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#6「新しいモノを創る」には、ゼロから悩むより『掛け算』が速い

SFは「無い」ものを想像する

星新一さんは、生涯で1001の話を作ったSFショートショートの元祖です
SFショートショートというのは、3分程度で読める短いSF小説です
うろ覚えですが、例えば、こんな話がありました

ある星に宇宙船が帰還します。星の全住民が固唾を飲んで、パイロットが地球から持ち帰ったモノをひとつひとつ報告する言葉を、一言も漏らすまいと聞いています
パイロットが四角くて棒を差してある金属を手で掲げて言いました
「これは南京錠と言うものだ。これを使ってドアをロックすると、鍵を持っている者しか中に入れなくなる」

見るのも聞くのも初めてのはずですが、まったく反応がありません
静寂の中、ひとりの住民が質問します
「それが何かの役に立つのですか?」
パイロットが答えます
「人の家にあるモノを持ち出して、自分のモノにすれば、働かなくとも、欲しいものが簡単に手に入る」
「南京錠は、人が勝手に自分の家の中に入らないようにするために使うそうだ」

しばしの静寂の後、全住民に大きなどよめきが広がりました
「そんな簡単なことに、なぜ今まで私は気づかなかったのだろう」
「人のモノを自分のモノにすれば楽に手に入る」
「素晴らしい気付きだ。他にはないか。もっと教えてくれ」

ユニークなSFを次々と生み出す発想法とは

星新一が、自分の発想法について書いていました(これもうろ覚えなので、言葉は正確ではありませんが)

まず、古くて因習的なものを書き並べる
次に、最新で科学的なものを書き並べる
そして、掛け合わせを試して、アイデアを選ぶ
例えば、古いものは「狐憑き」、新しいものは「宇宙旅行」、
「宇宙船のパイロットが狐憑きだったら何が起こるか」
そこから話を創り始める

このアイデアは実際に話となり、彼の作品の中にありますが、
使われている手法は『掛け算』です

この『掛け算』はビジネスに通じるか

答えは「イエス」です
実は、この発想法、ビジネス書でも様々な方が書いています
「アイデアのつくりかた」ジェームス・W・ヤング
「イノベーティブ・シンキング」コンラッド・ヘロウド
などです

書籍にするには厚みが必要なため、それらしい説明を書いて頁数を稼いでいますが、それでも薄い本です
なぜなら、「世の中にあるあらゆるものの組み合わせや掛け合わせに熱中する。そして、出てきたアイデアのタネを試して改良する」ことが、伝えたいことの本質だからです

そこで、次回は、ビジネスで『掛け算』を使ってイノベーションを起こす方法を見て行きます

ところで、冒頭の南京錠のお話は何と何の掛け算だと思いますか?
次回を読む前に考えておいて下さい

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