kintoneに賭けた創業期から10年。チームで老舗の強みを生かしていく
2010年12月に会社を設立してから、ジョイゾーは10年以上に渡り、kintone専業のSIerとして事業を営んでいます。
創業とほぼ同時に、kintoneのSIビジネスにフルコミットをしました。もちろん、すぐには軌道には乗りませんでした。しかし、着実に目の前の案件をこなし、成長の転機となった案件がいくつかあります。
今回は、私たちの10年の軌跡をたどってみたいと思います。
独立してすぐ、サイボウズのkintoneに賭けた
私が独立を決めたとき、具体的なビジネスプランはありませんでした。ただ漠然とこれからはクラウドの時代が来るのは間違いないから、クラウドに関するビジネスをしたいなと思っていた程度です(笑)。
そんななか、独立後まもなくしてサイボウズがクラウド事業へのシフトと「kintone」リリースという情報を耳にしました。
それ以前、サイボウズにはデヂエという製品がありました。Webデータベースでノーコードで業務システムを作ることができるいわばkintoneの前身のようなシステムで、サーバーやPCにインストールをするいわうゆる「オンプレミス」型のサービスです。
デヂエは昔から好きな製品で、中小企業で必要な業務システムを簡単に作ることができたので、そのクラウド版があったら絶対に良いのにと常に思っていました。そこにkintoneというクラウドサービスがリリースされると聞いたら、それにコミットする以外の選択はありませんでした。
また、サイボウズの青野社長が「これからはすべてクラウドにシフトし、クラウドのインフラ基盤含めすべて自前で用意する」と宣言したのも、大きな理由です。
新卒からインフラエンジニアをやっていたのでわかるのですが、クラウドサービスの基盤をすべて自前で用意する際の投資金額や、仮に失敗したときのリスクはとてつもなく大きいです。
そこを自前で構築するという青野社長に、kintoneに賭ける相当な覚悟を感じたのです。
不安はまったくありませんでした。
それどころか、「まだどの会社もkintoneビジネスに本格手に手を挙げていないいまこそ」チャンスしかないと感じていました。
(▲)創業時にいたメンバーは3人。3DKマンションの一室からスタートしました。
初めての大規模案件では、「できないこと」を明確にした
もちろん、当初のkintoneは今ほど機能も拡張性もなく、リリース当初なんかはルックアップすらありませんでした(笑)。しかし、辛抱すべきなのは今だけで、いずれ機能も拡張性も増えるだろうと考えていました。
弊社のkintoneビジネスでの大きな転機は、後述する「システム39」であるのは間違いありませんが、もう1つ大きな転機となったのが、2014年に請け負った三菱ふそうトラック・バス株式会社様の案件です。
2000名~3000名のユーザーが使うシステムで、これまでにない規模に不安もプレッシャーもありました。
当時のジョイゾーは私を含めて3人しかおらず、よくそんな小さな会社に発注したな、と思います(笑)。
ただ、お客様の業務課題や実現したい完成形のイメージをしっかり拾い、それこそ対面開発をしながら業務分析をし、期待以上の提案ができたため、任せてくれたのだと考えています。
一方で、お客様の要望は3カ月という短い開発期間に、かなりの画面カスタマイズの開発も含まれていました。
その部分については、流石に対応ができない旨を紹介してくれた会社に相談をすると、画面カスタマイズの部分は別の人を探してくれました。
そして、非常に優秀な方がアサインされ、無事、期限通りに納期通りにシステムを納めることができました。
その時に画面開発を担当してくれた人が今、ジョイゾーで活躍してくれている大門さんです。
(▲)3DKの部屋で3年過ごし、2つめの新オフィスへ。内装工事は自前で。
(▲)2つ目のオフィス。青い壁も自分たちで塗りました。
提案したその日にGOが出た「システム39」
一番のターニングポイントは、三菱ふそうトラック・バスと同じ2014年にリリースしたシステム39です。
システム39は、元々別の会社の方と一緒に立ち上げたサービスでした。
システム39のビジネスプランを考えている時に、ちょうどシステム39にはまりそうな案件相談がありました。お客さんから事前に資料をもらっていたので、訪問する当日の朝に喫茶店で「こんなシステムかな?」とイメージしながら、kintoneでアプリを作りました。
