のこんぎくのうた
そのひとは 風の色を教えてくれた
そのひとは 空の色や雲の色や
雪の話をしてくれた
そこでは 薄紅色の花が咲くんだと
遥か遠くの街の物語を教えてくれた
でも
そのこは そのひとへの想いの
伝えかたを知らない
後ずさって その顔さえ見られなかった
いっそ 朝の露となって 太陽に
さらわれたかった
なみだが ひとつ零れて落ちた
ふと聞こえてきた
きみ
まだ 教えてないよ
ぼくのふるさとの海のいろ
山に咲く むらさきも みずいろも
ももいろも たくさんの きみの知らない花の色
そうだよ
虹が 二本 見える丘のこと
雪が屋根を覆って しんしんと
降り積もって それは しずかで
あったかいことなんかさ
夜露がおちて ほほを濡らすこともさ
ここにおいでよ
お星さまと月が すぐそこにあるよ
ふんわり あったかな腕のぬくもりが
そのこを包んで また夜が更けていく