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病院経営の黒字と赤字の実態とは?

こんにちは、医療環境コンサルタントとして毎日色々な方から勉強させていただいてます!

ブログを通して医療施設の問題や解決策について情報共有していきますので、業界の方の参考になれば嬉しいです♪(医療業界以外の人も興味があればぜひ見てくださいね!)

さて、第1回は病院経営の実態について書いてみます。
病院経営は医療の質や安全性だけでなく、社会的な責任や経済的な効率性も求められるとても難しい分野です。特にこの3年間、新型コロナウイルスの流行によって病院経営は大きな影響を受けました。
コロナ関連の補助金が支給された一方で、受診控えやワクチン接種などによって、収入や費用は大きく変動した病院もありますし、感染症法上5類への移行も影響し助成金が廃止になったことで厳しい状況に追い込まれている病院もあります。

では、病院経営の黒字と赤字の実態はどうなっているのでしょうか?この記事では、厚生労働省や日本医療法人協会などが公表したデータをもとに、病院経営の現状と課題について僕なりの見解を加えて解説していきます。



病院経営の黒字と赤字の割合

まず、近年の病院経営の赤字と黒字の割合から見てみましょう。厚生労働省が公表した「医療経済実態調査」によると、2020年度の一般病院(精神科病院を除く)の損益率は6.9%の赤字でした。これは2019年度の3.1%の赤字から悪化しています。しかし、コロナ関連の補助金を含めると0.4%の黒字に転じています。つまり、補助金がなければ多くの病院が赤字に陥っていたことになります。
全日本病院協会が公表した「医療機関経営状況調査」によると、2021年度の医業利益(医業収益から医業費用を差し引いたもの)は、一般病院で平均約2億円の赤字でした。これは2020年度より約1億円悪化したことを示しています。また、2022年度でもほぼ同等値となり、赤字病院の割合は7割を超えていることになります。

コロナ禍であれ程に奮闘してくれていた医療従事者の方を思うと、このデータはやるせ無い気持ちになりますね。。


病院経営の赤字要因

次に、病院経営の黒字と赤字の要因を見てみましょう。病院経営の収入と費用のバランスは、様々な要素によって影響を受けますが、ここでは主なものをいくつか挙げてみます。

収入面

  • 診療報酬:病院が提供する医療サービスや薬の公定価格であり、病院経営の最大の収入源です。診療報酬は2年に1度改定されますが、近年は医療費抑制のために引き下げられる傾向にあります。また、診療報酬は地域や診療科目によっても異なります。例えば、都市部では地方部よりも診療報酬が低く設定されています。また、外科や整形外科などの手術を多く行う診療科目では、内科や小児科などの診察を中心とする診療科目よりも診療報酬が高くなっています。

  • 介護保険事業:病院が提供する介護サービスに対して支払われる保険料です。介護保険事業は、高齢者の入院期間を短くすることで医療費を抑える目的で導入されましたが、介護サービスの需要は増加しています。しかし、介護保険事業の収入は診療報酬よりも低く、また介護サービスにかかる人件費や物品費は高いため、利益率は低いと言われています。

  • 関連補助金:直近で最も注目されていた助成金はやはり新型コロナウイルスの流行に伴って、政府や自治体から医療機関に対して支給された補助金です。コロナ関連補助金には、コロナ患者の専用病棟や集中治療室(ICU)を確保するための「病床確保料」や、「感染対策強化料」、「感染対策特別手当」などがあります。また、コロナワクチン接種に関する「接種料」や「接種管理料」も含まれます。コロナ関連補助金は、受診控えや手術延期などによる収入減を補填する役割を果たしましたが、補助金の支給額や条件は変動しやすく、また補助金頼みの経営は不安定であるという指摘もあります。

費用面

  • 人件費:医師や看護師などの職員の給与や福利厚生費などです。人件費は病院経営の最大の費用であり、平均して医業収益の約半分を占めています。人件費は職種や地域によっても異なりますが、近年は医師不足や看護師不足などによって人件費が上昇しています。また、医療従事者の働き方改革が進むことにつれて、残業代などによる人件費増加も懸念されます。

  • 物品費:医薬品や医療機器などの購入費や消耗品費などです。物品費は医業収益の約2割を占めています。物品費は医療技術の進歩や薬価改定などによって変動しますが、近年はコロナ対策に伴うマスクやガウンなどの感染防止用品の需要や価格が高騰しています。

  • 建物管理費用:水道光熱費や建物・設備の維持管理費、借入金の利息費などです。その他費用は医業収益の約1割を占めています。その他費用は病院の規模や立地などによっても異なりますが、近年はエネルギー費や固定資産税などが上昇しています。

