂駅 (Mitsuki-2368)
因美線から鳥取経由で山陰本線へ

始発列車は快速である。いやあ、私一人だけなのにすまんなあ。
津山から五つ目の美作加茂(みまさかかも)で18分間停車する。
この駅は因美線で唯一の相対式ホームがあるので行き違い列車でも来るのかと思ったが、何も来ない。謎の18分停車であった。

小雨が続く。雨に濡れた瓦屋根が黒く美しい。瓦そのものに光沢がある。
日本の原点風景だな。

因美線 物見トンネル (Google Maps)

列車は雨の中、徐々に山の中に入り、3kmの物見峠のトンネルで県境を越える。美作(みまさか)から因幡(いなば)の国に来た。(なので因美線なのだ) 国境いのトンネルを抜けると車輌の窓ガラスがさっと曇った。因幡の国は冷えているらしい。

トンネルを出てすぐに那岐(なぎ)の駅がある。那岐駅は鳥取県だが、奈義(なぎ)は岡山県。ややこしい。しかも奈義には「奈義町現代美術館」というのがあり、これは「日本の美術館ベスト100」に入っているので、いつかはまたここに来なくてはならないのだよ。

那岐駅は鳥取県 奈義町現代美術館は岡山県
奈義町現代美術館

沿線には立派な藁葺き屋根の家が一軒だけ残っている。
快速は智頭止まりで、ここから鳥取行き普通列車に乗り換える。

智頭 ようきんさった

東津山から智頭まで快速で来てしまったので「普通列車乗りつぶし」が残ってしまったが、ここは先を急ぐので仕方あるまい。また乗りつぶしに来よう。

因美線から鳥取経由で山陰本線へ

いくつものトンネルを通ると、上空を高速道路(鳥取自動車道)が横切る。45年前にはなかった景色だ。

因美線の河原(かわはら)駅では遠くの山にが見えた。
次の駅、郡家(こおげ)駅では遠くに風力発電の風車が見える。

郡家からは若桜(わかさ)鉄道が出ているのだが、これもまた乗りに来なくてはならないだろう。(2024夏の18切符で再訪、完乗した)(ちなみに石破氏が自民党総裁選出馬を表明した八頭町はこの若桜鉄道沿線にある)

チャップリン喫茶 モーニング

鳥取駅では1時間の待ち合わせがあるのでここで朝食を取る。朝からパン一個しか食べてないのだ。
駅前のチャップリン喫茶で実にトラッドなモーニングをいただいた。

鳥取ー倉吉ー伯耆大山ー備中神代ー備後落合

0807鳥取発の列車は高校生で満員であった。が、二駅目の鳥取大学前でどっと全員が降りて、車内には数人しか残らなかった。

倉吉着1823,駅前を見渡したが旅館もビジネスホテルもない。
特急をはじめ全列車が停車する倉吉だから駅前旅館の一軒ぐらいはあってもいいではないか。

(新潮文庫)
倉吉駅前 (Google Street view)

先生が宿を見付けられなかった倉吉駅前には、現在ビジネスホテルが建っている。

伯耆大山(ほうきだいせん)を通過。過去何回かここを通っているのだが、一度も大山(だいせん)を見たことがない。いつも雲に隠れている。
今回も、厚い雲に隠されてその姿を見ることはできなかった。

米子着、駅蕎麦を食べる。吾左衛門鮓(鯖寿司)が付いてくる。

吾左衛門鮓+そば@米子駅 (現在閉店)  (marky0811)

次に乗るのは伯備線である。伯備線は先ほど通ってきた伯耆大山から分岐するのだが、一つ先の米子まで来た。実はここから特急「やくも14」に乗るのだ。これには深いわけがある。

本日の行程のボトルネックは芸備線であった。
備中神代(びっちゅうこうじろ)から備後落合(びんごおちあい)に抜ける列車は一日にわずか3本。早朝、昼、夜だけなのである。
江津(ごうつ)に今日中に着くには、備中神代を通る備後落合行きのの列車に乗らねばならないのだ。

備中神代ー備後落合 最難関区間

で、この備中神代を通る列車に乗るためには、逆に辿っていくと米子発の「特急やくも14」に乗るしかない。そしてさらに辿っていくと、今朝、津山を早朝4時の始発に乗らねばならなかったのである。

特急やくも  (Mitsuki-2368)

