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社会と土木の100年ビジョン-第4章 目標とする社会像の実現化方策 4.3 交通

本noteは、土木学会創立100周年にあたって2014(平成26)年11月14日に公表した「社会と土木の100年ビジョン-あらゆる境界をひらき、持続可能な社会の礎を築く-」の本文を転載したものです。記述内容は公表時点の情報に基づくものとなっております。

4.3 交通

4.3.1 目標 注7)

安全・安心な国土・地域・都市、QOL (Quality of Life) が高い快適な暮らし、持続可能な社会を創造する上で、交通の果たす役割は大きく、交通に関わる社会基盤整備や制度設計等といった今後の方策の良し悪しが、これらの実現を左右するといっても過言ではない。100 年先の目指すべき社会像を見据えた50 年先の目標、25 年先の具体的な目標を達成するためには、国土計画、地域計画、まちづくり、環境問題対応等と密に連携し、適切な方策を行っていかなくてはならない。
交通分野の目標は、「安全かつ安心であり、誰もが(老若男女、外国人にも)使いやすい、持続可能な交通体系を構築すること」である。それによって、人流については、より早く、より快適に移動できる社会を実現し、交流人口の増加による地域経済の活性化および国民のQOL の向上を目指す。また、物流については、より早く、より安価に欲しいものを手にすることができる社会を実現し、地域経済の活性化のみならず国際競争力の強化を目指す。さらに、人流物流ともに効率性の追求だけではなく、地球環境をも考慮し、各交通機関の特徴を踏まえた上で、適切な総合交通体系の整備を行う。また、平常時だけでなく災害時にも対応可能な交通体系整備を推し進める。土木界、土木学会、土木技術者は、官民連携および他分野との連携をすることにより、上記に向けた調査、研究、技術開発、技術革新、制度設計等を行う。 

4.3.2 現状の課題

(1) 都市内・地域内交通における課題
道路ネットワークに関しては、未だ機能的階層性を確保した街路空間が実現されず、曖昧かつ過度に混在した街路空間の持つ安全上、効率上の不効率がある。交通事故の大半は自動車が関与し、その多くは都市部の交差点や生活道路で発生しており、事故削減のためこれらの対策が不可欠である。東京等の大都市では未完成の環状道路等のネットワーク整備が終盤に差し掛かっているが、現状ではまだ通過交通が都心部に流入し、渋滞や混雑を引き起こしている。一方、地方部では、すれ違いができない道路、歩道のない道路等、最低限の道路整備すら不十分な地域が多く残っている。
高齢ドライバーの増加による交通事故の増加がある。また、バリアフリー整備が各所で進みつつあるものの、依然として連続性の確保等の視点からは不十分であり、快適な歩行空間は形成されていない。自転車の法律上の取り扱いも曖昧であり、多くの事故が発生しているが、自転車の走行空間整備は進んでいない。
道路を利用するバス交通について、大都市圏ではバス走行環境が整わず、定時性が確保されず路線も複雑でわかりにくい。バス事業者同士あるいは他モードとの非生産的な競合が未だ見られ、郊外部でもサービスレベルが低く採算を確保できず、モータリゼーションや郊外化に対抗できず、地方部では大幅な欠損補助なくして維持ができない状態で地域の衰退に拍車をかけている。利用者減少により、担い手となる事業者の意欲低下や労働者の不足が深刻で負のスパイラルを続けている。
鉄道については、特に東京等の大都市では、旅客の時空間集中による混雑や遅延、多発する人身事故、乗り換えの不便さ等、課題は未だ多い。一方、地方部では対照的に、旅客の減少、維持管理・更新財源の不足、内部補助での維持路線の存続問題、撤退路線の増加等、需要減を起因とした様々な課題がある。また、高齢社会に対応した公共交通サービスが不十分であることも大きな課題となっている。
これら各交通機関を総合的に捉えて計画し、環境・エネルギー面、防災面、生活や経済活動面で整合的な体系を持続的に構築することが必要であるが、我が国では従来からそのような取り組みが脆弱であり、都市計画制度の限界ともあいまって、上記のような都市問題を解決できずに今日に至っていることも大きな課題である。

