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旭日旗の議論がいまいちピンとこない:スポーツの試合会場での使用はありなのか?

せっかくオリンピックだし、めでたく韓国の選手たちもボイコットせず無事パリ五輪に参加できていることだし、旭日旗の話でもしようと思う。

個人的には大して問題ないと思っているわけ

「旭日旗は何も悪いことないんじゃない?」という話にあたり、分けるべき観点があると思っているので、2つの観点から私の考えをstateしておきたいと思う。

①「ハーケンクロイツと同じ」だという意見に対して思うこと

ドイツで教育を受けてきた人として明確に書いておきたいのはハーケンクロイツは国民社会主義ドイツ労働者党(ナチス)のシンボルであること。俗に言うハーケンクロイツはアーリア人の勝利や優越性のシンボルとして掲げられたものである。インド・ヨーロッパ語族の宗教的な象徴としてスワスティカを「ハーケンクロイツ」として取り入れ悪事が(当時の価値観ではやむなしとして)行われてきたため、「悪の象徴」のような位置付けとなった経緯がある。
当然、本来のスワスティカ、ないし卍には社会主義などの意味はなかった。どちらかというと宗教的意味合いがあり、世界の広い地域で使用されていたことは一つの事実だ。

さて、一部の人が旭日旗を問題視するのは「戦争犯罪国家である大日本帝国の旗だから」である(と思う)のだが、そもそもその認識が微妙(というか曖昧?)だと思っている。

大日本帝国の国家元首は(形式上)天皇であり、「戦争犯罪国家を支配していた組織の旗」となるとハーケンクロイツと並列に並ぶのは十六八重表菊になるという考え方はできなくはない。
もちろん「反日的」な人は(おそらく)天皇制にも反対している人が多いと想像されることから「菊の御門」も特段好いてはいないと思うが、とりあえずハーケンクロイツと「位置付け」という意味で並ぶのは第二次対戦中から変わっていない日本の国章なのでは?思ったりしなくはない。

ちなみにナチス政権下のドイツの国旗にもハーケンクロイツは使用されていたが、大日本帝国の国旗は今と(基本的には)同じ日章旗、通称日の丸である。

「大日本帝国の実権を握っていたのは帝国陸軍だったじゃないか」と言われればそれはそう。そういう意味では東條英機が所属していたのは大政翼賛会という政治結社なのだからそのシンボル(鶴が日の丸を背負ってるあれ)を使うなというなら理解はできる。

というわけでハーケンクロイツと同じ位置付けになりうるものは複数あると思うし、これに関しては意見も様々だと思うが、少なくとも日本の軍旗ではない。

軍旗の話をするならドイツの鉄十字がそれにあたり、これは現在のドイツ連邦軍でも使用されている意匠である。細かい話をするとバルケンクロイツとタッツェンクロイツは違うのだが、勲章には鉄十字が時代を超えて用いられてきた。この黒い十字の四辺(?)を線で囲ったデザインも日本の旭日と同様に長い伝統に基づいて起用されている。

現在の陸上自衛隊、海上自衛隊共に旭日の意匠を用いており、半世紀以上国際社会でも使用が認められているのだから、少なくともいわゆる「軍旗」としてこの意匠を使用することに問題はないのではと思う次第だ。
ちなみに陸上自衛隊の連隊旗は大日本帝国のものからデザインは(微妙に)変わっている。

②紋様の意味合いについて思うこと

日が昇る時光が強く差し込む様子を模ったこのデザインはシンプルで日章と同様に無駄を排除した秀逸な紋様だと個人的に思っている。ミニマリズムというと今風だが、これを追求したのが日本の伝統的な意匠に共通する考え方であり、誰にでも覚えやすく、汎用性も高い点でグッドデザインである。古の日本では太陽は金色で表現されていたのが大陸文化の影響を受けて赤色になっているのも古来から外国との文化交流を感じさせてとても好きだ。

旭日でまずイメージされるのが大漁旗だろうと思う。日本という国は古代から太陽信仰であり、太陽には強いポジティブな力があると信じられてきた。強い光を放つ旭日の紋様はいつしかめでたいことや祈願の意味が込められるものになり、市民生活に深く根付いてきた。
そこに政治的意味合いはなく、どちらかというと宗教色があるものであることは留意したい。

宗教的に難色を示す人がいるなら、まあ、わからなくはないのだが、この多様性が謳われる時代に異宗教の意匠をキャンセルしようとするのは正直どうかと思う。

スポーツと旭日旗

スポーツの場にふさわしいか?と聞かれると、私は「祈願」の意味が込められていることを鑑みると比較的あり派だったりする。それこそ大漁旗のようにでっかく「優勝」とか書いて金の装飾でもすれば文化には則っているのではと感じる。
一方で政治思想の強い父の話を聞いていると、彼は旭日旗をあくまでも「軍旗」として見ていて、スポーツの場にはふさわしくないという意見を持っている。
なら朝日新聞は政治的な思想に基づいて旭日旗デザインの社旗にしているのかと考えるとそれは流石に疑問だ。

