シールのダンス 盲導犬と暮らし、盲導犬と語る(13)

先日、近くの公園にシールと下のおねえちゃんと散歩に行きました。シールは大好きなおねえちゃんと一緒にお出かけできてうれしそう。しっぽをふりふり、しばらく歩いては「おねえちゃん来てる?」と何度も後ろを振り向きます(笑)。

天気はこの時期にしては暑かったけれど、日陰ではちょうど良い感じ。公園ではちょうどジャズの野外ライブもやっていて、少し離れたベンチで、屋台で買ったしぼりたてのレモンスカッシュを飲みながら、のんびり演奏を聴きました。
透き通った空気と高い青空。その中をゆったり流れる音楽。楽しそうに公園を歩く人たちの声。池の上を進むボートのたてる水音。うれしそうに鳴きかわす小鳥たちの声。たまに聞こえてくる犬の吠え声や赤ちゃんの泣き声。そんな音を聴きながらおだやかで楽しい空気を感じられた良い時間でした。
シールも、すれちがう人たちから「かわいいねえ」「賢そうな顔してるわね」なんてほめられて、しっぽを振ってうれしそうに歩いていました(笑)。

お仕事中のシールはきまじめにきっちり仕事をこなす良い子です。仕事ぶりはこれまでの盲導犬たちの中で一番きちんとしています。
でも、家の中でハーネスをはずした状態では、これまでで一番のやんちゃ坊主です(笑)。

シールが大好きなのは家族の靴下です。目の届くところに靴下が置いてあると、サッとくわえてしまいます。
そして何かをくわえると、うれしくなってしまうのか、必ずダンスを踊ります(笑)。
シールの足音が急に「タッタラッタ、タッタラッタ」とリズミカルになる時は、シールが何かをくわえて盛り上がっているサインなので、それが聞こえたら、
「シール、何くわえてるの!」とただちにシールをつかまえます。
小さいものをくわえてしまうと呑み込んでしまう危険があるので、何かをくわえたらダンスをするシールのクセはわかりやすいです(笑)。

シールは私のポケットからちょっと顔を出しているタオルハンカチなども狙ってくるので、わたしはポケットにジッパーがついているスラックスをはくようにしています。
シールはいつもはふつうに足音をさせて歩き回っているのですが、いたずらをする時だけ忍び足でやってきます。
この前も、靴下を履き替える時、シールにくわえられるのを警戒して私はジッパーつきのポケットに新しい靴下を突っ込んで座っていました。
そこに気配を殺して忍び寄って来たシールが、ポケットから少しだけはみ出していた靴下をバレないようにそっとくわえて、きづかれないようにゆっくりと抜き取って行きました(笑)。
ポケットのところで何か違和感を感じて、ポケットに手をやると靴下がありません。
あっと思った時には少し離れたところで、
「タッタラッタ、タッタラッタ」というシールのダンスが聞こえてきました。
「こら!シール!返せ!」
私はうれしくなって子犬みたいにはねているシールを取り押さえて靴下を取り戻したのでした(笑)。

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