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『アルジャーノンに花束を』をオススメ

司書教諭のオススメ
『アルジャーノンに花束を』(ダニエル・キース著、小尾芙佐訳、早川書房、ハヤカワ文庫でも)をオススメします。

1959年、中編小説として発表され、後に1966年、長編に改作。優れたSFやファンタジー小説に与えられる「ネビュラ賞」を受賞。けっこう古いですね。私が読んだのは、平成に入ってすぐかな?オレンジ系の花束模様の表紙が印象的でした。

『アルジャーノンに花束を』の主人公、チャーリー・ゴードンは30才にして知能は6才程度。彼は知能向上のための脳外科手術を受ける。そして・・・。
何度か映画化されていますし、TVドラマ化は二度されています。主演はユースケ・サンタマリアと山下智久。共通点が・・・、どこ?
私は残念ながらどちらも見ていません。テレビ大好きの私にしては珍しい。なにか裏番組でも見ていたのかな?

 『アルジャーノンに花束を』を読んだとき、『二十日鼠と人間』(スタインベック著、新潮文庫)を思い出しました。こちらは1937年の作品。戦前です。スタインベックはアメリカを代表する作家で、ノーベル文学賞受賞者です。ピューリッツァー賞に輝いた『怒りの葡萄』は世界的ベストセラーにして、ロングセラー、1400万冊売れたとか。そのうち一冊は高校時代の私が購入。
 スタインベックは工場や農場で働く労働者でした。彼の作品にはいつも労働者が登場します。いつか安定した職業についてささやかでも落ち着いた暮らしがしたいと望む労働者が。

 『二十日鼠と人間』にはレニー・スモールという大男が主人公として登場します。(スモール?)彼は大きな体に似合わずやさしく穏やかな性格で、幼児程度の知能しか持っていません。もうひとりの主人公ジョージ・ミルトンと農場を渡り歩いています。レニーのペットは二十日鼠。レニーは二十日鼠の庇護者。ジョージはレニーの庇護者。
 何かの世話をする。誰かの面倒を見る。面倒くさいし、振り捨ててしまいたいこともあります。でも、二十日鼠がいなくなったとき、レニーはほっとするのか?レニーがいなくなったとき、ジョージは幸せになれるのか?誰もが誰かの二十日鼠であり、レニーであり、ジョージである。そう考えると、ラストのジョージの気持ちは・・・、もう・・・。(読んでね)

 いまよりも少し幸せになることを願い、そのために決断して努力して、すべてが好転し始めると・・・。『アルジャーノンに花束を』と『二十日鼠と人間』、どちらの作品も、もの言わぬ二十日鼠が物語の結末を暗示しています。さてそれぞれに登場する二匹の二十日鼠と我々人間はどう違うんだ?などということをついつい考えてしまいます。できれば併せてお読みください。

 ダニエル・キースがヒューゴー賞(優れたSF作品に与えられる)を受賞したとき、プレゼンターのアイザック・アシモフ(SF界の巨匠。「ロボット」という語を作ったお方)が「どうしたらこんな作品が書けるの?」と聞いたところ、こう答えたそうです。「わたしがどうやってこの作品を書いたか?あなたにおわかりでしたら、ぜひ教えてください。もう一度やってみたいから」
 よく言われることですが、名作は書くんじゃなくて、降りてくるんですね。


 でもダニエル・キースはその後、『5番目のサリー』(五重人格)や『ビリー・ミリガン』(二十四重人格)シリーズでもヒットを飛ばしています。全世界に多重人格モノブームを巻き起こしました。何度も何度も降りてくる人ですなあ。


 私にも何か降りてこないかなあ。○○の才能とか、××の才能とか。△△の才能でもいいなあ。

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