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さあ、注射の練習をしよう

今回はどうでもいい、私の思い出にお付き合いください。

【研修医1年目】
数ある悩みのうち、多くの研修医がぶちあたる悩み。
それは、ルートが上手くとれないことだ。
私はかなり下手だった。
採血は血管のどっかに当たれば血液が引けるが、ルートは血管の走行に沿ってカテーテルを留置しなくてはいけないのでもっと難しい(ちなみに上の写真は採血)。

「あーあ、一生懸命勉強して医者になったけど、ルートがとれなくて医者やめることになるのか」私はよく思った。

しかしみんな1年目、同様の悩みをもつ者は多い。
悩める子羊は集う。

そうだ、研修医同士で練習しよう!!

あるカンファレンスルームに集まり、練習を開始。
私の相手はS野くん、医学部1年生からずっと一緒の心優しい青年だ。

良さそうな血管を探す
「じゃあここでやってみる」
「おぅっ」

ぶすっ

失敗

「あー失敗しちゃった、じゃあ次はここかな」

ぶすっ

失敗

S野くんの腕には大きな内出血がふたつ

S野くんは言う。

「いてー◯◯さん(私のこと)も注射されたらどれだけ痛いかわかって、失敗しちゃダメってわかると思うから、次俺やるよ。」

「やだやだ絶対やだ、痛いもん!」

私は正々堂々と答えた。

S野くん絶句


最低な奴である。


そうこうするうちにお開きの時間となった。

幸いS野くんは心優しいため、その後も口を聞いてくれた。




そして月日は流れ、私はルートをとるのがかなり上手くなった。

放射線科医の若手には検査当番があり、CT室やMRI室の横で待機。

ベテラン看護婦さんが2回以上失敗した患者さんのルートとりを頼まれる。
2回失敗された後なので、すでに患者さんはご機嫌斜め、不穏な空気の中登場する。

なんだかラスボスになった気分。

さっそうと私はルートをとる。

とれなかったことはない。

よく思う。

「S野くんあのときはありがとう。
いつ上手になったのか全然わかんないけど、私上手になったよ。」

S野くんにそのことを伝えたことはない。


このエピソードから学ぶことがあるとするならば、
やはり練習はお互いですべき 私も注射をされるべきであった。

そして研修医の最初にルートとりが下手でも、医者を辞める必要はないということだ。


※追記 S野くんには後日このリンクを送り、感謝の意を伝えました。


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