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04,濁る瞳のカーリタース

何かに、迷った。
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シリーズ04曲目です。
隠しきれないくらい膨らんだ恋心を必死に隠そうとしながら助言を求める…そんなイメージで書きました。ちょっとたどたどしいメロディが心の揺れを表現できている気がします。
以下この曲の物語。
「お時間を頂きありがとうございます、今日もよろしくお願いします。
…はい、今朝の朝食も頂きました。とても美味しかったです。こんなご時世に肉や野菜を使った料理を毎日食べられるとは思いませんでした。
今は中々食べ物が手に入らないんですよ。親や兄弟の為にいくつかの町をまわったこともありましたが、食べ物を置いている店を見つける事すら難しくて…あっても高額で買う事はできませんでした。どうしようもなかったので野草や野鼠を獲って食べていたんですよ。…それも腹を満たすには足りませんでしたが。
…そういえばこの間まで居た方…猟師の方なのでしょうか。何度かお話したんですが、良く狩りの話をしていたので…。今は動物を狩る事も難しいでしょうに…ここに来たのもそういった理由でしょうか。

はい、今日も話をさせてください。何度も聞いて頂いているうちに私の願いを整理できた気がします。
…あれは1年くらい前ですね。ちょうど19歳の誕生日でしたのでよく覚えています。当時は今ほど食べ物に苦労することもなくて、…近くの小さな食事処を貸し切って友人たちが祝いをしてくれたんです。普段は皆忙しいので中々揃う事もなくて…、今ではもう叶わないひと時ですね。
その時に居た店員が…はい、彼女です。面識のない客だった私を彼女は誕生日だと知るとまるで友人のように喜んでくれて…。彼女から小さなケーキを頂きました。一口サイズのカップケーキです。上にクリームとイチゴの乗ったケーキでした。その印象が強くて、彼女に会いにその後何度も店に会いに行きました。とても明るくてまるで昔からの知り合いのように接してくれた彼女は、次第に掛け替えのない友人になったんです。小説が好きで、稀に街に来る商人から知らない本を見つけるのが楽しみだと言った彼女…。
食べ物が手に入らなくなって店が閉められてから会うことも出来なくなって…彼女の家に行ってみましたが既に引き払われた後でした。
私は…もう一度彼女に会いたいです。出来るなら、今の関係を続けていきたいんです。
…恋仲になりたいなんて言いませんよ、確かに…叶うなら望んでしまうかもしれませんが。」

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