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【前編】~「社会の見える展望台」で多文化共生を考える~ 夜間中学見学会 JP-MIRAI youth学生レポーター企画 第9回:葛飾区立双葉中学校夜間学級

 
 「学生レポーターによるインタビュー」企画第9回では、東京都葛飾区にある双葉中学校夜間学級を見学し、森橋利和副校長にお話を伺いました。

○夜間中学とは
 夜間中学は、戦後の混乱期で昼に中学校に通えなかった子どもたちが夜に学ぶために作られた、公立中学校の夜間学級です。現在は、義務教育未修了のお年寄りや不登校経験のある生徒の学び直しの場となっています。一方で、文部科学省(2020)によると、外国につながる生徒が夜間中学生徒全体の8割を占めており、その数は増加傾向にあります。このような背景により、国は、各都道府県に1校以上の夜間中学の設置を促しています。

 夜間中学は、社会に現れる現象を映し出すことから、しばしば「社会の見える展望台」と呼ばれます。Youthとして、同世代の外国につながる若者が学び直す夜間中学の今を見つめ、今後の日本の多文化共生を考えます。


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JP-MIRAI youthとは
JP-MIRAI youthは、責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム( https://jp-mirai.org/jp/)のユース組織です。2021年8月から始動し、外国人労働者に関する活動・研究をしている、または関心を持つ方のための学びや交流の場を提供しています。

「学生レポーターによるインタビュー企画」とは
学生が、外国人労働者受け入れ支援に取り組んでいる企業・監理団体・送出機関に取材をし、さらに外国人労働者の方々にインタビューをすることで、多文化共生や在留外国人に関する知識と理解を深めることを目指す企画です。学生が外国人労働者支援の現場を実際に訪問し、そこで得た学びや気づきを同世代に発信していきます。

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双葉中学校夜間学級・基本情報

 現在、双葉中学校夜間学級には、45人の生徒がいます。そのうち、外国につながる生徒は33人。中国、フィリピン、ネパール、インドなど、様々な海外ルーツを持つ生徒たちが学びます。森橋先生によると、ここ5~6年の東京都の傾向としては、ネパール人の生徒の増加が特に目立つそうです。

 外国にルーツを持つ若者の入学の背景には、親の仕事の都合で来日し、子どもが昼間の公立学校に入学したものの、日本語能力が十分でないために、授業についていけず、夜間中学に移るという例があると聞いています。


日本国籍の他には、中国・ネパールが目立つ

 葛飾区以外の区から通う人も多く、千葉県や埼玉県から通う生徒もいます。働きながら学ぶ人も少なくありません。

10代、20代の生徒が多い。

授業見学

 9月下旬。校舎が橙色に染まる午後5時25分から、双葉中学校夜間学級の1日が始まります。

 最初に見学したのは、入門期の日本語を学習するクラス。
 プロジェクターにイラストが映し出されると、生徒たちはめいめいに、そのイラストが日本語の単語で何と言うのか、当てていきます。

生徒「おうせう?」
先生「お・ん・せ・ん。おんせん(温泉)。4letters。4文字」
生徒「おう……せん?」
先生「『う』じゃない。『ん』、『ん』。おんせん」

 時折英語も交えながら、何度も発音を確認します。
 双葉中学校夜間学級には、語学が堪能な先生も多く、区に登録された中国語とネパール語の通訳さんが派遣され、生徒たちのフォローを行っているそうです。


 次に向かったのは、国語・数学・理科などの9科目を学ぶ通常学級。女の子5人のにぎやかな雰囲気のクラスです。

「ほら、見学の人が来ているから、日本語であいさつ。こんにちは!」

 休み時間、ネパール人の女の子たちは屈託のない笑顔を向けてくれました。

 授業中はすべて日本語。
 10月上旬に東京都夜間学級連合体育大会が行われるそうで、そのお知らせ文を一緒に音読していました。お知らせ文には、全てルビがふられており、難しい漢字があれば、先生が黒板に書いて丁寧に確認を行っていました。

 どのクラスも、先生1人に対して生徒が2~7人程度と、一般的な中学校よりもずっと少人数。先生と生徒の皆さんの距離が近いのが印象的でした。一度母国に帰国したものの、再来日後、「日本で生活するなら日本語は大切」と考え、双葉中学校に戻って学び直しをする生徒さんもいるそうです。生徒の皆さんの楽しそうな様子から、先生方の日々の授業や関係性づくりの工夫が伺えます。

 また、外国につながる生徒以外にも、4月に入学された高齢者の方にもお会いすることが出来ました。家族に勧められて入学し、ひらがなの練習から始めて、現在はカタカナを習得中だそうです。「学ぶことが楽しく、学ぶことが幸せ。入学出来てよかった」。学び直しは簡単なことではないけれど、一つ一つ頑張っていくと語ってくださいました。夜間中学が、「誰一人取り残さない」学びの場になっていることを実感しました。

後編(森橋副校長先生・外国につながる生徒さんへのインタビュー)に続く


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