おすすめの本~若手指導医1年目の教科書~
本日ご紹介する書籍は「若手指導医1年目の教科書」です。
筆者も執筆に関わったため「COIあり」ですが、完成した書籍を拝読し、総勢21名の執筆陣が「魅力的な若手指導医になるための実践的な内容」を紹介している非常によい書籍だと感じたので、是非みなさんにお伝えしたく紹介いたします。本書の特徴は3つです。
①色々な学年の"若手"にフィットする
本書は4つのパートに分かれています。Part 1の「ベーススキル編」は、リーダーシップの基本やマルチタスクの乗り切り方など、後輩を指導する機会を得たばかりの専攻医にも役立ちます。Part 2の「臨床におけるリーダーシップ・教育力」は、後輩のモチベーションの引き出しかた、ロールモデルとしてのあり方など、診療チームのリーダーを任される卒後6〜10年目クラスの医師に役立つ内容と感じました。Part 4の「アドバンス編」は、組織全体のブランディングや、チームビルディング、組織力を高め病院総合診療医の指導体制を構築する方法など、卒後10年目以上の医師にも役立つ内容になっています。
もちろんその学年のドクターが該当する箇所を読むのも勉強になりますが、本書を読み進めることで、今自分がいる立場よりも少し上の目線から物事を捉えることができるようになり、指導医としての成長が促される内容でした。
②ビジネス理論の日常への応用
リーダーシップ、マネジメント、チームビルディング、デザインシンキング、ブランディング、イノベーションなど、ビジネス業界で用いられている理論を、わざわざビジネススクールに行かなくても学ぶことができます。
特に秀逸な点は、各チャプターで“ドクターが主人公の”具体的なケースがついている点です。私もMBAホルダーですが、ビジネススクールのクラスで扱われるケースは"一般企業"を扱うことがほとんどで、日常臨床に落とし込むには"医療現場への翻訳作業"が必要でした。本書はその仕事を各チャプター筆者がすでに行ってくれているので、とても効率的に、すぐに活かせる内容として学ぶことができます。
③研究に関するパートがある
Part3で研究との向き合い方が紹介されているのも本書の大きな特徴です。学年が上がってくると、多くの興味深いケースを経験したり、各々の興味のある分野が見つかったりするのですが、それを「研究」に昇華するにはハードルがあります。本書はケースレポートに始まり、研究のタネの見つけ方、臨床研究のステップ、モチベーションの保ち方、ネットワークの作り方など徐々にスケールの大きな話へと広がっていきます。
筆者も研究に従事するようになりこのパートが身に染みます。まさに今、なかなか研究が進まず苦しんでいますが、「成長過程は"坂道"ではなく"階段である(p145)」「何かを達成した瞬間に、森を抜け、崖を登り切って下界を見下ろしたときのように、急に視界が広がり、自らの成長を振り返りら新しい視点で物事を見ることができるようになります。反対に、達成するまでの間は森の中をさまよっているような感覚に囚われ、登り切って見下ろすまでは階段は断崖絶壁のように感じられるでしょう(p145)」という言葉を信じてなんとか歩みを進めています。研究の全体像を掴むにも、研究のモチベーションを保つにも適した書籍だと感じています。
このように、"若手" 医師が悩みがちな内容にオールラウンドに答えてくれる本書は、自分の「数歩先をいく先輩」が稽古をつけてくれるような内容です。ぜひお手に取ってみてください。
文責:天野 雅之(南奈良総合医療センター 総合診療科)
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