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幸せってたぶん、こういうこと

「ベビーカーでどこかに出かけたいの。」

生後3か月になる息子がいる。
先日、義母にべビーカーを買ってもらった私は、息子を連れてどこかへ出かけたくて仕方がなかった。

「いいよ、どこ行こうか。」
夫は二つ返事でOKしてくれた。

公園がいいな、と言うと、じゃあここなんかどう?と提案してくれ、そこへ行くことになった。

「息子~~(実際には名前を呼んでいる)、お出かけだよ~やったね~!」

3か月の息子にはまだ「おでかけ」がどんなに楽しいことかわからないだろうから、たぶん、私が一番わくわくしていただろう。

・・・

18時頃、夫の運転する車で公園に到着した。
海に近いところにあるその公園は少しひんやりとした風が吹いていて、陽が落ちかけていて、6月下旬にしてはかなり心地いい陽気だった。

慣れない手つきで折りたたまれているべビーカーを開く。

息子を乗せ、「あ、そうだ」と最近買ったばかりの小さな小さな帽子を息子に被せた。

頭に感じたことのない感覚を感じ、きょとんとしている息子。

「可愛すぎるな。」
「写真撮ろう、写真。」

夫がパシャパシャと愛おしい息子の姿を写真に撮っていた。
愛おしい夫が愛おしい息子の写真を撮っているなんて、なんと愛おしい1コマなんだろう、そう思った。

公園では、サッカーをしている人たちや遊具で遊んでいる息子より少し大きいこどもたち、犬の散歩をしている人、色んな人がいて、それぞれがそれぞれの愛おしい時間を過ごしていた。


そんなたくさんの「愛おしい」の間をベビーカーを押しながらゆっくりゆっくり歩く。

優しい風になでられている息子は気持ちよさそうに外の世界を見つめていた。

ほどなくして、息子がぐずり始める。
左手首にしている腕時計(これは去年の私の誕生日に夫が買ってくれたもので、めちゃくちゃ気に入っている)を見ると、いつの間にか次のミルクの時間を過ぎていたことに気づく。

近くにあったベンチに座り、持ってきた液体ミルクに乳首を装着、息子の口にくわえさせると「それ、そんなに美味しいんか」とびっくりして笑ってしまうほど、ぐびぐび飲んでくれた。

「晏、お茶かなんかいる?」
めちゃくちゃ気の利く夫が自販機でお茶を買ってきてくれた。
私は夫のめちゃくちゃ気の利くところが好きだ。
私はあまり気が利かないタイプなので尊敬もしている。

息子がミルクを飲み終えて、再び歩き出す。

サッカー少年たちが試合をしていたり、野球少年たちが大きな声であいさつをしていたり。

息子は将来、サッカー少年になるのかな、野球少年になるのかな、なんて少し先の未来に思いを馳せながら…

公園内を一周して駐車場に戻ってくると、陽はもうほぼ落ちていた。

「夕飯、どうする?」
「カレー食べたい。」

息子をチャイルドシートに乗せ、これまた慣れない手つきでベビーカーをたたみ、車に乗り込む。

カレー屋さんに向かう車のなかで、

『幸せってたぶん、こういうことなんだろうなあ。』

そう思った。

そのあと食べたカレーは、ここ最近食べたもののなかで一番おいしかった。

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