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日本農機メーカーの挑戦(クボタ・井関農機・ヤンマー)


クボタの挑戦

日本では食糧自給率の向上が長年の課題となっています。

また、世界を見てもロシアによるウクライナ侵攻で食糧の輸入が不安定になりました。

そのため、食糧確保の重要性がますます高まり、収穫量を増やす機械化や自動化のニーズは今後さらに強くなると予想されます。


日本の食料自給率(https://www.maff.go.jp/j/zyukyu/zikyu_ritu/012.html)


国内農機メーカーで首位のクボタは2024年1月に農機メーカーで初めて、無人で自動走行し、人間は近くで監視する「レベル2」のコンバインを発売する予定です。

これで、トラクターや田植え機を合わせた「トラコンタ」と呼ばれる主要3農機でレベル2が出そろうことになります。

ちなみにレベル2とは「使用者の監視下での無人状態での自律走行」ということです。


農業機械の安全性確保の自動化レベル


コンバインの自動運転はトラクターなどと比較して難易度が高いものでした。

その理由は収穫物と障害物の区別をする必要があり、その判断が難しかったためです。

そこでクボタはAIカメラを取り入れました。

2020年に提携したエヌビディアのGPU(画像処理半導体)を使い、収穫物と農場内に立ち入った人を正確に区別できるようになり、レベル2を達成したのです。


クボタのコンバイン


そして、クボタはレベル3である遠隔で監視できる日本初の無人農機を2026年にも実用化する予定です。

AIカメラを通じて人や障害物を認識し、農場から離れた場所で作業を監視できるもので、複数の農機を同時に管理できるため作業負担の軽減につながると期待されています。

実用化する無人農機はトラクター、田植え機、コンバインの3機種です。

クボタはレベル2と同様にエヌビディアと提携し、エヌビディアの画像処理半導体(GPU)を搭載したAIカメラやGPSを使うことでより精度の高い作業ができる農機を開発するとしています。

レベル3相当の無人農機は、アメリカの農機メーカーで「緑の巨人」ともいわれるディア社がトラクターで実用化しています。

ただ、ディア社の農機は農場の広いアメリカでの利用を想定した大型機で、農地面積が狭い日本では使いづらいという問題があります。


ディア社のトラクター


一方で、クボタが開発する無人農機は狭い農地でも小回りがきき、走行や作業の精度を高めることが可能です。

日本で実用化できれば、同じく農地が狭いアジアへの輸出も期待できるためクボタは開発を進めているのです。


井関農機の挑戦

井関農機が力を入れるのが、GPSなどの衛星情報が届かない地域で自動走行を維持する技術の開発です。

クボタはGPSを使って自動運転を行う農機の開発をしているので井関農機は異なる方向性で開発を進めていることがわかります。

井関農機が開発を進める技術は、カメラと高性能センサー「LiDAR(ライダー)」で得た情報をAIで処理し、地図情報と照合して自動走行する仕組みで、農場間を移動する際に衛星情報が途切れた場合などを想定しています。

AIを活用したシステムの開発は現在連携している農研機構に加えて、大学やスタートアップと協力して進めるとしています。


井関農機の自動運転


ヤンマーの挑戦

農林水産省によると国内の農家戸数は20年間でほぼ半減しました。

そしてこれからも農業従事者は減少していくでしょう。

そのため、これらの事実から考えられることは、食料自給率を維持するには生産性の向上が欠かせないということです。


https://www.maff.go.jp/j/wpaper/w_maff/r3/r3_h/trend/part1/chap1/c1_1_01.html


その解決策の1つが農地の大規模化です。

農業法人など「団体経営体」が前年より1.5%増えています。
また、農業従事者の高齢化で耕作放棄地が増え、近隣の農家が取得して農地の大規模化が進んでおり、それと同時に農業の担い手も集約されているのが現状です。

そして農業の担い手の集中や農地の集約で大きな問題となるのが、熟練作業者の不足です。

耕作面積が増えてもそれに合わせて熟練作業者を雇い入れることは難しいですが、自動化というテクノロジーによってその課題を解決することは可能です。

そしてヤンマーはここに注力しています。

熟練の技を持っていない人でもより速く、より安全に、より正確に農作業ができるとして自動運転のトラクターに注力しているのです。

稲をまっすぐ植えたり、野菜を植える畝をまっすぐ立てたりすることで、日本の狭い農地でも収量を増やすことが可能となり、農業従事者の身体負担も減ることにつながります。


ヤンマーのロボットトラクター(https://www.yanmar.com/jp/about/technology/vision2/robotics.html)


また、ヤンマーは「海」の技術を陸でも生かすとしています。

ヤンマーは小型船舶で衛星情報やセンサーを使った自動航行技術を開発しており、その技術を農機にも導入できると考えています。

このように各社は多額の研究開発費を費やして、技術開発を行っていますが、その理由は自動運転化の波に乗れるかどうかが生き残りの成否につながるからです。


日本市場から海外市場へ

現実として日本市場の成長余地は厳しいものがあります。

井関農機の2022年の売上高のうち日本は1126億円で、前期と比較して4%減少しましたが、米国や欧州では販売を伸ばし、売上高に占める海外比率は32.4%と1年で7ポイント上昇しました。

この傾向は他の農機大手も同じで、クボタの2022年の海外売上高は2兆764億円と、2018年と比べて63%増えました。

ヤンマーHDは2022年度に6205億円と、18年度と比べて49%増えました。


各社の農機は海外でも使用されている


各社の日本での農機事業が苦戦する背景にはコメの値段の下落もあります。

国内のコメ消費量は減少傾向が続き、取引価格の上昇は見込みにくいという現実があります。


コメの価格推移
(https://jp.gdfreak.com/public/detail/jp010050006070101003/4#google_vignette)


農家の収入源である農作物の価格が下がり、収入が下がるのであればいくら自動化が進んだ農機も買う意欲が減ってしまいます。

ただ、成長が期待しにくい日本市場で生き残りのカギとなるのも自動運転など農機の高度化なのです。

販売台数が減っても農機の単価を上げれば一定程度は補えるからです。

無人走行トラクターの価格は1000万円を超えることが一般的で、個人の農家が購入することは難しいですが、大規模化を目指す農業法人の経営者にとっては有効な投資になります。

そして、日本で自動運転を確立すれば海外でも販売できる可能性が高まります。

欧州の農業状況は北海道と似ていると言われており、北海道での成功は欧州にも応用できるかもしれません。

また、東南アジアの一部地域ではスマート農業が急速に進歩する予測もされています。


スマート農業は世界で進んでいる


自動運転は研究開発投資がかさみますが海外も含めた展開を考えると、決してマイナスにはならないのかもしれません。

自動運転技術は日本の農業だけでなく、将来的には世界の食糧問題を解決するカギになると思っていますので今後も各社を応援していきたいです。

クボタについては以下の記事に書いていますので読んでいただけると幸いです。


また、高配当株への投資を考えている方にお勧めの書籍を紹介させていただきます。



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