臨床経験10年の理学療法士が伝える『足部のみかた』
はじめに
このnoteは、以下にひとつでも当てはまる理学療法士の方は、必ず読んでみてください。
✅足部について学びたい方、初学者の方
✅足部が大好きな方
✅足部の評価方法について知りたい方
✅インソールに興味のある方
✅現場で結果を出すための臨床推論を身につけたい方
✅臨床経験10年の理学療法士がどう足部を診ているのか知りたい方
『足note』誕生の経緯(Louis追記)
このnoteは、forPT代表Louisが尊敬する大先輩の理学療法士『足と靴の専門PT@イノムー』さんに直接依頼して、ゲストライターとして特別に執筆いただきました。
『足と靴の専門PT@イノムー』さんとは...
現在、整形外科クリニックに勤務する臨床経験10年の理学療法士です。
『足部が大好き』で数多くの講習会に足を運び自己投資を行い続けています。昨今では、マイスター(マイソール®︎)の資格を取得し、クリニック内でインソールの作成も手がけています。足部と動作分析に関してスペシャリストだとLouisは認知しています。
以下、執筆いただいた『足と靴の専門PT@イノムー』さんからこのnoteを手に取っていただいた皆様へのメッセージです📩
自分が臨床で経験してきたこと、有効な評価方法や臨床推論を伝えていきたいと思います。私的見解が盛り込まれていることをあらかじめご考慮頂けたらと思います。足部へのアプローチで悩んでいる人にとって、この臨床思考が一助になってもらえたら幸いです。
by足と靴の専門PT@イノムー
販売情報(2021.2.27記載)
2021.2.27 一般販売を開始
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通常価格 1,200円
以下、イノムーさん執筆の内容になります。
I部 臨床で捉えるべき足部評価について
序論
Question
この足の状態をみていくつの特徴、問題点を挙げられますか?
足って面白いですよね。
だって、一人一人足の形状は異なるし、その人の生活習慣やどんな歩行をしているかがわかるからです。
実際に臨床の現場では、どの症状であっても、必ず足の状態は把握するようにしています。
なぜか??
足部には様々なヒントが隠されているからです。
足部形状、荷重部位、足趾機能、関節mobility、皮膚状態、等を評価することで、メカニカルストレスがどこに生じやすいかを把握できます。
扁平足に対しての解釈
先ほどの上記↑写真を見て、大体の人が「扁平足」だと感じたと思います。実際に評価してみると、後足部回内位、ショパール関節も回内方向の可動性が高く、距舟関節部のせり出しも強いので扁平足だろうと予測はつきます。
では、この足の持ち主、運動センスあると思いますか?
実は、足めちゃくちゃ速いんです(笑)
足の回転がめちゃくちゃ速いんです。
扁平足の人って運動音痴ってイメージしている人多いと思います。
でも、違うんですね。
明らかな変形や機能障害がある場合はともかく、
見た目ではなく、構造を支えるための機能が備わっているか?が大切ですね。
足部は 柔軟性 − 剛性 のバランスで成り立っています。
柔軟性が高すぎると、耐久性に問題が生じる。(軟部組織へのストレス)
剛性が高すぎると、骨形態の破綻やバランス低下を生じる。
扁平足 = マイナスのイメージ
と考えている方は多いかと思います。
実際に足のトラブルで悩みを抱えている方は扁平足の方が多いと感じます。
確かに、足が疲れやすい、浮腫みやすい、外反母趾になりやすい(臨床でよく見掛ける)印象を受けます。
しかし、その反面、足部の柔軟性が高いため、様々な不整地での適応能力は高いと考えています。
よって、扁平足だから悪い、アーチがあるから良いという解釈ではなく、
動作を遂行した際にどれだけ足部の機能が正しく働くか?
が重要になってきます。
足部が正しく機能するとは?ーアプローチのポイントー
では、足部が正しく機能するとはどのような状態かを紐解いていきます。
足の構造は、
ウィンドラス機構 → 前方への推進力を高める
トラス機構 → 地面からの衝撃吸収と荷重分散
によって骨構造を保持でき、歩行において推進力を得ることができます。
ウィンドラス機構は、足趾MP関節背屈に伴い、足底腱膜の張力が高まり、縦アーチが挙上することで足部の剛性が高まります。
トラス機構は、ミッドスタンスでの距骨下関節(以下、ST関節)、ショパール関節回内位、リスフラン関節背屈位にて足底腱膜の張力が高まり、衝撃吸収の役割を担います。また、荷重に伴いアーチがたわみつつ、骨構造を保持できます。
ちなみにみなさん踵だけで歩いてみてください。
当たり前だと思いますが、ものすごく歩きづらいですよね。
これらの機構があるからこそ人間は長距離移動ができ、二足歩行が可能となっていることが感じられます。
体幹、臀筋、大腿部の筋肉がどんなに発達していても、足部の機能が働かなければ、移動効率を考えると無意味となってしまいます。
それだけ足は重要なんです!!
