エンジニアになろう!
土木学会事務局です。
大人が読んでも面白い、ためになる児童書を紹介する不定期掲載「土木技術者も読みたい児童書 #土木の本 」シリーズ、今回紹介するのは2020年2月に刊行されました「見たい、知りたい、ためしたい エンジニアになろう!つくってわかるテクノロジーのしくみ」(刊 化学同人・監修 キャロル・ボーダマン・訳 後藤 真理子 原題”How To Be An Engineer")です。
本書、要はこども向けの実験工作の本です。紙やストロー、トイレットペーパーの芯といった身近な材料を使って、はさみやテープで工作して、様々な実験をしてみようという本です。
ただ、この本が良くある工作の本と大きく異なる点、それは「エンジニアリング」を学ぶ本になっているということです。
「物質さまざま」の部分では圧縮・引張(本書では伸張と表記)・曲げを体験することを紹介していたり、「強力な機械」では位置エネルギーや運動エネルギーを紹介していたり。「強い構造」の部分では、土木ではなじみ深いつり橋の工作が紹介されていますが、主塔たてて、パイロットケーブル引いて、メインケーブル張って、ハンガーロープで桁吊って、床版並べて、荷重かけて力の分散を観察するとか。さまざまな工作を紹介しながら、その工作の工学的な部分を紹介しています。
また工作や解説だけでなく、歴史上の偉大なエンジニアも紹介しています。土木技術者(シビルエンジニア)では、イザムバード・キングダム・ブルネル、ロバート・スチーブンソンが紹介されています。
さらには、
道具はとっても役に立つ。けれどもエンジニアに重要なのは、どんな道具をもっているかではなく、どのように考えるかなんだ。(p.9)
と、エンジニアのように考えるための考え方や、そのポイントを紹介していたり。「エンジニアになるためのスキルを身につけよう!」とあるように、エンジニアのように考えて行動するとはどういうことかを学べる本になっています。
子どもに工作の楽しさを紹介する本は本邦でもたくさんありますが、子どもに「エンジニアとは?」を語りかける本はあまり見たことがありません。
そしてまえがきでの著者のキャロル・ボーダマンさんのメッセージ。
現代社会には十分なエンジニアがいるとはいえず、とくに女性エンジニアは不足しています。エンジニアリングを学ぶ人はわずかしかいないのに、多くのエンジニアが求められています。もっとたくさんの人に、「エンジニアとしてはたらきたい!」と思って欲しいのです。そのためには、子どものうちからエンジニアリングに興味をもってもらう必要があります。つまり、想像力の窓を早くから開けておくことが大切なのです!(p.5)
エンジニアリングは学校の科目にはありません。ですから、エンジニアリングがどういうものか、だれもがよく理解できるようにする必要があります。(p.5)
土木の分野では、解りやすさ伝えやすさから、どうしても作っている現場やでき上がった施設に偏ったアピールをしがちです。ボーダマンさんが指摘するように、もっとエンジニアリングの原理や理論、その実装のための技術に興味を持ってもらうようなアプローチが必要と感じました。
易しい言葉で子どもに向けて「エンジニアリング」を伝える本書、大人にとっても新たな、あるいは改めての気づきが得られるのではないでしょうか。書店や図書館で見かけたら、手に取ってみてください。
土木技術者も読みたい児童書
ひきつづき「土木」に関連するこども向けの本を大人向けに紹介していきたいと思いますので、絵本クラスタ・児童書クラスタのかた、絵本・児童書の出版社の中の人のみなさま、土木・建機・防災など弊会の方々が興味をもちそうなオススメの絵本・図鑑・児童書があったら「#土木の本」のタグをつけて、noteやtwitterでご紹介ください!土木学会note Twitter(@JSCE_note)をフォローいただいてDMで直接連絡していただいても結構です。よろしくお願いいたします。
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