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グシャグシャの心でも

元旦の午後、姪に会いに出かけた。二ヶ月前にお母さんになったばかりの24歳。

大学を卒業し、大手と呼ばれる企業に就職し、多くの研修をこなしてやっと本店勤務になったと聞いたのがついこの前だったような気がする。お店に買いに来てね、とLINEが届いて何度か会いに行ったこともあった。彼女のポイントになるならといらないものまで買ってしまった記憶がある。私をお姉ちゃんと呼ぶ、よくできた姪っ子。堂々と接客している彼女が誇らしかった。

24歳といえば私が転職した歳だ。最初に勤めたデザイン事務所を辞めて、お客様センターで電話対応をしていた私がもう一度広告デザインの道に戻る決心をした歳。当時一緒にいた彼に背中を押され「わかった。やってみる!」なんて泣きながら新しい一歩を踏み出した歳。

結局私はその後11年ほどその会社に留まり、今でも当時の仲間と仕事をさせてもらっている。デザインがあまり得意ではなかったから最初は大変だった。同期が認められていく中、私はなぜか社長の株価をチェックしていた。ご飯に連れて行ってもらえるのはありがたかったけど、私もみんなみたいに仕事がしたかった。

できることを探しているうちに、依頼を噛み砕く役が回ってきた。こんな感じの絵や文字がいいんじゃない?と腕のいいデザイナーに繋ぐ人というポジションがもらえた。時々私の書いた言葉が世に出る。継続ってすごいんだ。あの時、踏み出せてよかったなぁとしみじみ思う。

ーーー

「ずっと抱っこしてるのは大変だけど、離したくないっていうのもあるの。」
新米ママはスマホから目を上げてニコッと笑った。年末から4日続けて飲みっぱなしだという友達からの連絡に、羨ましいとひと言だけ呟いた彼女の言葉も本当だと思うけれど、眉毛は絶対パパなんだよね、ほら足の指が長いのも、なんてはしゃぐ彼女もやはり本物だ。こういうのが幸せなんだろうなと思った。

そしてまた思い知る。今、思い浮かべてしまうあの人もこの幸せが欲しいのだ。

さすがに耐えられなくなってトイレに行くふりをしてその場を離れた。きついなぁ。誰にも聞こえないところで口に出してみたら、ほんのちょっとだけど他人事のような気がした。言葉にして放つって案外効果があるのかもしれない。あっ、ほら、バカヤローって山に向かって叫ぶとスッキリするって言ってる人いるよね。もしかしたら私だって。

なんて。
あの人への想いはもっと静かで、もっと大事にとっておきたいものだってわかってるくせに。それでも、このままではいけないから、今、このタイミングで私は姪の子を抱き、心をグシャグシャにしているんだった。意味がある、意味がある、辛くても大丈夫、むしろ今は辛くて大丈夫。呪文のように唱え続ける。

姪の幸せに自分のセンチメンタルを持ち込むことが情けない。深呼吸をして部屋に戻り、もう一度、小さな命を抱かせてもらった。あったかくてとても重い。姪が写真を撮って送ってくれた。

ありがとう。お守りにするね。今の私を忘れずに前に進めるように。


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数年前に知ったnote。
書いてみたいと思いながら、語彙力に不安があり踏み出せずにいました。
令和元年の年末、心揺さぶられる出来事が起きて自分が保てなくなり、そこから抜け出したくて思い切って投稿してみました。スキが1つついて、フォローしていただけて…暗闇の先に光が見えたようで、本当に嬉しかったです。読んでいただいたみなさんに心から感謝します。

ここから自分の心がどう変わっていくのかわかりません。今はまだ自分を守るために書くnote です。でも、今年はたくさんの方の文章を読ませていただき、その中から何色もの光を見つけられたら素敵だなと思います。

#note書き初め

届けていただく声に支えられ、書き続けています。 スキを、サポートを、本当にありがとうございます。