まずはFIFAの規約のひとつ「スタジアム安全警備規定」(https://resources.fifa.com/mm/document/tournament/competition/51/53/98/safetyregulations_e.pdf ※PDF注意)の最新版を見てみよう。この第60条二項では「挑発・攻撃的行為の禁止」として以下のように定めている。

a)試合主催者は、地元の警察当局と連携しながら、スタジアムやその近辺で、サポーターが挑発や攻撃的行為を行わないようにしなければならない。例えば、選手や審判、相手チームのサポーターが許容できないレベルの挑発や攻撃的なヤジや差別行為、さらには攻撃的、挑発的な内容を含んだ横断幕や旗などもこれに含まれる。もしこのような行為が行われたならば、試合主催者または警備は場内放送でこれに警告しやめさせなければならない。もしこれらが、差別行為などの深刻なケースは警察に通報しスタジアムから排除しなければならない。

b)さらにFIFA加盟の全協会とクラブはこれに関連する規定や規約を遵守し、あらゆる手段をもってこれを未然に防止しなければならない。

旭日旗はなぜサッカースタジアムで禁止なのか? 関係ない日本側の主張、知るべき国際ルール | フットボールチャンネル

ちょっと調べて見たところFIFAは「挑発的行為の禁止」として旭日旗をBANしているそうだが、この記事の指摘はやはり「旭日旗=軍旗」という視点に留まっていて少し視野が狭いように感じた。

こちらの動画の孫さんの意見もとてもよくわかる。一方で地元で反日デモが発生して外出禁止令が大使館から出たことを実際に経験した子供だった私自身としては、「子供の命が危険にさらされるから」という理由で相手の要求を呑むのはなんだかなあと思ってしまう。人の命を人質にして思想を通そうという手法はテロリズムだというコメント深く頷く次第だ。

「現場では実害があるんです」という言い分は理解できるのだが、だからと言って「じゃあやめます、だからこれ以上は何もしないでください」と頭を下げるべき相手なのか、という話なのだ。
私の地元の反日運動は日本の教科書改定等にあたり中国の留学生を中心に行われたものである。彼ら/彼女ら、または中国大使館が積極的に「戦争犯罪を認めろ」と私や同級生たちの命を引き換えに迫ってきた時、「やはり教科書改定せず、中国の不利益にならないようにしましょう」と私たちは言わなければいけないのだろうか?国有化しなければ外出禁止令は出なかったかもしれない。これは一つの事実だ。だけど「外出禁止令が出るという事態」と私たちは戦わなければならないのではないか。結局「旭日旗という日本の伝統的な意匠を掲げる自由」を守るために私たちは戦わなければならないのではないか。

命を狙われた子供達を苦しめているのは誰か。旭日旗を掲げる人々なのか、それともそれを政治的軋轢へと昇華した人々なのか。

私はあの時期家に閉じこもって「中国政府とは決着をつけなければならない」という気持ちを強くした。中国人に対して何か怨念が生まれたわけでは全くない。
ただそう感じただけだったことを覚えている。

「なぜそこまでして掲げたいのか?」という問い

「なんで旭日旗なの?」という問いに対しては「かっこいいからじゃない?」くらいのものだと思っている。前述したように日章旗も旭日旗も洗練されたデザインで、特に旭日旗に関してはパワフルでインパクトがある。人の心を惹きつけるデザインをしている。だからこそ日本以外でも北マケドニアのようにこのデザインを国旗に選ぶ国があるのではないか。

「そこまで」して掲げたい理由は単純で、「自由を奪われたくないから」。
国のシンボルという、どこの国も、どこの国対しても敬意を持って扱うべきものを政治的理由でキャンセルされることに抗っているのだと、私は思っている。

おしまい

政治的意味合いがなくても、そこに「意味を見出す」人がいる。
気持ちはわかる。
私も推しグルがとある政治的選択をしてから、やることなすことに、他でもない私が、政治的な意味を「見出す」ようになってしまったので担降りした。

「政治的意味を見出すな」とは言わない。それらは「偏見によって見えてしまうもの」であって、見出すことをやめることはなかなか難しい。
しかし自分の意思とは関係なく「偏見によって政治的意味が見出されてしまい、怒りの感情を掻き立てられる」のは決して健康な精神状態とは言えない。

と経験者の私から、ここに書き残しておく。
怒るのは「本当に自分に必要な時」だけに抑えておいた方が健康的な日常生活が送れるとは思う。

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