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手を洗うときれい

 会社のトイレで立っておしっこをする。(ここは、つま先でたたなくていい。)
その後、手を洗って出る。

 ある日、同僚の高野が横に立っておしっこをしていると突然、
「ねえ、南江さん、おかしくないですか。」
と話かける。
「え、何?」
「便所から出る時は、手を洗いますが、入る前には洗いませんよね。これ、逆じゃないですかね。大事なものを触るんだから、その前に手をきれいに洗うべきではないですかね。逆ですよね。自分のおち〇ち〇はきれいですよね」
と、同意を求める。
 確かに、どこかで触った手で、そのまま奇麗は別としても、大切な物を触ることは、それこそ、ばい菌をつけるようなものだ。
思ってもいなかったが、そう指摘されると、まこと一理ある。

 とはいえその後も、こちらはトイレに入る時に、手を洗うことはしなかった。
 高野はというと、今まで通り、入る時は洗わず、出る時に手を洗っている。
「入る前に、手は洗わないの?」
と聞くと、
「めんどくさいですよね。二度も洗うのは。出る時に洗うのは、やはり人の眼がありますし、、家では洗いませんよ」

なるほど、きれいとは、人から見てきれいかどうかなんだ。

コロナ禍

 どこの店に入店する際にも、決まって入口にアルコール消毒器が設置してあり、両手を消毒していた。いまだ、数多くの所で見かける。
 入店する際、こちらは面倒と思いながらも、一つのルールとして、人から見られても怒られないよう仕方なく手を消毒した。
 店の中に菌を持ち込ませないよう、ちゃんと消毒して入ってねということだろう。
しかし、店を出る時にも消毒しているのはなんでだろう。
入る時にちゃんと消毒しているんだから、出る時は既にきれいなんじゃないの。
 トイレに入るのとは理由が違う、と思う。

 よくよく観察してみると、入店の際はほぼ全員だが、出て行く時は半分が手を消毒していない。そうだよなあ、必要ないようなあと感じる。
 消毒する人はもしかして、他人に見られているからと懸念して消毒しているんじゃないかとまで思う。

 このことを奥様に言ったら、猛反発。
 店の品物に菌がついてるかもしれない。それを触った手でそのまま、家に帰ることは菌を持って帰ることになるという。だから、必ず店の出口で消毒はしなければいけないと口をとがらして訴える。
 え~。外出後、家に入る前にもアルコールでちゃんと消毒しているじゃない。加えて、買ってきた商品にもアルコール消毒している。
『そこまでせんでも、ええんとちゃうの?』
(しかしここで、反問はしない。世界平和のために、、)
なので、一緒にお供する時は、必ず奥様と同様の行動をとるが、こちらが一人の時は、もちろんしない。

一年後

 いいかげんな行動をとっていたこちらは、とうとうコロナに感染した。
しかし、なんと奥様はいまだ、コロナに感染していない。

おそるべし、消毒効果。
手はきれいにした方がいい。

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