(2) 都市間交通に関わる課題
バランスある国土の発展・維持のために連絡すべき拠点の再定義とその階層性の確保を行うことは現状の課題であり、そのため拠点間連絡における目標交通サービス性能を明確にする必要もある。都市間の道路交通では、一時的な需要の集中や長距離運転による疲労等の原因により渋滞や事故が多発し、災害時のリダンダンシーが確保されていない区間もある。高速バスは低価格を武器に路線網を拡大しつつあるが、民間運営に任せているため、国土・交通計画と連動しておらず、容易に廃止されるなど持続性は低いことも課題である。都市間鉄道でも地域間のサービス格差の解消やストロー効果への対策が引き続き課題である。
厳しい財政制約の下、今後の維持管理費の増加等を踏まえた道路財源の確保をどのように行うかの制度設計が不十分である。特に、高速道路については、今後の維持管理・更新に対する費用負担を料金制度とセットで明確にすべきである。

(3) 航空交通に関わる課題
国内航空では、人口減少、燃料価格上昇、新幹線ネットワークの拡張等の影響により、特に地方間を結ぶ路線の休廃止が相次ぎ、国内航空ネットワークが縮小している。整備から運営・維持管理にシフトした空港財源制度や使用料体系、空港の管理運営制度の再検討が必要である。また、航空と新幹線の連携が不足しており、都市間交通全体としてのサービスが十分ではない。一方、アジアを中心に今後も大きな成長が予想される国際航空需要への的確な対応が必要であるものの、首都圏の空港容量が不足している。オープンスカイ政策が進められているものの二国間ベースであり、地域航空市場統合を含む多国間航空自由化は実現していない。LCC (Low Cost Carrier) の急成長等による需要増加に対し、パイロットや整備士が不足している。国際貨物需要の首都圏一極集中による混雑と、首都圏複数空港間の役割が明確になっていないという問題がある。

(4) 海上交通に関わる課題
船舶の大型化に伴い、寄港されない港の増加やフィーダー港化等が起こり、国際競争力の低下することや、高コスト・低い利便性に起因して内航船の利用(トラック輸送からのモーダルシフト)が進まないことが課題である。また、国際フェリー、RORO (Roll-On/Roll-Off) 船の利用を阻害する諸要因(シャーシ相互乗り入れ規制等)の改善、港湾競争のグローバル化への対応、クルーズ客船の勧誘等も課題として挙げられる。
安定的な海上輸送を確保するために、船員確保が喫緊の課題となっている。55 歳以上の内航船員は全体の50% 以上を占めており、若手船員の確保が重要な課題となっている。さらに海上輸送産業においては、燃料油価格の高騰等により事業が厳しくなっている。国内旅客船事業においては、高速道路の料金等の煽りも受け、航路の減便や撤退が相次いでいる。

(5) 物流・ロジスティクスに関わる課題
都市間物流を担う大型貨物車両の適切な管理が課題となっている。配送形態の個別化、多様化により、物流における自動車の機関分担率が増大しており、混雑や環境負荷の増大につながっている。路上における荷捌きは通過交通の障害となり、交通渋滞の原因となっている。
構造不況業種化した国際航空貨物事業の新規ビジネスモデル開拓、港湾・道路連携型ネットワーク構築、少子高齢化に伴う過疎地域の物流・生産拠点の再配置、トラック・コンテナ大型化への対応、拠点集約化の効率化とリスク分散のtrade off、BCP (Business Continuity Plan) の早期普及、トラック・内航海運従事者の高齢化問題、日本人船員増加策、過度の多頻度小口化、コールドチェーン高度化普及、物流・住居土地利用混在の回避、過疎地域を支える貨物集配送システム構築等、多くの課題がある。

4.3.3 直ちに取り組む方策 注8)

上述のように、現状の交通の課題は多様であり、それら中には、防災対策、維持管理の問題、人材確保・育成の問題(パイロット、整備士、日本人若手船員等)、環境問題対応等のように共通のものがあったり、総合交通体系の整備、適切な道路空間利用等のように単独の交通モードの問題でなかったり、今後取り組むべき方策を考える上では、別々に扱ってはいけないものが多くある。各項目で挙げられた課題を踏まえ、それらを総合的に捉えた上で、空間的な対象毎に何をすべきという視点で記述する。

