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忘れられない言葉たち

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強く共感したもの。心を突き動かされたもの。また読みたいとふいに思い出す素敵なnoteを入れさせてもらいました。やわらかな言葉に、切なさに、激しさに、もう一度スキを。
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#ロケンロー

ハイライト

 前の日の雨で桜の花はほとんど落ち、路面や水たまりに散らばっている。泥にまみれた花びらを…

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波よせる場所

海へ向かう道を車で走らせる。窓を開ける。7月終わりの晴れた午後。乾いた風が髪を揺らす。フ…

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二塁を廻れ

晩夏の夜の雨。秋雨にはまだ早い時期だが、この間まで街を包んでいた熱気が嘘のように肌寒い。…

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待合室

初冬、曇天の待合室に15人ほどがいる。地方のさほど大きくない私立病院。外来は内科と精神科の…

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寺が燃える

寺が燃えている。 炎が寺の全てを包み込む、大きな火柱となっている。 一報を帰宅途中に、妻…

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not too late

ドラッグストアに入ると、初老の男が店員に向かって怒鳴っている。大きな声なので聞き耳を立て…

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雨の夜のキャバクラと焼き鳥と

6月の金曜の夜、上司にスナックとキャバクラが合わさった様な店に付き合わされた。キャバクラなのにカラオケがあるんだと上司は嬉しそうに僕に言う。そんな店には興味はないが、社内的に微妙な立場だったので行かざるを得ない。他の部署のプロジェクトを成功させたら、それが故に立ち位置が複雑になった。断る方が面倒だ。 雨は途切れることなく降り続け、シャツからは雨の匂いと自分の体のにおいが混じり、革靴の中も湿っている。 クラブやキャバクラにありがちな大げさに重いドアを開け、上司がママに大げさな