もう一つ夢ができた。朝倉未来と鈴木千裕との戦いが見たい
RIZIN46観戦記
4月29日、RIZIN46をPPVで観戦した。この興行、フェザー級チャンピオンの鈴木千裕が、挑戦者の金原正徳を斥け、全部をかっさらっていった。
観戦した興奮のままに、この記事を書きたい。
1R後半、鈴木千裕に突然のスイッチが入り、パンチのラッシュによるノックアウトである。金原正徳は決してイージーな相手ではない。事前の有識者の勝敗予想も五分五分であった。
金原正徳は、かつて、格闘技界のカリスマ山本KID徳郁に土を着けた男でもあり、最近では日本人ファイターの壁であったクレベル・コイケを攻略したことで再ブレイクを果たし、日本人MMAファイターの中でも最強の呼び声が高かった。そのベテラン金原正徳を相手に、鈴木千裕は何もさせなかったのだ。
さすがチャンピオンである。メインイベンターとしての仕事をしっかりこなし、この日いちばん会場を沸かせることになった。正直、セミファイナル含め、微妙な試合が続いていただけに、このメインの爆発力は、とりわけ際立つことになった。
そして解説席には、朝倉未来の姿があった。朝倉未来は平本連との試合を控えており、今の立場ではチャンピオン鈴木千裕と戦う権利はないのだが、静かなコメントの中にも、剝き出しの闘志が感じられた。
「鈴木千裕と戦ううえでの、攻略法を見つけた」
と放送の中で豪語したのである。もちろん、彼一流のハッタリであるかもしれないし、確信があってのコメントかもしれない。
しかし、それが何であれ、このコメント一つだけで、鈴木千裕と朝倉未来が相まみえるというストーリラインが、突如として立ち上がったのである。
今の鈴木千裕の立場であれば、すでに朝倉未来は眼中に入っていないかもしれない。それこそ、ピットブルとの再戦や、ノーコンテストになったといえ、タップしてしまっているクレベル・コイケとの戦いが、この後の妥当な流れであろう。
だが、朝倉未来と鈴木千裕の戦いは見たい。
見たいがゆえに、朝倉未来は次の平本連に何が何でも勝ってもらわねばならない。少なくともそこでの戦いに勝利しない限り、フェザー級のトップ戦線に躍り出ることではできないであろう。
RIZINが格闘技のトップ興行であるゆえんは、メインイベントで必ず次につながるドラマが立ち上がることである。メインイベントを務めるトップファイターはそのことをわかったうえで戦いに臨んでいるので、リスクを背負ったギリギリの戦いを行っている。
それが、メインイベントという魔物なのかもしれない。金原もいつもの調子ではなかったかもしれない。完全に、メインという重圧に吞み込まれ、そして鈴木千裕という怪物に呑み込まれてしまったという印象がある。
だが、勝ち負けがなんであれ、この作品を見せてくれた両者に惜しみない拍手を送りたい。メインイベントという最高のアートは、最高の勝者と、最高の敗者によって作られるのだから。これが、興行である。これがプロフェッショナルである。
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