というところから、私は足に興味を持ち始めました。
足は細かくて勉強する気にならないよ………。という方、
確かに細かい!(笑)
そして、足部構造や筋の走行、靭帯の付着を覚えるだけならまだしも、それぞれの荷重部位に対して骨がどう動いて、どの筋が作用して、足部のトラブルの発生機序はどうで………荷重形態を変えるにはどうアプローチをすればいいかを考えて、試行錯誤して、
なんて色々考えていると頭がパニックになりますよね。
私も最初は思考停止状態に陥りました。
どうしても足部は細かいが故に、評価だけでなく、アプローチ自体も細かくなってしまい、結果的に効果が出ないという経験もしました。
そりゃそうですよね。どれだけの人が自分の足を細分化して、特徴を捉えて日常を過ごしているか?
ほとんどいませんよね。運動している人でもそこまで意識している人は少ない印象を受けます。
アプローチする上で大事なことは、
気づきを与えること。
患者様自身が状態を把握すること、症状改善への道筋を立ててあげること。
例えば、セミナーに参加して、受講生同士でマンツーマンで実技練習することがありますね?
反応が出やすいですよね。
解剖学、生理学、運動学への解釈があるからとも言えますが、
一番はお互いの共通認識ですね。
情報として相手がそれを認識していると、感覚が入りやすくなり、身体表現が容易になるからです。
これを患者様に対して、もっと砕いて分かりやすく伝えるスキルが必要になってきます。
なので、私は足部アプローチする際はできるだけシンプルに、患者様への助言やエクササイズもシンプルに行うよう心がけています。(頭の中は常に身体の現象を捉えるべくフル回転ですが)
共有が得られれば、治療効果も自ずと上がってきますし、何より生活習慣や動作に変化が出てきます。
すごく基本的な解釈だと思いますが、私が足部を勉強してきた中で得られた臨床思考です。
足底腱膜と後足部アライメント
ここで足底腱膜というワードが出てきたので簡単に触れておきましょう。
画像引用
相磯貞和訳:ネッター解剖学アトラス 原著4版,株式会社南江堂,2007.
足底腱膜は二つの繊維束に大別されます。二つとも踵骨隆起に付着し、脛側の扇状の繊維と腓側の小さな繊維に分かれています。
研究によると、足底腱膜が切開されると、足部アーチ保持力の25%を失う。とも言われています。
中足部の剛性に関与します。
また足底腱膜の働きが弱いと踵骨外がえし傾向にトラス機構、ウィンドラス機構に関与します。
これらの機能(機構)を最大限に活かすためには、後足部のアライメントがポイントになってきます。
後足部のアライメントを簡単に確認する方法として Leg-Heel angle があります。(詳細については以下評価方法で述べていきます。)
面白いことに、この評価を行うと、日本人は踵の内側への傾きが強いと扁平足と判断されることがほとんどですが、欧米人は日本人よりさらに踵が内側に倒れる傾向が強いようです。にもかかわらず、内側縦アーチは日本人より高い傾向です。それだけ欧米人は骨構造がしっかりしているということですね。
ここから臨床で足を診る上で私が重要視している部分の話をしていきます。
よく、身体の軸が整ってる。とか、軸がズレてる。というような話をすることがあるかと思います。
身体のあらゆる関節に運動軸があり、その軸を起点に関節が動くようになっています。
足部も同様で、少ない運動幅の中でも軸回転が正常に行われているか?が大切になってきます。
足部の回内外をコントロールする運動軸
ここから足部の回内、回外をコントロールする運動軸について挙げていきます。
ST関節運動軸
踵立方関節−距舟関節の位置関係
足部のアライメントを決める重要な部位として、ST関節と踵立方関節−距舟関節の位置関係が挙げられます。
まず、ST関節の運動軸を挙げます。
画像引用
Donald A.Neumann:筋骨格系キネシオロジー 原著第3版,医歯薬出版株式会社,2018.
このように、足部後方からみると、踵骨外下方向から内上方向の運動軸であることがわかります。
よって、ST関節の基本的な運動パターンを挙げると、
・ ST関節回内 (距骨内旋・底屈・踵骨回内)
距骨が舟状骨より内側にあるため内旋
舟状骨に対して距骨頭が底側にあるため底屈位
・ ST関節回外 (距骨外旋・背屈・踵骨回外)
距骨が舟状骨より外側にあるため外旋
舟状骨に対して距骨頭が背側にあるため背屈位
というような運動パターンになります。
次に、横足根(ショパール)関節の運動軸を挙げます。
上図:横足根関節縦軸 下図:横足根関節斜軸
画像引用
Donald A.Neumann:筋骨格系キネシオロジー 原著第3版,医歯薬出版株式会社,2018.