(1) 都市圏内の交通システム
都市圏内の総合交通体系と交通ネットワークについて、今後の高齢社会の進展、環境・エネルギー、防災等に十分配慮した再検討が必要である。各都市圏で交通体系の目指すべき方向と、交通ネットワークにおける平常時におけるサービス性能の安定化に加え、平常時および非常時のサービス性能との乖離を評価し、新たな整備方策を計画に反映させる必要がある。その際、沿道土地利用との整合、バリアフリー整備のさらなる充実、歩行者、自転車、バイク、自動車等、道路空間のすべての利用者への配慮、道路ネットワークの特性に応じた道路空間の再配分、分離や共存の方針等を明確化し実行する。
幹線道路については、予算制約や土地利用制約も考慮の上で、道路リンクの整備や拡幅だけでなく、局所的なボトルネック対策、交通規制・交通運用、細街路や沿道施設等との適切なアクセスコントロール等、総合的な道路交通施策を策定し実行する。また、交通流動性の向上は、必ずしも交通安全を阻害しないという理解を関係各位で深め、安全・円滑の両面の向上を図り、併せて「ゾーン30」等の生活道路対策を推進する。
公共交通については、大都市圏の鉄道サービスの着実な改善、鉄道駅構内およびホームの容量拡大を直ちに行う必要があり、端末交通としてのバスとの連携を強め、環境にも優しく誰もが使いやすい交通とすべきである。バス専用レーン設置等も重要な方策の一つである。また、混雑や列車遅延については、利用者にインセンティブ付与するなどし、オフピーク通勤を促進することやホームドアの導入を促進することが重要である。新幹線駅や空港といった都市間アクセス拠点へのアクセスを強化すること、駅サインの統一化をすることも直ちに取り組むべきことである。

(2) 郊外部や地方部の交通システム
人口減少・少子高齢化を踏まえ、適切な選択と集中、地域の特性に応じたコンパクト化を図る。地域計画やまちづくりと連携し、交通サービスを充実していく必要から、それらの持続的な制度化を早期に図る。
道路交通については、安全運転支援システム、さらには将来の自律走行車両の受入れの視点から、必要とされる道路環境条件を明確にし、プローブ車両情報を活用して全体的な交通情報を推定する技術の開発、高齢ドライバーに対するハード面・ソフト面からの安全運転支援を行う。
バス交通については、メリハリのない複雑な路線網を抜本的に見直し、幹線と支線で構成される階層的路線網へ再編すること、幹線での高速走行可能なBRT (Bus Rapid Transit) 化、支線での小型乗合車両導入による利便性と採算性向上の両立、ICT (Information and Communication Technology)による運行管理と移動方法検索・予約システムの充実等が、直ちに取り組むべき方策として挙げられる。
鉄道については、事業者の自助努力、自治体を中心とした再生の検討、地域住民とのパートナーシップ、交通基本計画の策定に伴うサービス水準の数値目標の設定、大規模地震対策等が挙げられる。

(3) 都市間交通システム
都市間交通では、民間の運営を促進しつつ、自動車、バス、鉄道、航空が適切な交通分担率となるように、国や地方が主体となり政策面から調整を進め、各交通モード間の連携が実現されるよう一層取り組む必要がある。各輸送モードを総合した一貫的な政策の実施に努め、例えば、他モードの運賃はそのままで高速料金の引き下げやガソリン税減税のみを行うような施策としないことが重要である。
道路交通については、拠点連絡路線で目標とする交通サービス性能を定め、目標性能を獲得するために必要な施策を実行するとともに、現道を活かしながら部分改良、アクセスコントロール、交通規制・管理等を実施することが挙げられる。
バス交通については、複数都道府県レベルでの高速バス充実計画の検討が必要であり、大学や特定機能病院等主要都市にしかない施設へのアクセスを重点に、鉄道との役割分担を進める。高速道路整備によってバスが鉄道に比べ優位となった地域では、高速バスが都市間輸送、鉄道がフィーダーを担う関係も考慮する必要も生じるだろう。一方、鉄道については、中央新幹線整備、整備新幹線の着実な整備、在来線の高速化や一層の活用、幹線駅サービスの拡充、バスや航空との連携強化等が挙げられる。
航空については、真に必要な国内航空ネットワークを見極め、それらの維持・支援制度を設計すると同時に、地方間の路線等についてもLCC の積極的な活用方策を今後一層進める。空港については、市場化等により運営の効率化を一層図りつつも、ネットワークとして機能する側面、競争から守るべき公共性、地域の努力を促すインセンティブ等も考慮した管理運営制度を設計する。

