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中学生が行う研究活動

大村智先生のイベルメクチン発見に憧れる中学生と小学生の兄妹が「有用な土壌菌を発見したい!」と、メタンをつくりだす有用な微生物群の探索研究を行っています。年末に、その燃焼試験を行い、メタンの生成を確認しました。

動画で紹介 30秒で見る燃焼試験

メタン発酵菌について

 メタン発酵菌は、どこにでもいる普遍的な土壌菌群で、炭水化物やタンパク質などを原料にして、メタンをつくりだします。メタン発酵菌は、元々排水の浄化に利用されていて、日本では昭和40年代から工業的に利用されています。近年、発生するメタンを燃やして発電に利用する方法が提案されたことで、クリーンエネルギーとして注目されるようになりました。たとえば、鹿島建設さんのメタン発酵菌は、霧島酒造さんの排水浄化とメタン発電に利用されています。

有用なメタン発酵菌を探そう

 どこにでもいる菌ですから、もしかしたらまだ見つかっていないスゴイ菌がいるかもしれません。そこで、研究費の支援を受けて、誰でも簡単にメタン発酵菌を探索できる実験教材の開発を行いました。ここで開発した教材を活用して、中学生と小学生の兄妹が有用なメタン発酵菌を地元で見つける研究活動を行っています。

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1 土を採取します。

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2 アルミバッグに土と栄養剤と水を詰めます。

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3 自作の保温装置で培養開始。

2地点、28条件の結果は……

 今回の実験では、これまでの調査で良い結果が出た2地点の計5箇所で土を採取して、メタン発酵菌を育てる条件を検討しました。発生した気体をシリンジで取り出して、燃えればメタンがあること、つまりメタン発酵菌が育つ条件だったことを意味します。

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 28条件を3つずつ試験しています。

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 アルミバッグから気体を取り出して……

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 燃えました!メタン発酵菌が育つ条件です!

 28条件のうち、燃焼したのは4条件でした。研究は簡単にうまくいくわけではありません。しかし、燃焼しない条件と燃焼した条件を比較することで、はじめてメタン発酵菌を上手く育てられる条件が見えてきます。つまり、うまく行かないからこそ、うまくいく方法がわかるのです。これが未知を探究するおもしろさですね。

研究費の支援を受けました

 この研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業の支援を受けています。国による研究支援がなければ、この教材は完成しませんでした。今回は偶々成功しましたが、基礎研究もまた、うまく行かないことのほうが多い分野です。しかし、うまくいかない研究があるからこそ、うまくいく研究がうまれるのです。科学教育系への絶え間ないご支援があると助かります。


いつもより,少しだけ科学について考えて『白衣=科学』のステレオタイプを変えましょう。科学はあなたの身近にありますよ。 本サイトは,愛媛大学教育学部理科教育専攻の大橋淳史が運営者として,科学教育などについての話題を提供します。博士(理学)/准教授/科学教育