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斎藤医師が引きこもりを語る~対話をつづけること

不登校の人数が過去最高の29万人を超えました。広い意味での引きこもりも146万人に達するなど社会問題化しています。

精神科医の斎藤環氏は都内での講演で「登校することや働くことを目的にせずに本人が元気になることが大事であり、そのためには対話を続けていくことが必要だ」と訴えました。

この中で斎藤氏は、「これまで学校に行かないことや、家に引きこもっていることは甘えだとか、ぜいたくなことなど悪いことだとみなされてきた。そのため、施設に収容したり、別の場所に移住させて、まとめて自立させようとしてきたが、こうした「治療モデル」では解決しない」と指摘しました。

そして不登校の原因について「原因は、人間関係はもとより、画一化した古い学校制度にあり、こうした制度に合わない子どもたちが苦しんでいる。不登校は学校制度という外的な要因にあるのに、当の本人に要因があるかのように責めるのはおかしい。無理に学校に登校させようとはせず、違う選択肢につなぐことが大事だ」と話しました。

さらに40歳から64歳までの引きこもりが多く、いわゆる「8050問題」が深刻化していることについて、「親の介護に来たら高齢の子どもも支援が必要だったというケースが目立っている、ところが子どもたちは役所の支援を受けることにおびえていて、外部からヘルパーを受け入れようとしない、結果的に自分で介護しようとするがどんどん孤立化していく」と話しました。

斎藤氏は従来の「治療モデル」ではなく「福祉モデル」が必要だとした上で、「引きこもり状態から一人で回復するのは難しい。大切なのはゴールを決めないこと、家庭内での対話が行われていれば良いが、対話がない場合は第三者との対話を続けていくことが大事だ。正論や激励はいらない。相手を変えようとするのではなく、ただただ対話していく。いわゆる伴走型の支援だ」と強調しました。斎藤氏はまた「家族も社会から孤立している場合が多いので、家族支援とセットで支えることが重要だ」と付け加えました。

そして行政側の役割として、▲相談先が明確になるよう特化した窓口をできるだけ細かく配置すること、▲助けを求められない人たちのため、行政側が積極的に関わっていく「アウトリーチ型」の支援、そのためのコーディネーター役、▲家族会など様々な団体グループ、▲本人が居心地が良いと思える居場所をつくることを挙げました。

去年、不登校の子どもがいる家族が話し合う集会に参加しました。突然、学校に行かなくなった子どものことを心配するある母親は、すがる思いで集会に参加し、涙ながら話し始めました。同じような経験をしてきた他の親たちも、涙を浮かべながらその話を聞いていました。話をした母親は幾分、安心したようでした。家族を含めた「つながり」の場が大事だなと感じた瞬間でした。

集会では、フリースクールなどさまざまな選択肢があることや、卒業に必要な出席日数などが話題となりました。わたしも以前、見学した通信制の「N高」や大和市が開設した特例校、「学びの多様化学校」について紹介したほか、藤沢市教育委員会も登校を目的とはしないことを明言したことを伝えました。

斎藤医師の講演で一番心に残ったのが「相手を変えようとしないからこそ、対話で変わる」という言葉です。わたしのような政治や報道に関わった人間は、相手を説得してやろうと自分の考えを押し付けがちです。時間はかかっても対話を続ける姿勢が大事なことを教えられました。

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