(4) 国際交通システム
航空に関しては、国際航空需要の将来増に対応可能な首都圏や福岡等大都市圏の空港と空域の容量拡大、国際航空交通の管理システムの改善、地方空港の国際線利用促進、外国航空会社の国内運航、国際航空貨物の利用促進策等が挙げられる。港湾に関しては、船舶の大型化への対応や、国際競争力を強化するための国際コンテナ戦略港湾(京浜港、阪神港)の機能強化、資源エネルギー等の安定的な調達のための国際バルク戦略港湾や、アジア諸国の成長力を取り込むための日本海拠点港湾の拠点化の推進、港湾管理・運営分野(ターミナル運営業等)の海外展開促進(官民一体となった戦略的な国際展開等)、国際標準への対応(シャーシ相互認証等も含む)、クルーズ客船の誘致、アクセス整備や外国人旅客対応等が必要であり、特に起終点港となりそうな港湾では空港・新幹線等との結節も重要になろう。

(5) 物流・ロジスティクス
主な方策としては、物流拠点の立地誘導施策と連動しながら、幹線道路ネットワークを大型貨物車交通にも配慮して改善することや既存の高速道路ネットワークを有効に活用し、地域経済の活性化や渋滞の軽減等を図るため、スマートインターチェンジの整備を推進すること、都市内物流について路線上の道路改善とともに時間帯や使用車両を調整し、通過交通への影響の少ない時間・場所に路上荷捌きを限定する等の適正化を進めることが挙げられる。異業種間の共同配送システム、ICT を用いた都市内共同配送システム、公的支援を伴う過疎地域における物流システム、都市内道路空間再配分時の荷捌き空間整備方針、都市交通マスタープランの制度化と貨物交通の位置づけの明確化等を行う。また、特殊車両通行許可制度については、許可基準や許可手続の抜本的な簡素化を図るとともに、社会資本の適切な維持・管理のため、悪質な違反者に対する厳罰化等の取締りの強化を進める。海上貨物輸送については、物流管理の高度化、ニーズの多様化への対応、情報化への対応をハード・ソフト両面で進め、ニーズの多様化に応じた容量の拡充を港湾直背後の空コンデポやインランドデポの整備等によって行うことも必要である。

(6) 交通調査に関わる施策
モード横断的、省庁横断的にこれまで行われてこなかった各種交通調査、社会調査の統合化を一層促進すると共に、今後の政策に応じた新たな調査の仕様(精度、内容、実施間隔等)を確立させる。また、交通関連ビッグデータに基づく分析情報を交通計画や交通政策の立案に活用するための基本指針を確立し、両者を包括する形で、社会基盤としての交通関連データ(調査)のプラットフォームを確立する。ITS 技術を用いて収集したビッグデータを活用して、交通量を精緻にコントロールし渋滞の発生を抑制する等、きめ細かな対策を講じることにより、高密度で安定的な交通流を実現し、既存ネットワークの使い方を工夫し、最適利用を図る。 

4.3.4 長期的に取り組む方策

100 年先の社会における「交通」の概念は現在とは大きく異なり、特に人の移動に対する考え方が変化している可能性は非常に高い。エネルギー問題、環境問題等が克服されればICT の導入が飛躍的に進むであろうし、その結果、あらゆる交通モードの完全自動化が促進され、交通モードの概念の変化(既存交通モードの衰退と多様な交通モードの出現)、交通空間の変化、移動の目的の変化(派生需要の減少、本源需要の増加)、さらには居住する場所やライフスタイルの変化等が起こることが考えられる。長期的に取り組む方策として、これらの変化と現状からの移行のタイミング等を想定し、他分野との連携による整備や制度設計等を行っていく必要がある。移行段階に重要と考えられる方策を、以下に項目を分けて記述する。

