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メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』

知っていそうで知らなかったことランキング小説部門でたぶん一位になる小説『フランケンシュタイン』を読みました。『フランケンシュタイン』は怪物の名前ではなく、怪物を創造したヴィクター・フランケンシュタイン博士の名前だというのは有名ですが、それだけではありませんでした。映画はみたことはありませんが、写真等で青白い顔をした無表情な白人大男というイメージはあります。そして藤子不二雄Aによるマンガ『怪物くん』からの影響が大きくあります。ドラキュラやオオカミ男からは一歩ひいた立ち位置なのでしょうか。しゃべれることばは『フンガー』のみ、動きは遅いが怪力、雷にうたれた瞬間に生を授かった、ボーダーシャツにジャケット着用、頭の横からボルトが飛び出ているなどがパブリック・イメージなのではないでしょうか。

実際に読んでみると全く違うことがわかります。
・雷にうたれたという描写はなく、ヴィクター・フランケンシュタイン博士がたくさんの死体の部分を組み立てたら動き出した。そのへんの詳細は不明。
・動きはかなり俊敏。屋根裏に隠れて気配を消し続けたり、気づいたら目の前に現れたなんてことがしょっちゅうあります。いうなれば弁慶ではなく牛若丸タイプという感じでしょうか。
・知能はかなり高い。ある人間家族と仲良くなりたいがために、熱心に家族の会話を効くという方法で人間の言葉をマスターしてしまう。フランケンシュタインの怪物流語学教室なんかをやったら流行りそうです。
・正論をいう。怪物はある家族と仲良くなれませんでした、その原因は彼の外見のみです。しかたの無いことですが、すこし残酷な現実ですね。そこで彼は博士に「望まない生を受けたが、孤独すぎてつらい。そこで私を作り出したという責任があるあなたにお願いがあります。女性の怪物をつくってください。」と頼みます。そうですよね、怪物のほうが正しい。ここで私ははっと思います、怪物にも性欲があることを。

怪物は時代がもう少し進んでいればスパイダーマンのようなスーパーヒーローになれた可能性があります。しかし人間を数人殺してしまうことでその目はなくなります。こんなに賢いのにもう少しの我慢があればという思いが湧いてきます。

怪物が見た目と身体能力以外はまともな人間と変わらないということがわかってきます。そして同時にヴィクター・フランケンシュタインの異常さが浮かび上がってきます。一番問題なのが男女関係です。許嫁のエリザベスからはつねに距離をとるという不自然さとは逆に、親友ヘンリー・クラーヴァルとは一緒にロンドン留学をしたり旅にでたり二人の関係にあやしさが醸し出てきます。怪物の望みを聞いてやれば解決すのに、問題を先送りにし結局エリザベスは怪物に殺害されてしまします。ミステリー小説としてよんでも面白いと思いました。ヴィクターは怪物をつかってエリザベスを亡き者にしようとしていたのではないか・・・。うがった見方をしないでもヴィクターと怪物の苦悩の連続を読むだけでも面白い小説でした。


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