こども食堂の憂鬱
学生さんの通学にだんだんと冬服に変わっていくのをみる頃。
服を長袖にしただけで汗をかく暑さを感じるのに半袖にしたら寒さを感じる面倒臭さ。水分補給よりもお腹に詰まる物のほうが体調が良いような、テレビやラジオでも聞くように秋が来ない、秋が短い。
今日は、住んでいる地域のコミュニティーセンターで、人形劇もあるダンス演劇「三銃士」をテーマに地元の演劇サークルさんが、大ホールを使ってやるらしい。旨をポスターを見て来て見たのだけど、入口は、ガッチリ施錠されていて1枚「諸事情により本日の講演は中止させていただきます。」との事、残念。
じゃあ、帰ろうかなと、廊下を歩いていると魚の焼いたニオイがうっすらと漂ってきた。「換気が上手くできてないな…」確かにこの進んだ先には調理場がある。そういえば今日同じ建物で"こども食堂"もあるとか予定板に書いてあった気がする。大人でも入っていいんだよな。調理場から鍋を持って出てきたおばあちゃんと目が合う。「どうぞ〜!」まだ何も言ってないんだが…。新しい事を体験する事は、脳が喜ぶと言うし、今日は、一回だけ参加してみるか、ただ、ご飯を食べるだけ。
「大人一人500円です。」店で食べるよりは、間違い無く安い。ただ、大人が満足する程の量は、食べられないだろう…お?ここではご飯と味噌汁だけおかわり自由らしい。
ご飯、味噌汁、漬物、ハムとキャベツの炒め物、焼き魚。小さい子どもは、そこに玉子焼きか、肉団子か、ササミのケチャップ煮が、つくらしい。それと、そっちのお菓子詰め合わせの袋も小さい子ども用か!こども食堂だものな…僕が、小さい頃は、こういうのは無かったな。本当に余談で、自分の懐に秘めて置くものとして氷河期世代食堂とかあったら行きそうだ。光合成が足りないものでつい。
周りを見るとホント小学校位までの子が、自由に食べてる。毎日やってる訳で無いからこの時間だけはお腹いっぱい食べて欲しい。運営で無いけど。おっと、わんこそばのような感じで、横を通るおばあちゃんが、味噌汁が、お椀から減る度、ギリギリまで満たして行ってくれる。「もう、十分ですよ?」ニコニコ「まだいっぱいあるよ。」鍋の中を見せながら微笑んでいる。断りにくいが、こういうノリなんだろう。「美味しいです。ありがとう御座います。」と、にこやかに返しておいた。さぁ、食べ終わったし、帰るか、食器を戻して食堂の外に出る。
と、そこには、センターに入る時は、三階の大ホールまでエレベーターを使うルートで行ったので気がつかなかったが、ここではフリーマーケットが、開かれていた。カステラ、クッキー、チョコレート、の菓子類。カバン、アクセサリーの手芸品、積み木のようなおもちゃ等々こどもな値段で売られている。又、それぞれの店で、「持って来てくれた何かと店の物を交換します!」と書いてある。面白い話でないだろうか。大人が混ざると何かとズルいレートで交換しそうなものだが、ここではそういうこともないだろう。まあ、そういう所なら…胸ポケットに入れれる程のパウンドケーキを買ってみた。チャリーン!
その後、トイレを済ます時、緑色の服の小さい男の子が、走って女子トイレに入って行った気がする。一瞬で、よくわからんかったけど…
センターを出ると少し雨が、こぼれていた。「雨か、これ位だったらまだ、大丈夫!」駐輪場の自転車を出しかけた時、さっきの店の女の子が、走って来た。「こっちで小さい男の子見ませんでしたか?」「いないね。」「そうですか…」女の子が会釈して立ち去ろうとした時、「緑の服の子」と、つぶやくと、女の子は、「その子です!!何処に居ましたか?」と、いうので、「間違いかもしれませんが、女子トイレに…」そう聞くと、女の子は、赤くなって唸りながら「ありがとう御座います。」と、建物に向かって走って行った。で、入れ違いに、緑の服の子が、建物の草木の茂みからゆるゆる歩いて姿を現す。うん、放っておいてもよいのだろう…胸ポケットからさっき買ったパウンドケーキを取り出して男の子をテイムする試み。「こっちだよ〜。」全く僕に興味なかったが、パウンドケーキの包みに覚えがあるのか反応した。目の前をチラつかせて捕まらない様に誘導すると上手くついてきた。さっきの店の前まで来た所で、パウンドケーキは、捕まった。その場に座って食べだす。さっきの女の子もすぐ戻って来るだろう。そう、思ってたが戻って来ず。男の子は、食べ終わると又何処かに行こうとするのでガッシリ捕まえて、ちょっと失礼しよう。さっきの女の子のお店の小さな椅子に座る。何だ、この状態おかしいな?男の子がジッとしていない。とっさに'小さい秋見つけた'を耳元で歌ってやると男の子が静かになってきたぞ。そのまま静かにしているんだ。お?店に、絵本も置いてれじゃないか、さっと、一冊手に取って"ダルマさんがぶっ転んだ!"何だこの絵本は?!仕方なく読んであげる事にした。何だ、この状態おかしいな?
読み終えた頃、店の前に三人程小さい子が、増えているんだが?ジッと絵本を読むのを聞いていたらしい。と、横から別の女の子が、「あなた一体誰?」こっちが、聞きたい。本来居る人じゃない赤の他人がお店に座って男の子を抱えながら絵本の読み聞かせとか意味わからん。何となくそういう説明をしていると何かニヤっとしてタンバリンを渡してきた。そして抱えていた男の子を簡単に引き剥がすと、店の前に集まった子の列に並べて、エーデルワイスを歌いだした。タンバリンでどう合わせろって言うんだ!!的な動きが小さい子にとても受けた。残念。
その後、ニ、三曲狂気なコントが続いたが、よく覚えていない。子供達は、とても喜んでいて、あと何人か増えた…。それでやっと本来の店の女の子が戻って来たので、事情説明と共に開放された。疲れたよ。
お礼にと、食堂に案内されてホットケーキ(焼き立て)とウインナーコーヒーをもらった。「貴重な時間をありがとうございました!又、次の機会も来て下さいね。」小さい子が何人か僕をまじまじ見つめている中、嫌とはすぐ言えなくて。「考えとくよ。」と、横を向いて答えておいた。