(1) 都市圏内
都市内の道路では、様々な交通モードが登場し、高齢者のモビリティを高める進化したPM(Personal Mobility) 車両、今の自転車のように健康づくり等で活用される車両、自動化した自家用車や公共交通等、現在よりも一層多様な車両が共存することが予想されることから、それらを安全で効率的に管理する道路交通システムを設計し運用する必要がある。
バスについては、都心部ではトランジットモール、放射環状の主要コリドーはBRT 化等による幹線ネットワークを構築し、結節点と主要施設の一体化を図ることで利便性を高める。専用道では無人運転やトロリーバスのような集電方式による環境性能向上、LRT (Light Rail Transit) との共通運用を行う。公共交通移動を前提とした都市計画やライフスタイル形成を進め、ICT による自動運転や運行管理・情報提供システムの確立で需要対応型の安全・安定供給を実現する。ハイブリッド化・電化の推進で環境性能を向上させ、鉄道・バスをシームレスに利用できるような公共交通網を形成し、コンパクトシティの拠点とする。
鉄道については、サービスに価格差を設けて一定の水準を維持し、都市再開発との連携や運賃バリア(乗り継ぎ)の解消、ICT の活用(例:ラッチの廃止等)を進める。
道路空間については、街路空間のリノベーションをまちづくりと一体的に推進する。また、カーシェアリング・ライドシェアリングの普及による自動車利用の効率化や自動車総数の削減、交通信号に代わって路車間・車々間通信により錯綜部の制御を高度化し、高速道路等の交差部の安全性確保と容量向上を実現する。

(2) 郊外部や地方部
郊外部や地方部では、市街地を集約していく必要がある。その集約市街地において、バスを用いた利便性の高い幹線公共交通を構築することにより利便性と採算性を確保し、集約化をサポートする。集約市街地の中は徒歩・自転車やデマンド交通を主体とし、自家用車に頼らない郊外居住を実現する。幹線は都市部のBRT・LRT に直行もしくはシームレス乗り継ぎを可能とする。鉄道とバス等の他の事業者を含む運賃の共通化も重要である。鉄道を始め公共交通おいては「運輸連合」の創設や赤字路線の公有民営化は、長期的に取り組んでいかなくてはならない方策である。自動車については、自立走行車両の走行空間としての地方部道路の機能を実装する。一人1 台の自動車利用に適した小型のPM の普及を見据え、道路インフラ側も車線幅員等を柔軟に運用できる技術を開発する。

(3) 都市間・国際
バスの隊列走行や自動運転といった技術によって安全性・輸送力・環境性能・費用効率性向上を図る。鉄道・バスと合わせてシームレスに利用できるような地域間公共交通網を形成する。鉄道のフリーゲージトレインの導入、モード間の連携(空港への乗り入れ、高速バスとの接続等)、弾力的な運賃の導入(航空、高速バスのような多様な割引運賃)が必要となる。また、非常時の代替経路も含め、ネットワークの維持・管理・更新と、リアルタイム・ダイナミック制御技術の確立と実装、導入も重要である。主要高速道路において自動運転・隊列走行を実現するための必要なインフラを整備する。電気自動車を都市間交通にも活用するため、都市間路線における充電スタンドの整備や非触給電技術の開発が促進する。地上高速交通機関(新幹線等)と航空の接続による国内・国際移動の利便性を向上させる。航空機性能と自動化システムを最大活用した次世代航空交通システムの実現と安全責任に関する制度設計を行う。世界航空市場統合時代における国際航空政策を検討する。無人機や垂直離着陸機(VTOL)、短距離離着陸機(STOL)、超音速旅客機といった未来の航空機、またはバイオ燃料、燃料電池、水素燃料等の次世代代替燃料搭載機に対応した空港施設設計と航空法整備を行う。

(4) 物流・ロジスティクス
物流の今後の変化を大まかに見れば、国内発生集中量の減少、巨大グローバルサプライチェーンの確立、無在庫・超多頻度・高速輸配送システムの登場等が想像される。土木分野は、それを支える安全・安心・高速・無人のインフラ整備をする必要がある。また、都市圏内のロジスティクス(“Last One Mile”) については、都市構造のコンパクト化に対応し、さらには都市圏全体を俯瞰した輸配送システムを確立する。エネルギー、環境、効率性、安全性の多角的観点から、システム頑健性も考慮した物流システムを実装し運用する。共同集配送等の推進により荷物の積載率を向上させ、物流の効率化・車両総数の削減を図る。船舶では、鉄道も含めたインターモーダル輸送ネットワークの整備、航空貨物輸送との連携(サプライチェーン管理の超高度化への対応)、新技術に基づく船舶へのハード的・ソフト的対応、北極海航路のような新たな輸送ルートへの対応が必要となる。


