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GUTTIの小説

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が執筆した小説を集めています。短編、中編、長編、過去の作品から書き下ろしまで。私
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#イベント

赤坂見附ブルーマンデー 第10話:幕張メッセ、大混乱

 ステージを進行するチームと、会場外で誘導するチームが交わすトランシーバーのやり取りも騒がしくなってくる。 「田村です。スペシャルステージ開始四十分前。各自、状況報告ください」 「恵です。現在、三〇〇名程度の来場者が待機中です。どうぞ」 「高山です。ステージリハは完了しています。あとはゲストを待つのみ。オープンはいつでも大丈夫です」 「桜庭です。シークレットゲストの二階堂彩夢さんですが、あと十分ほどで会場入りするそうです。現在、アパホテルを車で出たようです。どうぞ」

赤坂見附ブルーマンデー 第9話:アニメファン熱狂の祭典

 田村の異動は年明けからということだった。  その田村にとっての、宮戸チーム最後の仕事が、年末に行われるビッグイベント、『アニメ・ファンタジーフェスタ』だった。  アニメ・ファンタジーフェスタ、略称「アニファン」が開催されるのは、イベントの聖地幕張メッセだ。    アニファンは国内人気アニメの人気声優が、ファンサービスとしてステージに登場したり、その場でしか手に入らないアニメグッズなどが販売されたりなど、全国のアニメファンが一堂に会する祭典である。    田村はずっとこの

赤坂見附ブルーマンデー 第3話:幸福と憎悪のマリアージュ

   まだ月曜日である。  これからむかえる一週間の、しょっぱなから徹夜作業に入るとは想像もしていなかった。今日は普通に家に帰れるだろうと想定していた時ほど、そこから絶望へと叩き落される、気持ちの変化の落差は激しかった。    早く終わらせればよいではないか? そんなボリュームではない。    通常、何日もかけて作成する企画資料である。それを翌日の朝一までに仕上げるということは、ハードコアな徹夜業務が確定の死刑宣告のようなものなのだ。  妻に、連絡を入れる。 「すまん

赤坂見附ブルーマンデー 第2話:徹夜確定演出

 ランチタイムが過ぎると、幕張メッセ会場外の人の往来もだいぶ落ち着いてくるころで、誘導現場の見回りに来た恵君が声をかけてくる。 「コウヘイさん、今日はありがとう。助かりました」 「ああ、間に合ってよかったよ」 「うちのADが、コウヘイさんのことバイトと勘違いしていたみたいで、ふざけた接し方しちゃったみたいでしたが大丈夫でしたか」    やはりそうか。恵君が気を遣って報告してくれたのは救いである。 「最近の奴は舐め切ってるのが多いので、ちゃんと教育しておくんで」 「あ

赤坂見附ブルーマンデー 第1話:安息日明け

あらすじ    ホイッスルを鳴らすサザエの先導によって、次いで妹のワカメ、弟のカツオ、父波平、母フネ、息子タラオを肩車する夫マスオといった順で列になり、磯野家とフグ田家の面々は、その無謬な笑顔と共に青天下の野原を軽快に行進していく。  ハイキングをしていると思われる彼らの向かう先は、煙突のある一軒の山小屋だ。テレビなど一切見ないという若い世代の人間ならともかく、幼い子を持ち、会社で働く中堅どころのサラリーマンにしてみれば、週末の夕食時ともなれば否応なしに目にする光景である