読書録119 森功著「鬼才 伝説の編集人 齋藤十一」
生来の活字中毒だから、廉価かつ種類が豊富で持ち運びの楽な文庫本には随分と世話になってきた。
中でも新潮文庫のレトロなデザインと、栞のいらない紐付きの仕様はとても好きだ。
本書の主役である齋藤十一は、雑誌編集の「鬼才」なのだけれど、新潮社の創業から丁寧に描かれているので、文庫への親しみもあって興味深く読めた。
やっぱり、イデオロギーや主義主張に囚われすぎない、白でも黒でもない巨大なグレーの存在は面白いね。
ただ、新潮社は同族経営かつ、創業家の苗字が「佐藤」というポピュラーすぎる苗字の為か、登場人物の判別が難しかったのと、文体に中々馴染めなくて読むのに手間取った。
でも、中盤から終盤にかけての面白さはハンパなくて題材の良さと綿密な取材で解像度を上げた著者のテクニックには感服した。
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