読書録85 牧村康正著 「仮面」に魅せられた男たち
本作は「シン・仮面ライダー」の原典となった「仮面ライダー」を作った男たちと、そのアジトともいうべき「東映生田スタジオ」に付いて芯を食った人選のインタビューによる貴重な証言と、綿密な取材によって書かれていて、とても面白かった。
「東映生田スタジオ」及び「内田有作」所長が主役とも言えるのだろうけど、「東映ネタ」は、春日太一氏の「あかんやつら」や山城新伍氏の著作ならびに吉田豪氏の山城氏含む東映関係者インタビューが充実していて、「生田スタジオ伝説」もエピソード的にはやや弱く感じた。
最初は内田氏と生田スタジオを中心に進む雰囲気だったけれど、取材やインタビューを重ねるうちに主軸がずれて「大野剣友会」とか、「ポピー(バンダイ)」関係の余談に近い部分の方が興味深くて個人的には面白かった。
著者の意図からずれたか、あるいは書きたい事が溢れたのか、ある意味で「とっ散らかった」感じはするのだけれど、それ故に面白い本になったように思う。
読みはじめは、あえて過剰に無法者の集まり的に書いたり(東映京都からしたら多分にマトモだけど)子供番組を「ジャリ番」と表現してみたりと「はみだしもの軍団によるジャイアントキリング」を狙った意図が透けすぎていて多少辟易したのだけれど、途中から肩の力が抜けたのか、本当にスコンと面白くなった。
不思議な面白さの一冊だったな。
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