☆大学の学科の偏差値は卒後のパフォーマンスを表していない。
コスパの良い大学、コスパの悪い大学、こんなワードを見ることが多い。
コストには学費も含まれるのだろうが、主に、偏差値が低い(入学難易度が低い)割には就職状況が良かったり、高収入な職業に高い再現性で就けたりする、といった意味合いで「コスパが良い」と定義されているだろう。
俺は理系のことしか分からないため、この記事では主に理系の大学受験の話に限る。よく知りもしない文系のこと語っても間違ったこと書いちゃって、読者からの信用を失いかねないからな。
noteではやたらと東大vs医学部のテーマが話題に上がる。ここでの投稿者は東大側が多めだが、毎回結論は、「大人の目線で見ると医学部に入った方がリターンは大きい。だが、高校生の目線だと、視野が狭く、医学部が選択肢に入らない。勿体無いことだ」というまとめになる。
要するに、偏差値とパフォーマンス(卒後の予後)が逆転しているよ。東大はコスパが悪く、医学部はコスパが良いよと言っている訳だ。
同様に考えるなら、歯学部の難易度は現在の水準よりも上がって良いはずだ。つまり、歯学部はコスパが良い状況にある。(これは「歯医者はコンビニより多い」というキャッチーなフレーズが歯学部のブランドイメージを不当に下げ、高校生に対する情報の非対称性を生んでいるという訳だ)
なぜこんな事が起きているのかというと、高校生に対する「情報の非対称性」に他ならない。
要は、進路選択をする年齢である16〜18才では社会について理解出来ている、もしくは興味があるとは言い難く、それに加えて高校側も、この大学のこの学科を出た後の職業やその職業の労働環境や収入などを具体的に教えていない(教師も教えられない)という要因が、それを形成している。
一般的な理系学科として、最もコスパが悪いのは生命科学系だろう。
日本の生物系の産業は極めて弱く、大きな会社のようなものは他の産業と比べると少ない。それにより、他の学科と比べて、その学科の卒業生を全員働かせられるほどの需要が産業界そのものに無い。
そのため、バイオ系の就職状況というのは、専門を活かしたい場合極めて悪くなる。(他の学科と比べて明らかに専門から外れた就活をするものが多い)
だがこれは高校の進路指導ではあまり説明されない。インターネットでバイオ系の就職について少しでも調べれば、その惨状(キーワードはピペット奴隷で検索)はすぐに分かるが、現実世界で周りの大人たちにそれを教わることはない。
逆に、難易度に比べて就職状況が良いのは機械工学科、電気電子工学科だろう。
日本は伝統的に製造業が強く、会社の裾野が広く数も多く、その結果産業界からの需要が大きい。そのため、該当学科を出た人間全てを働かせてもまだその専門性を持つ人材は不足している。そんな状況である。(ちょっと大袈裟に書いてるかも)
そのため、大学レベルの上から下まで、幅広い帯で仕事がある状態だ。(その仕事が楽でキラキラしているかはまた別)
それにより、前述のバイオ系と違い、大学で学んだことが就職で活かせず、無念にも専門の道を捨てる、といったことにはならない。(工学部の各学科に来る、企業からの推薦数を比較すれば明らかだ)
だがこれも、高校の進路指導では直接は言われない。せいぜい、「就職考えるなら理学部より工学部の方が良いよー」みたいなふわっとした適当なアドバイスを進路指導のオッサンが放つだけだ。
実際に同じ会社(ここでは素材系メーカーを想定)に入社する層を見ても、化学系は旧帝ばっかりなのに、電気系は地方国立大や四工大など、その辺がボリューム層だったりする。
もちろん、職種によって入社の難易度は変わるが、大きな会社に正社員として入るという目標の場合、旧帝大の生物科よりも地方国立大の電気科の方が再現性が高い。
だが、これもまた、この記事のタイトルにあるように、難易度とパフォーマンスの関係に反している。
「就職を有利にする」「効果的に職や仕事に繋がることを学ぶ」という目的の場合、医療系国家資格が取れる学科や、機械工、電気電子工、情報工といった企業や産業界からの需要が強い学科を選ぶ、というのが自然だ。そして、これらの学科はそのプレミア性から偏差値が上昇するのも自然だろう。
しかし、実際はそうなっていない。
生物系学科の惨状がネットで流布されてもなお、その偏差値が極端に落ちることは起きていない。
これらは受験生が知らないだけ、つまり、情報の非対称性が理由なのだろうか。
それとも、俺のこの価値観が異常なだけで俺以外の受験生たちはこんなことを考えずに学科を選んでいるのだろうか。
工学部に通っていた時から、ずっと疑問だったことだ。
偏差値と卒後の収入って、関係なくね?
追記
文系について書かないと宣言したが、一応予想として少し書かせてもらう。
俺の予想だが、文系は世間的には「文学部は就職が悪い」などと言われるが、おそらく学科間による就職格差は実際は無いのだろう。(文学部を選ぶ指向の学生が、就職活動及び社会的活動に不向きというだけで)
その学科での勉強や知識が、将来就く仕事に活きる訳ではないからという理由で、あまり学科名は重視されない。それよりも大学名の方が重要なのだろう。(まあ理系でもそうだけど。理系よりそれが顕著ってことで)
そのため、どの学科を選んでも別に就職自体に有利になったり不利になったりということはあまりなく、それよりも個人の面接力の方がよっぽど左右する(まあこれも理系もだけど)ということなのだろう。
更に追記
医師免許はどこの医学部で取っても変わらない。旧帝医だから年収2000万、地方医だから年収1000万、そんな違いは起こり得ない。
だから、コスパを考えるならなるべく簡単な大学で取るのが労力的にコスパが良いのだろう。
しかし、大学受験界を見ると、国立医の中で大きな難易度のレンジがある。要は、辺境にある国医は簡単だし、都市部にある国医は難しい。その難易度差は想像するよりも遥かに大きい。
俺は、同じ仕事に就くのになんでこんなに差があるの?(受験で頑張り過ぎても意味なくね?結局、収入もなれる仕事も一緒だよ?)と思うのだが、それは恐らく「都市部で過ごしたい」という受験生の欲求がその差を形成しているのだろう。
年収も取れる資格も同じなのに、わざわざ都市部に住みたいという理由だけで上位の医学部受験生たちはあんなに頑張れるのか‥‥。
まあ僻みみたいになってしまったが、個人的には、上位国医はその点でコスパが悪く感じられるので、この記事に追加で書いておく。あれ?ここも難易度とパフォーマンスが成り立ってなくね?と。
(俺は医者として出世したいみたいな気持ちがないから、「学閥」の強い医学部に価値を見出していないってだけなのかもしれん。これが結論かも。つーか、遅れて入ってる時点でそもそも「出世」は出来ないのだが)
またまた追記
本記事で機電系は就職に強い・コスパが良い(他学科に対してアドバンテージがある)と書いたが、これは主に「中堅大学」において顕著である。機電系の場合、千葉大院卒や名古屋工業大院卒くらいで学歴面はカンストしてしまい、それ以上上げても就活において効果が薄くなってしまう、と言われている。(更に学歴を上げて旧帝行くより、面接力上げる方が効用があるという意味)
そのため、高学歴(東大、京大、東工大、大阪大、早慶理工)の機電系は逆にコスパが悪いという見方も出来る。
「学歴に比べて、大手メーカーの正社員になりやすい」というメリットはパッとしない地方国立大や四工大においてのみ発揮される効果なのである。