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土木学会『論説・オピニオン』

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土木学会では、会員だけでなく広く一般社会に、土木に関わる多様な考え・判断を紹介し、議論を重ねる契機とすることを目的に、社会に対する土木技術者の責務として、社会基盤整備のあり方・重…
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#土木技術者

土木技術者の努力を学ぶ

穴見 健吾 論説委員 芝浦工業大学 先日、明石海峡大橋建設に挑んだ技術者たちを映したテレビ放映を視聴した。様々な問題に苦労しながら立ち向かい、新たな技術を作り出して前代未聞の大事業に挑んだ技術者たちの姿が非常に印象に残った。 挑戦の過程では失敗もありながら、それを克服していく様は、我々が学ぶべきところであると思うのと同時に、講義で学生に伝えている知識や技術が、このような技術者・研究者の努力の末に生まれてきているのだと再認識するところであった。 土木技術者の活躍の場は多岐

技術者・研究者の研鑽の場としての土木学会

下村 匠 論説委員 長岡技術科学大学 土木学会よりも規模は小さいが、同じくインフラに関連する分野の学会であるプレストレストコンクリート工学会の会長を現在仰せつかっている。そこでの経験から、最近、社会における学会組織の存在意義を自問している。学会の役割はもとより多角的であるが、ここでは技術者・研究者の研鑽の場として学会の役割について自身の経験をもとに考えてみたい。 今から30年ほど前、土木学会のコンクリート委員会傘下のいくつかの公募型研究委員会に参加したのが、現在に続く私と

学生は主体性がないのではなく、知らないだけだ-学生小委員会設立から1年を振り返って-

水谷昂太郎 依頼論説 学生小委員会委員長 東京都市大学大学院総合理工学研究科博士前期課程1年 企画委員会学生小委員会は、土木学会史上初の委員全員が学生から成る革新的な体制で2022年に発足した。現在12大学、総勢30名の委員が活動している。 この委員会には6つのワーキンググループ(以下:WG)があり、その中に総計15のプロジェクトを推進中である。つまり委員の2人に1人は自分のプロジェクトを持っていることになる。これまでの活動では、複数の地場ゼネコンへの現場見学会開催、香川

良いものを作ろうという気持ち~品質の確保と向上につなげて~

橋本 有美子 論説委員 (株)エイト日本技術開発 品質管理部という部署に異動になって5年、建設コンサルタント業務における品質の確保と向上に向き合う日々である。ひとつのミスが社会に大きな影響を与える可能性があることから、成果品のミスをゼロに近づけることを目指している。成果品のミス防止の主な取り組みとしては、「再発防止策によるシステムの改善」と「品質確保・向上のための研修や啓発活動」である。 当社ではISO9001を運用し、成果品のミスが発生した時には、経緯を確認した上で原因

建設コンサルタント業界における人材育成についての私見

中野信悟 論説委員 パシフィックコンサルタンツ株式会社 私ごとですが、土木業界に身をおき25年を目前にしている。あらためて、土木は、国や地域の未来を多くの関係者とともに創っていくやりがいのある魅力的な業界であると感じている。 昨今、コロナ禍やウクライナ侵攻等を受けて、経済の不透明感が高まっているにも関わらず、私が所属する建設コンサルタント業界は幸いにも業績が好調である。海外インフラ関連プロジェクトの売上は減少したが、国内官公庁需要が好調の主要因となっている。海外についても

技術の伝承・人材の育成~先輩技術者としての責務

伊藤 正秀 論説委員 (一財)土木研究センター理事長 個人的な話で恐縮だが、技術者として歳を重ねるに伴い、業務の成否だけでなく人材の育成という点をより意識するようになってきた。一定の知識習得は研修等で可能だろう。しかし、インフラを取巻く状況は千差万別である。様々な変化や困難に対して柔軟に対処し、適切に対応策を組み立て結論に導く。こういった自立したスキルをどうやって育成していくか。これは実に悩ましい。 次世代の技術者に何を、どう伝えていけばよいのか、同様な悩みを抱える方々の

スーパーシティ実現のために土木技術者のあるべき姿

手塚 広明 論説委員 前田建設工業株式会社 執行役員 経営革新本部副本部長 1.スーパーシティとは「改正国家戦略特区法」、いわゆるスーパーシティ法が2020年5月の通常国会で成立した。 政府は自治体を選定し、2030年頃までに一気に実現を目指している。従来の「スマートシティ」は、エネルギー・交通などの個別分野のIoT等で取得したデータ収集・分析による個別分野の効率化から開始し、その分野を徐々に広げていく。一方、「スーパーシティ」は、一気に分野横断的にデータ収集・分析し、様