さて、米子発1119の「特急やくも14」に乗る。普段、普通列車にしか乗れないので、特急に乗るとうれしい。さすがに特急は速いなあ。

途中、上石見(かみいわみ)を過ぎたところで「これから分水嶺を通過いたします」という車内アナウンスがあった。分水嶺の谷田峠(たんだだわ)のトンネルを抜けると伯耆(ほうき)の国から備中(びっちゅう)の国に入る(で、伯備線なのだ)。

新見ー備中神代ー備後落合

新見着1225、約1時間で中国山地を越えてきた。
3分の乗り換え時間で芸備線・備後落合行きに乗り込む。
車内はほぼ満席。鉄分多し。

芸備線  (Mitsuki-2368)

乗り鉄でも最難関区間の一つと言われる「備中神代ー備後落合」間であるからよほどの秘境かと思ったら、案外人里が多い。開けた里をのんびりと下っていく。

芸備線がええのよのぉ

乗客の地元民が小奴可(おぬか)ですべて降りてしまってから、終点まで乗っているのは「」5名だけとなった。

芸備線乗り場 (左)上り三次行き(右)下り新見行き
備後落合駅 一日に一度、3両の列車が揃う (左)木次線 (右)芸備線 上り、下り (wiki)

降りてみれば、備後落合駅には3両の車輌が勢揃いしているというちゃんにはたまらない情景が待っていた。落ち合いと言うぐらいだから、昔から交通の要衝ではあったのだろう。

備後落合 芸備線と木次線 (Google Maps)

20分ほどの待ち合わせで木次(きすき)に乗り換える。
黄色いきれいな車輌だ。たちは三次(みよし)行きに乗って行ってしまい、木次線に乗ったのは私一人だけだった。

木次線 キハ120  (アニヲタWiki)

車輌はキハ120。クロスシートで窓が開く。色がかわいい。

出雲坂根駅 スイッチバック (wiki)

出雲坂根駅でスイッチバック、乗客一人なので運転士の横で見学。
運転士さんにホームの外れの「延命水」を教えていただいた。
冷たくて丸くておいしい水だった。

木次線

出雲横田でしばらく停車。駅前でパンと饅頭を買ってくる。ここから高校生がどっと乗り込んできた。

砂の器」で名高い亀嵩(かめだけ)を過ぎる。

noteでたまたま「すなきす(書籍:『砂の器』と木次線)」というサイトを知った。「すなきす」さんは小学生の時、映画『砂の器』撮影現場に遭遇した。NHKを退社後、「すなすき」さんは映画撮影時のことを調べ始め、木次線と映画の接点を探っていった。その結果がこの本「『砂の器』と木次線」である。おもしろかった。「亀嵩」は映画でどう描かれたのか、木次線との関わり、亀嵩の謎、そして地域に今も残る映画撮影の興奮。おすすめする。

出雲八代から長い下久野トンネルを通り抜けると、まただった。
昨日から何回、陰陽の国境分水嶺を越えたのだろう。

木次線 25‰を登ってくる

木次線では本日、三組の人が手を振ってくれた。
一組目は学校帰りの女子中学生二人、二組目は、ふと目を上げたら目が合った縁側にいたご婦人、三組目は車椅子のおばあさんであった。

木次線は20‰(パーミル、1000分の一勾配)、25‰の急勾配、S字カーブが連続し、ディーゼルエンジンはフル回転だ。運転士は若くて気持ちがよい。

木次線 宍道 出雲空港
出雲空港の向こうに日が落ちる 

宍道(しんじ)1742着。30分の待ち時間を利用して宍道湖まで夕焼けを見に行く。

タクシー運転手さんの話
「夕焼けは今時分じゃ7時半頃かねえ。空港の向こうに落ちるんじゃ。
今日は雲が多くてだめじゃろ。
この辺じゃ蜆(しじみ)が年中取れる。味噌汁にして飲む。
蜆の味噌汁とご飯と漬け物と梅干しがありゃ、あとは何もいらん」

出雲市駅では向かいのホームに寝台特急「サンライズ」が停まっていた。
新婚旅行ではこれに乗って東京に帰ったのだった。

宍道ー出雲市ー江津

海岸沿いの田儀(たぎ)駅で、海に沈む夕日を見た。

沖に烏賊釣り漁り火が見えた。

江津(ごうつ)駅2022着。駅前の旅館に素泊まり、3990円。
宿で教えてもらったふく助食堂で、刺身定食、イカソーメンに蜆の味噌汁、ご飯をいただいた。

やれやれ、長い1日であった。

明日は三江線の始発に乗る。 (三江線廃止わずか数年前の旅行)




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