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宗教や信仰についての雑記 #123

◯「バイアスとは何か」を読んで①

「バイアスとは何か」(藤田政博著、ちくま新書)という本を読みました。
この本では様々な認知バイアスが取り上げられ、その仕組みが解説されていました。
認知バイアスとは、人間が様々な対象を認知する際に生じるゆがみのことだそうです。

この著者は社会心理学を司法の分野に応用する研究を行っているとのことで、バイアスの存在について、自分の認知や生活が多少うまくゆかないという程度であれば大きな問題にはならないが、人の一生を左右する刑事裁判の有罪無罪においてこのようなことが生じているのだとすれば放置するわけにはゆかない、と述べています。

そして、バイアス研究のニ大巨人と言われるエイモス・トヴァースキーとダニエル・カーネマンという心理学者の「少数の法則を信じることは罪である」という言葉を紹介しています。
この「少数の法則」とは、少ない観察例から全体の法則性を理解したと思い込むことだそうです。
それによる間違った推論に基づく人間観を信じて、その人間観を語ったり広めたりした場合、その人間観がネガティブなものであれば、この世界を必要以上に住みにくくしてしまう、その警鐘として「罪」という言葉を紹介したようです。

このことは所謂ヘイトスピーチに当てはまるようですが、それと同時に、既存の宗教にも当てはまることだと思います。
既存のそれぞれの宗教の発生は、時代や地域が限られています。ですからそれぞれの宗教の人間観も限定されたものです。それを全ての人間に当てはめることには無理があるということを、常に理解しておかなければならないのでしょう。

認知バイアスは誰にでもあるもので、心理学の研究をしていたり専門的なトレーニングを受けていたりしていても、完全になくすことはできないそうです。
そのことを踏まえて、我々は常に自分自身の認知にも警戒を怠らないようにしたほうがいいようです。

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