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目次

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脚注

注7) 目標に関して、より具体的な目標を下記に示す。
・交通施設の整備、運営、維持管理のいかなる段階においても事故死者をなくす。
・機械や電気分野とも連携し、交通事故死者・負傷者数を減少させる。
・国土計画を踏まえた都市間交通ネットワーク整備により、交流人口を増加させ、地域経済を活性化に貢献する。

具体例として、今後計画される交通事業による期待される効果について下記に列挙する。
・超電導磁気浮上式の新幹線整備により、都市間移動の速達性を向上させる。
・大規模国際拠点空港や国際コンテナ・バルク戦略港湾の再整備により、交流機会を増加させ、国際競争力を強化する。
・ICT 等を活用した案内等の多言語化を推し進め、国際競争力を強化する。
・公共交通機関に対して、ハード、ソフトの両方でのバリアフリー整備を充実させる。

その他の施策としては、以下のものが挙げられる。
・鉄道の列車内、駅、路線等における混雑および列車遅延を解消する。
・自動車の自動運転化および最適な交通需要管理を実現する。
・地方部における需要確保および適切な補助制度よる持続可能な公共交通を整備する。
・交通インフラ整備に関わる要素技術の高度化により、整備時間の短縮、維持管理の効率化等を実現する。

注8) 各モード・分野の方向性
徒歩・自転車:
安全・安心な空間整備をするために、歩行者、自転車、自動車の利用空間を徹底的に分離する。バリアフリーの高度化、連続性の確保等を行い、高齢者や障害者でも不自由なく移動できる快適な歩行空間を整備する。また、わが国における自転車の交通手段としての立ち位置を明確にし、制度設計とともに共存(譲り合いと自己責任)の概念を確立する。
バス:
鉄道、地下鉄、LRT、BRT を補完し、またそれらと緊密に連携することにより、定時性や快適性に優れた中量乗合輸送機関として市民や外来者に利用され親しまれる交通機関にする。さらに、環境性能が高く乗って楽しい交通機関に進化させる。郊外部にいては、バスサービスにより、都市コンパクト化への移行をソフトランディングさせる交通を確保し、低コストで住民のQOL を確保する。都市間移動に関しては、航空、新幹線、幹線鉄道による高速乗合交通ネットワークを補完し、維持が困難となる鉄道線に代わって高速道路網を活用したバス網を充実させ、特に地方生活圏を支える。自由度が高く小~大量輸送をこなせる輸送機関として社会的な位置づけを向上させ、公共交通の主要プレイヤーとしての地位を回復することにより、国土・地域の活性化を支える。
鉄道:
1) 都市圏内:速達性を向上する。ピーク時間帯の列車内混雑率を150% 以下にする等、慢性的に発生している混雑を解消する。高頻度運行、相互直通運転等、世界に誇る鉄道システムを続けながらも列車遅延を解消し、定時性を確保する。安全性を向上する。鉄道とまちづくりの連携により、都市再生へ更なる寄与をする。
2) 地方部:安全性を確保する。維持管理を充実する。必要なサービス水準を確保する。沿線地域を活性化する。
3) 都市間:超電導磁気浮上式の新幹線整備により、速達性を向上する。都市間鉄道ネットワークを整備し、国土形成へ寄与するとともに、ストロー効果を考慮し、沿線地域を活性化させる。
自動車:
1) 都市圏内:幹線街路網の整備とその円滑な自動車交通流動を確保し、さらに今後開発され市民権を得ることが予想されるPMV (Personal Mobility Vehicle) 等の新たな交通モードや公共交通も含む多様な地上交通モード間での街路空間の有効かつ安全な分離と共用を実現する方策を確立する。生活道路等アクセス・滞留に配慮した街路空間の確保、また運転の一部自動化も
含む路車協調型ITS システムの導入も含め、安全・安心で快適な都市内交通空間を担保する交通運用策を確立する。適正な交通機関分担や経路配分に基づき、真に必要な車両のみが都市内道路上を走行する。事故・渋滞・環境負荷が最小限に抑えられ、快適で円滑な移動が実現する。
2) 地方部:シビルミニマムとしてのモビリティ確保のための完全自律型移動体による交通サービスの実現も考慮した交通体系を確立する。完全自律型走行車と一般自動車の混在環境下における移動体走行空間としての道路の機能・性能要件を確立し、その要件を維持し続ける技術と制度を確立する。プローブ車両情報の活用により、インフラ側センサーが不十分な地域でも交