その足でお客様先を訪れ、実際にkintoneを見せると「あ、作りたいシステムってこれです!」という反応をいただきました。
さらに、その場で出た変更要望に対して、すぐにkintoneで修正をするととても驚かれ、その場で決裁者である社長さんを呼んで、その日の午後には発注をいただくことができたのです。
そのあと3日後に打ち合わせを設けて、その場でまた対面開発をしてシステム開発が完了し、すぐに運用をスタートすることになったのです。
実質、1週間程度でシステムができ上がるというスピード感は、大きな成功体験となったと同時に、システム39というサービスの可能性を感じました。
システム39の引き合いが急増し、チームを強化
おかげさまでいま、システム39の相談を数多くいただいています。
それまでは、4人〜5人のメンバーが個々人の能力でどうにかこなしていましたが、さすがにチームとして動いていかなくてはいけない段階になりました。
案件もメンバーの数も増えてきた頃に、COOの四宮琴絵を中心にSIチームで合宿をしてもらいました。過去案件の共有や整理、情報共有のムラを解消させ、システムの価値提供をするとはどういうことかという考え方を共有、認識し合うなど、SIチームの基盤を作ってもらったのです。
今も、毎月のようにメンバーが増え続けています。混乱なくチームワーク力を発揮できているのは、あの時にチームの基盤を作ったのが大きいと思います。
私を含め、うちのメンバーは組織めいた仕組みは好きではないのですが(笑)、さすがにある程度は考えなくてはいけません。人が入るサイクルがますます早くなっているので、さらに体制を作り直しているところです。
失敗パターンを共有し、チームで次の案件に備える強み
kintoneのSIerとして10年を過ぎ、改めてジョイゾーの強みを考えると、「お客様に寄り添うシステム開発」だと思っています。
私たちは、お客様の本当の課題や困っていることを、掘り下げていきます。お客様から話してくれるのを待つのではなく、聞き出していきます。
例えば、「kintoneから見積書を出したい」という要望を聞いたとして、すぐにkintoneでPDFで出力できる見積管理アプリは作りません。
「なぜkintoneで見積管理をしたいのですか?」「今は誰が何を使って見積を管理していて、時間がかかる作業はどんなものがありますか?」「見積書をだす前段階から出した後までの仕事の流れはどうなっていますか?」。そんなところまで聞いていきます。
そのうえで、「kintoneからPDFで出す仕組みを作るのがよい」という結論になるかもしれませんし、「見積管理をする前に顧客情報がまったく一元化されていないので、まずは顧客管理をしっかりとやっていくのが重要だと思います。」と別の課題が明確になるかもしれません。
kintone専業として長年取り組んでいるからこそ、お客様の課題に対して「kintoneに合う/合わない」を決めきれることができます。
もちろん、我々も常に成功しているわけではなく、いろいろな失敗も経験してきています。だからこそ、「これはやってはいけない」がわかっています。
成功パターンより、失敗パターンを共有し、チームとして次の案件に備えるようにしていることが、ジョイゾーの強みです。
kintoneは市場はこれからもっと広がる
引き合いが増えているとはいえ、kintoneのSIビジネスは、登りたい山の3合目すら到達していないと考えています。未来を見ると、やることはいくらでもあります。
kintoneは、これからもっと市場が広がっていきます。
ジョイゾーだけで囲い込むということではなく、ジョイゾーのノウハウを公開し、他のkintoneビジネスを手掛ける方々と一緒に、kintoneビジネスを拡げていくのも私の楽しみの1つです。
四宮靖隆(しのみや・やすたか)
(株)ジョイゾー代表取締役社長。サイボウズのkintoneビジネスにコミットし、Mr.kintoneとの呼び名も。SIを再定義し、仕事も人生も「楽しい」世界を実践中。
初の著書! 『御社にそのシステムは不要です。』発売中
ジョイゾーは、エンジニアリングで新しい波を広げます
ジョイゾーは、サイボウズ社の「kintone」(キントーン)を専門にコンサルティングやシステム開発を行うSIerです。すべての人生を楽しくするために、SIerとしてエンジニアリングの可能性を追求しています。
編集協力/コルクラボギルド(取材構成・栃尾江美、編集・平山ゆりの)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?