ショパール関節は縦軸と斜軸があり、
縦軸 − 内がえし、外がえし
斜軸 − 回内(外転・背屈) 回外(内転・底屈)
のパターンとなります。
基本的には距骨下関節が回外位だと剛性が高い、回内位だと剛性が低い状態となります。
なぜ、回内、回外位で剛性に差が出るのか??
これはショパール関節(踵立方関節−距舟関節)の運動軸が関係してきます。
画像引用一部改変
坂口 顕:理学療法士のための足と靴のみかた.株式会社文光堂,2013.
ショパール関節は踵立方関節、距舟関節の2つの運動軸をもちます。
距骨下関節が回外位にある場合は、運動軸が交差するため関節の剛性が高まり、関節の運動量が少なくなります。
距骨下関節が回内位にある場合は、運動軸が平行に近づくため剛性は低くなり、関節の運動量は大きくなります。
足部のロッカーファンクション
次に、歩行に必要不可欠なロッカーファンクションについて述べていきます。
なぜ、歩くためにロッカーファンクションが必要なのか?
足部には3つのロッカー機能が存在し、各々の回転軸が作用することで、しなやかに歩くことを可能としています。
画像引用
嶋田智明,他:膝・足関節障害 全身から評価・治療することの意義と実際.株式会社文光堂,2010.
足部のロッカーファンクション
・ヒールロッカー:初期接地〜荷重応答期にかけての踵を視点とした動き
・アンクルロッカー:荷重応答期〜立脚中期にかけての足関節を支点とした動き
・フォアフットロッカー:立脚中期〜立脚終期にかけてのMP関節を支点とした動き
歩行観察の際、この3つの支点に着目して、どこの動きが足りないのか?もしくは動き過ぎているのか?を確認していきます。
例えば………
足関節背屈が不十分で、すり足様であれば、前方への推進力が働くづらくなる。
(ヒールロッカー機能への影響)
立脚中期での足底接地時、CKCによる足関節背屈制限(脛骨前傾が不十分)があると、踵離地のタイミングが早まる。
(アンクルロッカー機能への影響)
立脚終期にて、MP関節背屈制限があると、蹴り出し時の底屈筋群の働きが誘発できず歩幅を広げることができない。
(フォアフットロッカー機能への影響)
という様になります。
これらの機能を最大限活かすには、ヒールロッカー機能がどれだけ正しく働いているかがキーポイントになってきます。
踵接地の瞬間、立脚側の大殿筋に対して伝達されることで股関節の伸展が開始します。踵骨外側荷重位で上部殿筋、踵骨内側荷重位で下部殿筋が作用すると言われています。
歩行周期において、
踵接地 → 回外位、 立脚中期 → 回内位、 立脚後期 → 回外位
というように軌跡を辿りますが、立脚後期(蹴り出し時)は、回外位へと向かいつつ、MP関節伸展していくと足底腱膜の張力がさらに高まることで前方への推進力が得られます。
踵接地の時点ですでにST関節回内位や踵接地〜蹴り出しにかけて内側荷重優位の歩容、足趾伸筋優位で常に足底腱膜を張らせている場合は、歩行周期において適切に足部機構(ウィンドラス、トラス機構)が働かなくなります。また、足部機能が適切に働かないと歩行時の推進力が得られないため、腱や筋にストレスがかかるため、足底腱膜炎、アキレス腱炎等の足部トラブルを生じます。また、膝関節、股関節、又は脊柱の代償を強いられるため、何かしらの身体トラブルを抱えやすくなります。
ここまでの話をまとめると、
・扁平足に伴う身体トラブルは多いが、柔軟性があり、様々な環境に適応しやすい
・足部の形状で良し悪しを決めるのではなく、動作を遂行した際にどれだけ足部の機能が正しく働くかが重要
・足部の形状を決めるのは、後足部のアライメントがポイントになる
・踵立方関節と距舟関節の位置関係を調べる上で距骨下関節、ショパール関節の運動軸の解釈が必要
・ロッカー機能の働きを的確に判断できるかが大事
ここからは、私が普段臨床で使っている評価方法や評価に対しての解釈、注意すべき点について挙げていきたいと思います。
足部の静的評価方法
足部の静的評価から拾える情報としては、足部の形状や皮膚状態から、どの様な動作の特徴が出るかの仮説を立てる指標となりますので、注意深く観察すると色んな情報を得ることができます。
ここから先は
臨床経験10年「足部が大好き」で整形外科クリニック内でインソールも手がける理学療法士が、その豊富な知識と臨床思考を13,000文字以上の大…
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