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短編小説

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#夏

(短編小説)初夏

(短編小説)初夏

「カッツン」
 声を掛けると、カッツンはギターを爪弾く手を止めて、のそりとこちらを振り向いた。
「いいのかよ。出棺しちゃったぜ。今から急げばまだ親父さんと最後の対面できるぞ」
 しかしカッツンは顔を元に戻すと「いいんだよ」と、またギターを鳴らした。カーキ色のジャケットを羽織る角張った背中。
 村外れの高台にある岩山はカッツンのお気に入りスポット。昔もよくここでギターを弾いていた。以前はもう少し草に

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