  • 委託費用:病院がアウトソーシングしている業務があります。代表的なものでは医療機器の保守業務や院内清掃、給食、寝具提供などです。どの業務も共通しているのが人件費や材料費が高騰していることにより従来の委託価格から値上がり傾向にあります。加えて、2022年11月、厚生労働省より「ビルメンテナンス業務に関する契約 (公共調達)の最低賃金引上げ」という緊急の通知がされたことにより、清掃や設備、警備業務などの会社からはこれから堂々と値上げ交渉を受ける可能性が高くなります。


病院経営の課題と対策

まさに雁字搦め状態とも言える病院経営です。。このように収入と費用のバランスが難しい分野であり、コロナ禍でさらに厳しい状況に直面しています。
では、病院経営の課題と対策は何でしょうか?ここでは独自の見解を踏まえていくつかの例を挙げてみます。

収入面の課題と対策

  • 診療報酬への対応:診療報酬は医療費抑制のために引き下げられる傾向にありますが、これは病院経営にとって大きな打撃です。診療報酬の引き下げに対応するためには施設毎様々ですが、医療サービスの効率化や質の向上、患者数の増加などが共有します。また、診療報酬以外の収入源を開拓することも重要です。例えば、健康診断や予防接種などの自由診療や、健康保険組合などと連携した在宅医療や介護サービスなどを提供すること有効になるかもしれません。

  • 関連補助金の情報収集:補助金の支給額や条件は変動しやすい反面、新たな補助金や助成金が導入されることも多くあります。これらの情報を素早く収集し、可能な限り適応していくことが求められます。

  • 患者受け入れ体制強化:一方で補助金頼みの経営は不安定であるという指摘もあります。補助金に依存し過ぎないためには、患者の受け入れ体制やサービスを強化することが必要です。例えば、感染対策を徹底した衛生環境をアピールすることや、オンライン診療や在宅診療などを活用することで患者数の増加を見込める可能性もあります。

費用面の課題と対策

  • 人件費対策:人件費を抑えるためには、やはり医療従事者の負担減をいかに実現させるかが重要になるに加え、職員の採用や配置と教育や評価などの人事管理を効果的に行うことが必要です。例えば、医療事務や介護士などの補助的な職員を活用することで、医師や看護師の業務負担を軽減することができますし、DX導入による生産性向上も一定の効果があります。また、医師や看護師の働き方改革やキャリアアップ支援を行い離職率を下げることで求人費などの軽減を図ることができます。

  • 物品費対策:物品費は医療技術の進歩や薬価改定などによって変動しますが、感染防止用品の需要や価格が高騰しています。物品費を抑えるためには、物品の購入や管理、使用などの物流管理を効率化することが必要です。物品の在庫や消耗量をデータ化して分析することで適正な発注量や使用量を決めることや、物品の共同購入や値引き交渉などを行うことで、物品の調達コストを下げることができます。これらにもDX導入は効果を発揮するかもしれません。

  • 委託費対策:一般的には複数の委託会社から相見積もりの取得や委託業務仕様書の見直しなどが挙げられますが、やり方によっては院内環境の質が大幅に低下する危険があり、改善にさらなるコストが必要なケースも出てきます。これに対して僕が近年推奨しているのは、「委託業務の内製化」です。一部の業務を病院が直接運営することで大幅に経費を抑えられることが判明しています。アメリカの病院を訪問した際にはすでに多くの施設で内製化が進んでいて、経費改善だけでなく品質の向上にも成功しています。

経費改善に向けた対策についてはまた別のブログで詳しく発信していこうと思います!


まとめ

病院経営の実態、いかがでしたでしょうか?専門用語が多くなることもあってか、読み辛いようでしたらすみません。。

病院経営はやはりバランスがとても難しい分野であり、これからさらに厳しい状況が続くことが予想されます。病院経営の黒字と赤字の実態は、診療報酬や関連補助金などの収入面と、人件費や物品費などの費用面によって大きく変わります。これらの対策は、収入面では診療報酬の引き下げへの対応や患者受け入れ体制の強化を図ること、費用面では人件費の上昇や物品費の高騰に対応することに加えて委託費用の見直しが重要です。

施設によって運営状況や構造も大きく違うので一概に共通するものばかりではありませんが、医療サービスの質と効率化の両方を追求することはどの病院も目指していると思います。病院が医療に専念できる環境作りに向けて、僕も少しでも力になれるよう色々な知識をもっともっと勉強しなければいけませんね!


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