通情報の収集・解析が可能になる。高齢ドライバー等が安全に移動できるように、自動車および道路インフラからの安全運転支援を行う。個人の移動に適したパーソナルモビリティが普及し、道路インフラもそれに合わせて柔軟に運用される。
3) 都市間:拠点間連絡の必要性と拠点間距離に応じた適切に階層化された都市間連絡交通網を整備し、必要十分な連絡時間を確保する交通サービス水準を実現する様々な交通運用施策を確立する。交通混雑に対して、物流とそれ以外の自動車交通の分離と自動化の実現により、安全かつ効率的な交通サービスを確保する。交通状態のリアルタイム・モニタリングにより、最大限
の安全性を確保した上で常に円滑性を実現するダイナミックな交通運用施策を有効に実現する技術と制度を確立する。全国をカバーする都市間交通ネットワークにより、あらゆる地域を複数の経路で接続する。高速道路において自動運転・隊列走行により長距離移動の安全性・円滑を向上させる。
4) 物流:大型車による幹線都市間物流を担う車両を基本的に隊列型自動走行システムとして技術・制度両面を確立し、安全性を高めるとともに高い効率性を獲得する。都市内物流については、廃棄物等の静脈も含めて安全・効率的かつ環境に最大限配慮したシステムを確立する。
航空:
1) 国内旅客:航空会社間ならびに航空・新幹線間の公正で適切な競争環境を維持することにより、都市間交通を担う高速交通手段として、誰もが使いやすい、定時性が高く、快適で、安全安心なサービスを、航空会社と空港が提供する。また、離島路線および代替交通機関ではサービスが維持できない地方航空路線を、適切な補助制度により維持していく。
2) 国際旅客:島国である我が国の国際移動は航空に頼らざるを得ない。自国・他国の航空会社間の公正で適切な競争環境を維持することにより、国際地域間交流の基盤として、誰もが使いやすい、定時性が高く、快適で、安全安心なサービスを、航空会社と空港が提供する。また、これらのサービスが実現可能な十分な空港容量を首都圏に整備する。
3) 国際貨物:高付加価値貨物のグローバルサプライチェーンの一翼を担う交通手段として、どの企業でも使いやすい、低廉で、定時性が高く、安全安心なサービスを、航空会社と空港が提供する。
4) 共通:災害時の救援救助や緊急輸送のためのインフラとして空港の機能を維持・向上するとともに、自然災害やテロから旅客を守る。航空機事故死者ゼロを実現する。二酸化炭素や大気汚染物質の排出削減、航空機騒音の軽減をさらに進める。
船舶:
世界的な視野で自港の特長を理解し、それに見合う機能を整備する。ハード的にもソフト的にも物流管理の超情報化・高度化とニーズの超多様化に対応する。既存の船舶サイズを超えるスーパー大型船、超高速船、高頻度短距離輸送、石油以外の動力源により航行する船舶、無人航行船のような、これまでほとんど存在しなかった形態の利用にも対応できるようにする。海上輸送の安定的な輸送を実現する。
ロジスティクス:
旅客と同様、ロジスティクスでも、移動の時間・費用削減、および滞留(在庫)時間・費用削減が目標である。しかしながら、目的関数はあくまで個々の企業の利潤最大化であり、インフラ整備はそれを支える手段の一つとなる。特に、企業や品目によって移動と滞留(在庫)の重要度に大きな差異があるので、十把一絡げに目標設定することは避けなければならない。
交通調査:
これまで蓄積されてきた調査データを、利用者にわかりやすく、管理者が適切に管理できるデータベースに再構築するとともに、通常期だけではなく、有事(災害時、緊急時、国防・テロ対策等)にも、適切な情報提供を可能とするシステムを構築する。交通関連ビッグデータを含む形で既存の交通調査の統合化が進展し、さらに、周辺関連領域(土地利用・エネルギー等)のデータプラットフォームとの統合が進展する。その上で、平時においては持続可能性の観点から交通政策を包括的に分析・評価することが可能になると同時に、災害時のような非平常時においてもプロアクティブな交通政策の検討を行うことが可能になるように、調査・分析・評価の諸技術を進展させる。



国内有数の工学系団体である土木学会は、「土木工学の進歩および土木事業の発達ならびに土木技術者の資質向上を図り、もって学術文化の進展と社会の発展に寄与する」ことを目指し、さまざまな活動を展開しています。 http://www.jsce.or.jp/