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おしゃべりアメリカ人『アクシデンタル・ツーリスト』アン・タイラー

アン・タイラーの小説は『この道の先に、いつもの赤毛』を読んだことがあります。今作も孤独を愛する男性が主人公です。アン・タイラーの小説は私がよく読んでいるアメリカ文学によくある暴力・ドラッグやアルコール中毒・異常な性的指向は出てきません、でも離婚している人は出てきます。小説だけ読んでいるとアメリカ人のほとんどは離婚している印象です、この件はさけられないことなのでしょう。

主人公のメイコンはつまらない人間として描かれている。自己流の洗濯方法を頑なに続け、旅行に行っても朝食はいつも食べ慣れている食事をこのみ、夜はベイクドポテトを食べる。飛行機の中では隣の席の人に話しかけられないように本を読むふりをする。仕事が旅行先でも自宅に居間にいるようにするためのガイドブックを作っているのが象徴的です。

ストーリーもほとんど無いと言って良いでしょう、メイコンが妻に逃げられ、飼い犬エドワードがあまりの凶暴であることから訓練士ミュリエリと出会い恋をし、妹が自分のボスと結婚するくらいです。

私はこの小説をのめりこんで読みました、なぜだろうか。それは登場人物の会話がたのしいからだと思います。メイコンが実家にいれば兄2人と妹がしゃべりまくるし、ミュリエリといれば一方的に身の上話を聞かされる。そのどうでもよい話が面白いので小説を読むのが止まらないのです。

メイコンとちがってミュリエリは非常に活発で挑戦しつづける女性です。いくつもの仕事を掛け持ちし、勤めとはべつに副業で稼いでいくように非常に活動的です。どんな人間にも襲いかかるエドワードもミュリエリの前ではおとなしいのが印象的です。ですが、メイコンがフランスに行くときに、おなじ飛行機に乗っているところは驚きを越えて怖さを感じました。

読み終わって、気になって冒頭をすぐに読み返しました。サラがメイコンに別れ話をするところです。メイコンがいやなやつだと思うように描かれています。彼が最後にとる行動の布石になっている気がしました。


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