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国語教師・司書教諭のおすすめ図書  太田愛さんをおススメ!


「漂流教室」と「保健室から」で駄文をお読みいただいているタクです。
実は私、もともと「国語教師・司書教諭のおすすめ図書」というマガジンで
noteに記事を載せ始めたのでした。
調べてみると去年の8月27日以来「おすすめ図書」を書いていない!
これはいかんなあ、ということで、久しぶりにおススメしたいと思います。
 
さて、太田愛さんは脚本家です。
代表作は『相棒』シリーズ。
 
もちろん水谷豊さん主演の、あの『相棒』。
最近では、今年の元旦スペシャルの脚本も担当されました。
 
さて、その元旦スペシャルドラマの中でこんなシーンがありました。
 
駅の売店を運営する会社があります。
鉄道会社の子会社で、役員は親会社からの天下り。
対して、売店のおばちゃんたちは非正規雇用で低賃金。
休憩時間さえ確保されない重労働です。
役員たちは数年務めれば多額の退職金をもらえるのに…
 
さすがに非正規社員たちはこの劣悪な労働環境に耐えられず訴訟を起こします。
おばちゃんたちはプラカードを持ち、デモをおこなうのですが…
 
テレビドラマとして面白くしようとしたんでしょうね。
おばちゃんたちのデモは、
ヒステリックに、そしてだからこそコミカルに描かれていました。
 
放送後、太田愛さんはご自身のブログにこんな記事を載せました。
 
「同一労働をする被雇用者の間に不合理なほどの待遇の格差があってはならないという法律が出来ても、会社に勤めながら声を上げるのは大変に勇気がいることです。また、一日中働いてくたくたな上に裁判となると、さらに大きな時間と労力を割かれます。ですが、自分たちと次の世代の非正規雇用者のために、なんとか、か細いながらも声をあげようとしている人々がおり、それを支えようとしている人々がいます。 (中略)
訴訟を起こした当事者である非正規の店舗のおばさんたちが、あのようにいきり立ったヒステリックな人々として描かれるとは思ってもいませんでした。同時に、今、苦しい立場で闘っておられる方々を傷つけたのではないかと思うと、とても申し訳なく思います。どのような場においても、社会の中で声を上げていく人々に冷笑や揶揄の目が向けられないようにと願います。 」
 
私は、太田愛さんの脚本や小説には、社会的弱者に対するまなざしを感じます。
権力や支配に抑えられ痛めつけられる人々の存在を受け止め、
「ここにこんな問題があるんだよ」と世間に知らしめる。
 
『相棒』以外にもいろいろなドラマの脚本を執筆されていますが、小説がまた素晴らしい。
もちろん描かれるのは社会的弱者と、
彼らを押さえつけときには抹殺すらしようとする権力者や支配者たち。
 
『犯罪者』
『幻夏』
『天上の葦』
(すべて角川書店、文庫があります。)

犯罪者 上 (角川文庫) | 太田 愛 |本 | 通販 | Amazon

探偵の鑓水、その助手の修司、刑事の相馬が隠された悪を暴き出すシリーズです。
どれもなかなかの大作でして、『犯罪者』と『天上の葦』は上下2巻。
でもすぐに読めちゃう。というか先が気になって本が置けない。
読み始めたら、1日2日は仕事を犠牲にすることになります。
 
私が書籍をおススメするとき、極力内容には触れません。
だって、他人様に内容を教えられたら、私なら読む気をなくす。
 
どうかご自分でお読みください。
ただし、3作あるから一週間ぐらいは仕事はそっちのけになりますよ。
 
お読みの際は『犯罪者』→『幻夏』→『天上の葦』の順で読むことをお勧めします。
どれから読んでも面白いんですが、
やはり順番というのは大事です。
 
私は『幻夏』→『犯罪者』の順で読んだので、
登場人物の人間関係を掴むのにちょっと戸惑った。
 
さて、今日も暑い日です。
こんな日はクーラーの効いた部屋で本を読んで過ごすのに限る。
先日、太田愛さんの
『彼は世界にはなればなれに立っている』(角川書店)を読み終えました。
 
これがまた、すごい!


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